第23話 反省と専属メイド

 目が覚めると、天井があった。


「カイル様!!! やっと起きられましたか!!!」


 声のした方向を見ると、イリアが泣きそうな顔でこっちを見ていた。


「あ、イリアか。」


「あ、イリアか。っじゃないですよ――――――! 1日も寝たきりだったんですよー!」


「え、1日も? そりゃ大変だ」


「そりゃ大変だ。って他人事じゃないんですよ!? あなたの話ですよ!? 分かってますか? 分かってないですよね?」


「そんなキンキン言われても……」


 正直、1日も寝たきりなのはびっくりした。でも、それ以上にイリアの声がキンキンして頭が痛くなりそうな方が重大な問題だ。


「皆様に目を覚まされたことをご報告してきます!!!!!」


「いってらっしゃーい」



 知らず知らずのうちに油断していたのかもしれない。自分は【吸収】も【鑑定】も強いスキルを多数所持していて、才能も高い。どこかでこの人生は楽だな、とか、選ばれた人間だとか思ってたんだろうな。でも、僕はしっかりとこの世界に生きている一人の人間なんだ。僕が行うことに心配する人もいるし、僕が死ねば悲しむ人もいるんだ。


 今回の対処だってもっとちゃんとやれたはずだ。3人で対応して、通りすがりの人に詰所や屋敷に行ってもらうことだってできたし、そうでなくても、自分が安全に事に対処できるようにあの場で思考を深めれたはずだ。それをしなかったのは、どこか自分に酔ってて僕の活躍の場ができたとか思っちゃったからだと思う。

――最悪だな。僕は。


 なんて自分勝手なんだろう。才能に酔いしれたままだったら、前世でいた嫌いな人種と同じ道を辿っていたかもしれない。同じ道を歩まないように、僕は今回の事を戒めにしないといけない。ミゲルがいなければ、アレクがあの場に残っていなければ死んでいたかもしれないのだから......


 多分父上からも母上からも怒られるのだろう。アレク達も怒られてるかもしれないな。2人には悪いことをした。今度謝らないと。


――ドンッ


「「カイル! 大丈夫(か)!?」」


「父上、母上。もう大丈夫です。心配かけてごめんなさい」


「カイルがゴロツキと戦ってるって聞いて肝が冷えたぞ。ついたときには、カイルが倒れる瞬間だったんだからな。少しは反省しろ」


「すみません。父上」


「ほんとに心配したんだからね? カイル。あれだけ油断しないように、驕らないようにって言ってたのに。そんなんだったらもう鍛えてあげませんよ?」


「本当にすみませんでした。母上。自分でも今回とった行動は良くなかったと反省しました。もう2度と心配はさせません。これまで以上に鍛えてほしいです」


「分かったのならいいのよ? 実際に経験するのが一番の薬なんだから。アレスだって、若いころは自分が強いんだー! って周りに威張り散らしてたんだから」


「おい、クラリス! そういう話は今はいいだろ!! ……まぁ、なんだ。今クラリスが言ったように俺だってカイルみたいな時期はあった。だから、必要以上にクヨクヨするな。ただ、今回の事はずっと忘れないことだ。いいな? それと、ミゲルとアレクには礼を言っておけ。」


「分かりました。二度と忘れません。ミゲルがアレクに指示して残らせた件は聞きました。また会った時にでも言うことにします」


「よし、じゃあ説教はここまでだ。カイル。よく頑張った。それでこそ俺の息子だ。一人で突っ走ったのは良くなかったが、人を助けようとする心は失っちゃいけない」


 そう言うと父上は僕をわしゃわしゃと撫でてくれた。アレクとミゲルも怒られてたんだ。今度ちゃんと謝ろう。


「お前のおかげであの子供は攫われずに助かったんだ。あの子は親とはぐれてしまった時に声を掛けられて、路地裏へ付いていってしまったそうだ。あの子の母親が泣いて喜んでいた。お前は人を救った。それは誇れることだ。そのことも胸に置いておけ」


「よかったぁ。あの子助かったんだね」


「カイル、あなたはいい子よ。これからも人を救う心を忘れないでね」


「僕は父上と母上の子供だからね。これからも人を救うよ」


「いい子ね」


 そう呟いた後、母上は僕の頭を優しく撫でてくれた。


 僕は本当に恵まれた家庭に生まれたものだ。尚更今回の事は深く受け止めないと。絶対に心配させちゃだめだな。


 その後僕たちは、僕が寝ていた1日間に起きたことを話しながら楽しい時間を過ごした。


――でも、最後に母上から衝撃の一言が飛んできた。

 

「そうそう、カイルが助けた子、カイルの専属メイドとして、働いてもらうことになったから」……と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る