第4章 ⑥

 一見して戦いは念動力を使い続ける真雪の方が有利で、追い詰められているのはクローン人間のように見えた。


 しかし、クローン人間は腹に大穴を開けてはいたが、すぐに再生していく。


 疲れを知らないクローン人間に対して、負傷している真雪は肩で息を繰り返し、遅かれ早かれ形勢は逆転されるだろうことは目に見えていた。


「死なないよ、ボクは」


 何度も何度も再生するクローン人間に、真雪は足元をふらつかせる。何とか踏ん張るものの、その隙をつかれた。


 クローン人間が真雪の左腕を掴むと、その痛みに真雪はひざまずく。


「峻ッ!」


 弘毅の声に振り向いたのはクローン人間だった。


「コウキ、もうすぐ終わるから、見てて」


 舌打ちして、弘毅は念を込めながら大地に手をつく。生成するのは既にワンパターンとも思われる槍。その弘毅をちらりと見やって真雪が言う。


「下がってて」


「ばっかやろーっ」


 弘毅の繰り出す先はクローン人間。裂ける身体。


「コウキ…」


 クローン人間は信じられないものを見るような目で弘毅を見やる。


「ごめんな、峻。俺がお前を苦しめてる。今も昔も」


 刺した槍を抜いて、振り下ろす。クローン人間は斜めに切られて倒れた。


「ごめん…」


 クローン人間の倒れた姿に呟くように言ってから、呆然とする真雪に向き直る。


「大丈夫か?」


 膝をついて真雪の顔を覗き込む。そっと触れようとして、真雪の表情が変わった。


「危ないっ」


 真雪は叫ぶと同時に弘毅に体当たりしてきた。一緒になって地面を転がりながら振り返ると、クローン人間が立っていた。今、弘毅のいた場所が黒く焼け焦げて見えた。


「コウキ、大好きなのに…」


 クローン人間の身体から青白い電流のような火花が弾ける。


「どうしてボクじゃダメなの? どうしていつもボクを捨てるの?」


 一歩ずつ近づくクローン人間に、弘毅は再び槍を構える。が、クローン人間の手が空を切ったかと思うと、槍は弘毅の手元から粉々に砕けた。


「ダメだ。弘毅、逃げてっ」


「できるかっ」


 一瞬で、クローン人間は二人の眼前に移動した。


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