第5話 薄い壁

「えー!鉛筆デッサンからすんのー?」

「まだ一年だから、空書きは出来ないよ」

 おにぎりを片手に、とりあえず私は、船の下描きをする。なにか漢字でも入れようかな。とりあえず『不』という文字を竹の絵を描くわけでは無いけどいれてみた。

「お、不倫?不倫って書くの?」

 彼が思い切り茶化すので

「違います!」

と言い切り、『不眠不休』と書いた。

 それを見て彼は大笑いをした。それをみて私も笑った。

「淡々と描くのも何だから音楽でもかける?」

「お、いいね~」

 彼から許可を貰い、CDプレーヤーを再生した。

 マリリン・モンローが流れる。

「.......急に墨汁がピンクにしか見えん」

「はは、こんな時期に交わらすなんて狙ってる?って。そんな事は無いわよ」

 お酒片手に桜の花を描いたり、舟を描いたり。こんな時間は、一体いつまで続くんだろう。

 彼のツボにはハマったらしく、調子に乗って音楽を大音量でリピートしていた。

 35分たった位に、ドンドンドンと隣の壁から音がして

「うるせーぞ!」

と怒られた。

 CDプレーヤーの音を小さくしながら、私達は見合って笑った。

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