第6話:唐突に夢オチにしてきた上に魔王倒しやがった


「という夢を見たんだ」

佐藤一郎はベッドの上で目を覚ました。そして先ほど見た夢の話を妻であるアンナにしていた。

「ふーん……で、どの辺から夢だったの?」

アンナは俺に尋ねる。実の所先程までの話は夢ではなく、数年前に起きた過去の実話なのだが、それは内緒だ。

「えっと、魔王を倒したあたりかな」

「そう……。その魔王って誰のことなの?」

「ああ、確か……アルなんとかって言ったような気がするな」

「そう……。じゃあ、あなたはその勇者様に助けられたってことね……」

「まぁ勇者マリアには助けられたかな。最終的に勇者が三百人くらい集まって戦ったからよく覚えてないが」

「すごい数ね……。でもまぁ、勇者様に会えたのなら良かったんじゃない。私なんか、勇者様が目の前に現れたら気絶してしまうかもしれないわ」

「確かにそうだな」

「それで、今度いつ帰ってくるの?」

「うーん……」

俺は朝の支度をしながら考える。別に遠出する予定もないので、いつ帰ってくるかと聞かれたら今日だが。

「今日帰る」

「あら、そうなのね。珍しいわね」

「まぁたまにはな」

「そうね……。いつもは一ヶ月に一回帰ってくればいい方だものね」

「まぁ、そういうことだ。じゃあ、行ってくる」

あれ? 俺は毎日家に帰っているはずだが。妻の認識は一体どうなっているんだ。

まあいいや、早く仕事を終わらせて帰ろう。

仕事を終えた俺は家に帰ってきた。すると、家の前にはなぜかマリアがいた。

「お帰りなさい」

「ああ、ただいま」

「なんで疑問形なのよ」

「いや、普通にただいまと言っただけだが? 疑問形ですらない」

とりあえず妻のアンナの姿を探す。今日はこれから同期の農民ユウシャと酒場で飲み会だ。

しかし俺の予想に反してアンナはいなかった。

「なあ、アンナはどこに行ったんだ?」

「さあね……。どこかに遊びにいったんじゃないかしら」

「ふむ……。なるほど……。ところで君はなぜここにいるのかね」

「うっ……。それは……」

まあ気にすることはないだろう。数分もすれば音速でいなくなるだろうから。そんなことよりアンナとユウシャだ。

「じゃあ俺はもう行くよ」

「ちょっと待ちなさいよ!」

「なんだ?」

「私も連れていきなさいよ! 暇だし」

「嫌だよ」

「即答!?」

だって面倒くさいし。それに音速のタックルとか怖いし。

しかし断ってもタックルが飛んでくるのは明白なので、俺は渋々同行を了承した。

「わかったよ……。一緒に行こうか……」

「やったぜ!!」

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