第5話:佐藤一郎がティータイム大好きマンになってる

「おい……。お前はなんなんだ?」

俺の言葉に反応して、リリィは口を開いた。

「あんたこそ何者よ!」

「俺は佐藤一郎だ」

「聞いたことないわね……。まぁ、私のことはいいじゃない。それよりもどうして私のことが気になるのよ?」

さっき名乗った上に名前については既にマリアだと判明している。俺はため息を吐いた。

「そんなの決まってるだろう……。俺はティータイムを邪魔されたんだぞ!」

「うっ……。それは悪かったけど……。あんたがティータイムしてようがしてまいが関係ないでしょうが!」

「確かにそうだが……。ティータイムを邪魔されたのは事実だ!」

「うっさいわね! あんたにとってティータイムはそんなに大事なの!?」

「ああ! ティータイムは大事だ!」

「うっさい! うっさい! うっさい!」

「なんだと!? この野郎! ぶっ飛ばしてやる!」

「やってみなさいよ! 返り討ちにしてあげるわ!」

俺は臨戦態勢に入った。

しかし音速のタックルを持つマリアに勝つことはできなかった。

「ぐはあぁ!!」

「ふん! ざまあみろ!」

「くそぉ……。なんて力だ……」

「当たり前でしょ! 私は勇者よ! 魔王を倒しにいくの!」

「そうか……。頑張れよ……」

「な、何よ、急に……」

というか、彼女も勇者か……マジで勇者多いな……。

「よし! リリィちゃん!」

「はい! アルルさん!」

二人は手を取り合っていた。仲が良くなってよかった。

「それでは行きましょうか!」

「はいっ!」

「え? どこに?」

「もちろん魔王城ですよ!」

勇者たちは皆魔王城に行きたがるジンクスでもあるのか。もはや一種の観光名所じゃないか。

「そうか……。じゃあな」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

リリィは俺を呼び止めた。

「私たちと一緒に来なさい!」

「なんでだよ……」

「私とアルルは二人でパーティを組んでいるの。だから仲間が必要なわけ。わかった?」

しかしリリィとマリアでキャラが被るので俺は断った。二人は渋々それを了承し、魔王城へ旅立っていった。

その後、魔王城にたどり着いたのかは分からないが、リリィとアルルの姿を見たものは誰もいなかった。

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