9. 帰還
「おかえりなさい」
「ただいま…」
疲れた。
疲れたよ…。
「
須貝の顔を見たら、安堵感からなのか足に力が入らなくなって、
須貝に抱きつくカタチで前のめりに倒れる。
「大丈夫ですか…?」
「あぁ…」
レベルが高い区域に赴くのは、体力、集中力ともにかなりの消耗することは予想出来ていたのに。
想像以上に、疲れが押し寄せる。
「本当に、大丈夫ですか…?」
「うん…」
でも、なかなか須貝の腕から離れない俺を須貝はそっとギュッと抱きしめる。
須貝のぬくもりを、いつもなら拒否するのに…。
どうしたんだろう…。俺…。
「志井さん、お疲れ様です…」
「うん…」
あと少し、
このままで…。
「須貝、ありがとう…」
「はい…」
もう大丈夫だから。
上を向くと、須貝の背中越しにニヤニヤしている
「二人は、付き合ってるの…?」
「お似合いですねっ」
いや、違う。
付き合ってないから。
俺が言う前に、須貝は首を横に振り、
「付き合ってません」
「付き合ってはない…」
でも、付き合ってるんでしょ…?
そんな眼差しを避けるように、俺は言わなきゃいけない話を切り出す。
「三堂くん」
「はい…」
「次からは瞬間移動できるヤツ、連れて行けよ…」
狩りする時に、術士を連れて行くのは基本だろ。基本。
危険を顧みないのは、玲音の為にもやめて欲しいところだが。
「レイさん、疲れてたから…」
疲れてても、連れて行けよ。
三堂くんより武器の扱いには慣れている稀少術士なのに。
「俺は一緒に行きたかったんだけど、アレな日でね…」
玲音は、中性的な顔つきとダボッとした服を着ているせいか女性には見えない。
「女性…?」
須貝が新鮮な驚きで、玲音をまじまじと見る。
一人称が「俺」なだけで、
「女性だよ。俺の元カノだし…」
「うん。大好きだったよ」
ニコッと笑って、真っ直ぐに言うのは今も変わらない。
そして、玲音は三堂くんの腕に絡ませていた手で更に三堂くんを引き寄せる。
「今は、このヘタレくんが大好きだけどね」
「ヘタレって言わないでください…」
デレデレしやがって。
イチャイチャしやがって。
こんなヤツ、助けなきゃよかったって思うくらい幸せそうな顔して、さ…。
「何か、ムカつきますね…」
「あぁ、ムカつくな…」
でも、無事に戻って来られてよかった…。
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