4. バケモノ召喚

「召喚、失敗…?」

「そうだな」

 召喚したバケモノにお店の商品を壊されそうになるが、急遽張った防壁だけが壊される。

 見た目だけかと思ったが、そうでもなさそうだな。

「今日は、一人なんだけど…?」

「仕方ないだろ…」

 気持ちが不安定な上、今、俺をお姫様抱っこしながら照れるバイトくんによって、睡眠を妨げられた。

「ボクのせいですね…」

「そうだな」

「でも、志井しいさん可愛かったから…」

「可愛くねぇわっ」

 中身、オッサンに可愛いは言うな。と言わんばかりに須貝の胸板をこれでもかってくらいに叩いた。

 それでも何故か嬉しそうにする須貝すかいに、何とも言えない感情が湧き上がる。

 幼いカラダであることに、この時ばかりは感謝した。

「痛いですよ…」

「当たり前だ」

 こんなやりとりをしながらも、防壁作ってバケモノからの損害を阻止。

 バケモノの特性が、確定したようだな。

 出居でいさんと目を合わせて、お互い頷いた。

「須貝、強制参加」

「手当、付けてくださいよ…?」

 須貝は少し笑って、抱きかかえていた俺に顔を近付ける。

 頬に須貝のぬくもりが伝わるくらい近いけれど、チューはして来なかった。

「志井さん、いってきます…」

「いってらっしゃい」

 そして、須貝は俺を下ろして、腰に着けている短銃を構える。

「では、いざ参らん…」

「はい」

 刀の鍔を触り、そのまま走り出す出居さんの護衛のような形で、須貝は確実にザコを倒していく。

「手当、多めに付けますか…」

 そう呟いて俺は、自身に防壁張って見守り。

 もとい店内の商品に更に防壁張って、見守り。

 中途半端な召喚をすると、中途半端に現実リアルが残ってしまう。

 したがって、このように防壁を張るという作業が増える。

 意外と、この作業は体力消費が激しい。だから、攻撃は極力避けたい。

「こっち来ないでよ…」

「外に、魔方陣書けばよかったんじゃないですか?」

 出居さんの護衛をしつつ、須貝はこちらに来たザコまで倒してくれる。

 ごもっともな意見、ありがとうございます。

「これからそうする…」

「でも、外だと恥ずかしくてチューできない…」

 しなくていい。

 やっぱり、嫌い…。

 嫌いだけど、

 でも、ズバッと言ってしまえるのは須貝しかいない。

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