第150話「委員長、本当に地雷系が好きなんだな」
デートの日程は決まった。
デートのコースも決まった。
もはやオタク君が憂う事は何もない。
「デート、どうしようか」
残念な事に、憂う事ばかりだった。
服装はどうするか、プレゼント選びはどうするか、そもそもどうやってエスコートするか。
優愛やリコはギャル寄りだが、委員長はどちらかといえばオタク寄り。
ならば、優愛やリコの時のデートの経験を生かすのは難しいと考えるオタク君。
電話口で話していた委員長は、普段と違いとても饒舌で楽しそうだった。
なので、出来る限り楽しいデートにしてあげたい。
その為にはどうすれば良いか、悩みに悩み、ついにデート前日になっていた。
‐そして当日‐
『おはようございます。雪光さんもう起きてます?』
時刻は朝の七時。
オタク君が委員長とデートの待ち合わせの時間は十時。まだ三時間近く時間がある。
だというのに、オタク君は委員長にスマホでメッセージを送っていた。
何故か?
今までの経験上、時間よりも早く集合場所に向かってしまうからだ。
オタク君も、優愛も、リコも。
デートに遅れたら申し訳ない。だからデートの待ち合わせ時間よりも早い時間に集合場所にいつも向かっていたオタク君。
きっと他の人も同じなのだろうと考えたオタク君。
だから、委員長も遅れたら申し訳ないと思い、早く来てしまうからもしれない。
なのでメッセージを送ったのだ。まだ集合場所に来ていないか確かめるために。
『さっき起きたところだよ』
『そうなんですか。待ち合わせは十時なので、家を出る時にまた連絡しませんか?』
『うん。良いよ』
オタク君とのメッセージのやり取りを終えた委員長。
そっとスマホを机の上に置き、壁にかけられた時計を眺める。
「そっか……そうだよね」
時計の針はまだ、七時五分を過ぎたところである。
もしオタク君からのメッセージがなければ、委員長はデートの待ち合わせ場所に向かっていただろう。
オタク君。見事に経験が生きている。
こんな時間に行ってもオタク君は居ない。
かといって、何かほか事をしようとしても、集中出来ずにいる委員長。
適当にまだ読んでいないラノベを手に取り、少し読んでは時計を見ての繰り返しである。
当然、何度見ても時計の針が早く進む事はない。
結局内容が頭に入らなかったのだろう。
少しだけ読んだラノベを机の上に置くと、鏡の前に行っては前髪をチェックしたりと落ち着きが無い様子である。
おかしいところがないか、くるりと回って背中まで確認したりと、入念にチェックを入れる。
十分すぎる程確認をしたというのに、少し時間を置くと不安になりまた調べようとしてしまう。
(やっぱり、こっちの服のが良いかな?)
几帳面な委員長にしては珍しく、床や机の上には装飾品や服が散らばっていた。
デートどころか、男の子と仲良く二人きりで出かけた経験すらほとんどないのだから、仕方がないともいえる。
先ほどまでは待ち合わせまでの時間が長く感じていたが、今は服が決まらず時間が経つにつれ焦っていく一方である。
(どうしよう……そうだ!)
『小田倉君は、どっちの服が良いと思う?』
オタク君のスマホには、委員長の服がずらりと表示されていた。
スタンダードな黒とピンクの物から、全体的に甘い感じのするピンク、ちょっとパンクの入った物やどちらかと言えばゴスロリに近い物など様々である。
オタク君の好みに合わせた服装にしたいのだから、オタク君に聞くのが一番。
それに、大好きなオタク君と待ち合わせ時間までおしゃべりができる。委員長、一石二鳥の作戦である。
「委員長、本当に地雷系が好きなんだな」
大量に送られてきた委員長の私服写真を見て、感慨深そうにつぶやくオタク君。
委員長が好きなのは地雷系じゃなくオタク君なのだが。
『そうですね。組み合わせとしては、これとこれとかどうです?』
真面目に考えて返事をするオタク君。
オタク君が返事を送ると、すぐさま委員長が「どうかな?」と着替えた写真を送る。
その写真を見て、褒めつつも「こっちのコーデとかもどうです?」と提案をするオタク君。
こういう場合、男というのはすぐに「それで良いじゃん」と即決したがる。
しかし、女子としては色々試してみたいものなのだ。優愛やリコと買い物に行くことがあるオタク君はその辺をよく理解していた。
なので、委員長が気のすむまで、トコトン付き合おうと考えていた。今日は委員長の誕生日でデートなのだから、委員長に喜んでもらえるために。
もちろん、そんなのは建前である!
委員長のような可愛い女子が、この服着てと言ったらお着替えして写真を送ってくれるのだ。楽しいに決まっている。
オタク君が自分では試せないような服を、着せ替え人形のように着替えてくれる委員長。
この組み合わせも良いな。いや、こっちの組み合わせも見て見たい。
結局出かける時間になるまで、オタク君の委員長着せ替えは続いた。
『どうせなら、お店で他にも良い服がないか見に行きましょうか?』
『うん』
待ち合わせ場所についていないが、オタク君と委員長のデートはもう始まっていたと言っても過言ではないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます