第149話「よし、デートに誘うぞ!」
「そういえば、雪光さんの好きな物って詳しく知らないよなぁ……」
普段の格好からして、地雷系のような服装が好きなんだろうけどと思うオタク君。
残念だが、それは委員長が「オタク君は地雷系が好き」と勘違いしているからである。
「プレゼントかぁ……」
男性ファッションに疎いオタク君だが、女性ファッションなら何とか理解できる。
地雷系となれば、オタクも好きなジャンル。なので、地雷系でチョイスするならオタク君のセンスで何とでもなるだろう。
だが、それでもオタク君は腕を組みながらうんうんと悩んでいた。
「そもそも、僕なんかがデートに誘っても喜ぶのかな?」
そう、オタク君が悩んでいたのは何を贈るかではなく、委員長をデートに誘って喜ばれるかである。
かつて、異性の友達の誕生日にはデートに誘い、一緒に誕生日プレゼントを選んであげると喜ぶと聞き、本当に優愛やリコを誕生日デートに誘ったオタク君。
彼の中では、その成功体験から、女の子の誕生日にはデートに誘ってあげるものだとインプットされていた。
だから、委員長の誕生日はデートに誘うべきだと思うオタク君。
「そこまで仲良くないと思われてたらどうしよう」
手を繋ぐどころか、キスをして下着選びまでしておいて何を今更である。
仲良くなるとかデートをするとか、本来の過程を色々すっ飛ばしている。
そこまでしておいて、デートに誘うのを悩むのはどうかと思うが、これも自己評価の低さ故なのだろう。
やはりやめておこうかな。
そう思いつつも、優愛やリコはデートに誘い、チョバムやエンジンの誕生日も祝っておいて、委員長の誕生日は何もしないのは流石に気が引けるオタク君。
他の人は祝っているのに、自分だけ祝われなかったと委員長が知ったらどれだけ悲しむだろうか。
「よし、デートに誘うぞ!」
なので、オタク君は覚悟を決め、デートに誘う事にした。
委員長に拒絶されたら自分は凹むのは分かっているが、委員長が傷つくのはもっと凹むだろうから。
『今度雪光さんの誕生日ですよね。良ければその日デートしませんか? 誕生日プレゼント一緒に選びたいので』
メッセージを送れたのは、オタク君が覚悟を決めてから、一時間後の事であった。
覚悟を決めてメッセージを送ったが、それでも緊張はするものである。
むしろ送った後の方が緊張をしてしまっている。
文章はこれで良かったのだろうか。やっぱり迷惑だったんじゃないだろうか。
悪い想像ばかりが頭に浮かび、不安でいっぱいになるオタク君。
「さっきのメールは送る相手間違えたって事にして、撤回した方が良いかな?」
あまりに不安過ぎて、無かったことにしようとするオタク君だが、もう遅い。
そもそも委員長の名前まで書いておいて、送る相手を間違えましたは無理があるだろう。
何度もスマホの画面を確認しては、返事がないか確認をする。
だがメッセージを送ってまだ数分。そんなに早く返事が来るわけが。
「うおっ!?」
あった。
驚きながら、恐る恐るスマホの画面を確認しようとするオタク君。
しかし、内容を確認する前に委員長からのメッセージが矢継ぎ早に飛んできており、とてもではないが目で追えるスピードではなかった。
『行く!』
『どこに行くか予定決まってる?』
『小田倉君が行きたいところあればそこでも良いよ』
『最近気になってるお店があるんだけど、一人じゃ入りづらいから一緒に来てくれると嬉しいな』
『急にデートしよってメッセージ送ってきてびっくりしちゃった』
『デートって事は、もしかして二人きりなのかな?』
『あっ、その日は朝から空いてるよ』
『ご飯はどうする? モーニング? お昼と夜も一緒に食べる?』
『って私ばかりメッセージ送ってて迷惑だったかな?』
『楽しみ過ぎてついついいっぱいメッセージ送っちゃった!』
オタク君がスマホを開くと、メッセージが大量に表示され、なおも追加のメッセージが飛んできている。
中には同じような内容のメッセージがループしたりしており、流石のオタク君もドン引きである。
多分メッセージはパソコンから送っているのだろう。
オタク君が返事を書こうとした瞬間には委員長から次のメッセージが届いているのだ。
スマホでは、とてもじゃないが返事を書くのが間に合わない。
まるでスマホが話しかけてきているかのように次々とメッセージがうつる様子は、軽くホラーである。
「もしもし、雪光さん?」
なので、メッセージのやり取りを諦めオタク君は、委員長に電話をかけた。
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