閑話「DOKIDOKI第2文芸部+!(委員長視点)」
放課後の誰も居なくなった教室にポツンと佇む一人の少女。このクラスの委員長である。
彼女は今、重要な事で悩んでいた。
(最近、小田倉君と話す機会がめっきり減った)
オタク君とクラスメイトの委員長。彼女は隠れオタクである。
同じく隠れオタクであるオタク君とはひょんな事から意気投合。
誰も居なくなった教室で、オタク君とオタク会話をするのが彼女のひそかな楽しみになっていた。
しかし、委員長はある日を境にオタク君と話す機会が減ってしまう。そう、オタク君と優愛の出会いだ。
オタク君にべったりな優愛にジェラシーを感じる委員長。
(……小田倉君は根暗なオタク女よりも、陽気なギャルのが良いよね)
委員長の想いは募っていく一方だった。
(そうだ。小田倉君好みのギャルになれば、また私に振り向いてくれるはず)
そう思い立った彼女は、小田倉君の好みを調べる為に第2文芸部に向かった。
‐委員長視点‐
ここが、小田倉君の所属する第2文芸部。
中からは楽しそうな話声が聞こえる。
小窓から中を覗くと背の高い人と、ふくよかな人が仲良く話していた。
多分あの背の高い人がエンジンさんで、隣にいる人がチョバムさんね。小田倉君から聞いた特徴と一致してるし。
小田倉君からは「委員長も話してみたら」と言われてたけど、いきなり入ってきて話しかけられても嫌がられそう……。
私、可愛くないし、陰キャだし。
ドアの向こうの世界では、楽しそうにオタクの会話をしている。
私もあんな風になりたい。そしてエンジンさんやチョバムさん、小田倉君と仲良く話してみたい。
このまま回れ右をして帰りたくなる気持ちを必死に抑えて、私はドアに手をかけた。
ゆっくり開けたつもりなのに、やけにドアの音が大きく聞こえる。
「あの、少しお話宜しいでしょうか?」
「どうしたでござるか?」
「入部希望か見学希望ですかな? 一応言っておきますが、ここは第2文芸部ですぞ」
どうしよう。怖い。やっぱり帰りたい。
でも、このまま小田倉君との関係が終わるのはもっと怖い。
「いえ、ここであっているので大丈夫ですよ」
脳内で鳴海さんが普段どんな風に会話していたかシミュレートする。
大丈夫。私は変われる。
鳴海さんはきっと、こんな風に笑っていたはず。
無理に笑顔を作ると、エンジンさんもチョバムさんもニコリと笑顔を返してくれた。
「それでご用は何でござるか?」
「はい。実は小田倉君の性癖を教えて欲しくて……」
(訳:ねぇねぇ、小田倉君の趣味教えて?(*'▽'))
「……はっ!?」
「ですから、小田倉君の性癖です。好きなゲームやアニメの女の子を教えてください」
(訳:えっとね、小田倉君の好きなゲームやキャラを教えて欲しいの(*^▽^*))
笑顔で言うと、エンジンさんとチョバムさんが一瞬固まった気がする。
でもすぐに笑ってこう言ったの。
「いやぁ、あっはっは。サッパリでござるな」
「小田倉氏の性癖をと言われましても、皆目見当もつきませぬ」
あっ、これあれだ。仲良くなった時にイジワルするやつ。
凄い、鳴海さんの真似をしたらすぐに仲良くなれた!
嬉しいな。
「私から小田倉君を隠すつもりですか!?」
(訳:もぅ、イジワルしないでよ(/ω\))
「あっ、こんな所に偶然小田倉殿のフォルダがあったでござるよ」
チョバムさんがわざとらしくマウスをカチカチさせてる。
あっ、手が勝手にってやつだね。
「見せて」
(訳:みーせーてー(*´▽`*))
「は、はい!」
「ピンクの髪の女の子が多いんですね」
「そ、そうですな。小田倉氏は基本ピンク髪が好きと言ってたですぞ」
「他には?」
「えっ?」
「だから、他には?」
(訳:まだ何かない?(?_?))
「ヒィ」
「そ、そう言えば最近はギャルを2人連れてるのをよく見るでござる」
「それは知ってるわ!」
(訳:うん知ってる知ってる! 鳴海さんの事だよね! なんか小っちゃい子も一緒にいるの見かけるよね!(=゜ω゜)ノ)
エンジンさん、チョバムさんと共通の話題が出たのが嬉しくて、つい早口言葉になっちゃった。
やっぱり共通の話題があると話やすくていいよね。
「ヒィィィィィ」
なんか二人ともさっきから同じタイミングで変な声出してる。
本当に、二人は仲良しなんだ。良いなぁ。
……っと羨ましがってる場合じゃない。
そろそろ日も暮れるし、小田倉君の好みの女になるために色々買い物にも行かないといけないし。
「良いから隠さないで早く教えて」
(訳:そろそろ帰らないといけないから、小田倉君の好み他にも教えてください(o*。_。)oペコッ)
「あ、あれですぞ。地雷系メイクというのにハマってると言ってましたですぞ」
「地雷系メイク?」
地雷系?
確かギャル物のラノベに単語は出てくるけど、どんなのだろう?
ちょっとお邪魔してパソコンで調べさせてもらう。
「そっか、小田倉君はこういう子が好きなんだ」
ちょっとフリフリした感じの服に、V系とはちょっと違う感じのメイク。
いくつか写真を見比べて、共通点がある部分が多分地雷系の大事な部分なんだと思う。
とはいえ、これだけじゃ分からないし、とりあえずUSBメモリに小田倉君のファイルと地雷系っていう写真を保存する。
これで帰ってからもっと詳しく調べることが出来る。
「……今日はこれで帰るから、次回までに小田倉君の事もっと調べておいてくださいね」
(訳:今日はありがとね。またね(^_^)/~)
「「は、はい」」
小田倉君の言う通り、エンジンさんもチョバムさんも面白くて良い人だった。
第2文芸部か、小田倉君の事抜きでまた来ようかな。
ルンルン気分で部室を出て、ふと思いついた。
ちょっとイタズラをして、二人を驚かしてやろう。
扉を開けて驚かそうと思ったけど、丁度扉に付いた小窓から二人が近づいてきたのが見えた。
よーし。
「何見てるんですか?」
(訳:ワッ!\(^◯^)/ )
「ヒィ」
オーバーなリアクションで倒れる二人。
うふふっ。多分これで二人と仲良くなれたよね。
今度小田倉君に会ったら、第2文芸部の人とお友達になれたよって報告しよう♪
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