第95話「フーン。オタク君はどんな水着買ったか気になる感じぃ?」
「チョバムとエンジンは来ないのか」
夜、自分の部屋でベッドに寝転がりながらスマホを眺めていたオタク君。
優愛たちと温水プールに行くのでチョバムとエンジンも誘ったのだが、あいにく二人は用事があるという事で断られてしまった。
まぁ、行ったところでオタク君のハーレムを見せつけられるだけなので、仕方がないといえば仕方がない。
オタク君としては、ハーレムを見せつける意図などなく、男が自分一人だけなので他の男メンバーが欲しかっただけだが。
自己評価の低さ故に、優愛たちからの好意に全く気付いていないので。
「明日は遅れないように、目覚ましをセットして早く寝るかな」
時間は夜の十時を回ったばかり。
ここ最近は連休という事もあり、夜更かしばかりしていたオタク君は既に眠かったりする。
優愛たちとのライングループを開くと、優愛がマシンガンのようにメッセージを送り、リコが「はよ寝ろ」と突っ込んでいた。
『明日の為に早めに寝ますね。おやすみなさい』
下手にツッコミを入れると、優愛が余計に止まらなくなりそうなので、あえて触れないオタク君。
そのままスマホの電源を落とし、眠りについた。
翌朝。
駅にある大きな金色の時計台。
有名なスポットらしく待ち合わせに使われる事が多く、付近には待ち合わせらしき人達がスマホを見ながら辺りをキョロキョロしていた。
「ごめん、待った?」
「いえ、大丈夫ですよ」
普段は約束の時間よりも早く来る優愛が珍しく遅刻である。
「ったく、だから早く寝ろって言っただろ」
「ごめんごめん、危うく遅れるところだった」
「遅刻だっつうの」
優愛とリコのやり取りを見て苦笑いのオタク君と委員長。
遅刻と言っても十数分程度、気にするほどではない。
リコもあれこれ言ってはいるが、じゃれ合いの範疇である。
「それじゃあ気を取り直していこ―」
まだ何か言いたかったのだろうが、言葉を飲み込んだリコが軽くため息を吐く。
ここで何か言えば優愛がちょっかいをかけて来て無駄に時間を食うのが分かっているからだ。
オタク君だけならともかく、委員長もいるので彼女なりに気を使っているのだろう。
「そういえば、新しい水着買ったって言ってましたけど、どんなの買ったんですか?」
流れを変えるために、優愛たちが一番食いつきそうな話題を出すオタク君。
話題を変えなければ、優愛がツッコミ待ち発言をし続けリコがイラっとしそうなので。気の利くオタク君である。
「フーン。オタク君はどんな水着買ったか気になる感じぃ?」
「リコさんと委員長はどんなの買ったんですか?」
「アタシは結局買わなかったから去年と一緒だよ」
「私は二人に選んで貰った」
「うぉい、スルーかよ!? オタク君、私にも聞いてよー」
優愛の発言に、オタク君たちが笑う。
今のでリコの溜飲も下がり、機嫌が直ったのを感じるオタク君。
特に問題が起きる事無く、休みは何をしていたか話しながら、温水プールへと向かって行った。
オタク君たちが来た温水プールは、去年来た温水プールである。
県内でも最大の温水プールで、波の出るプール、流水プール、更には100M以上のスライダーまで設置されている。
夏場に来ようものなら、スライダーは数時間単位の待ち時間が発生する事もある。
だが、今は時季外れという事もあり、ゴールデンウィークだというのに温水プールに来ている人はそこまで多くはない。穴場スポットである。
しかも市営なので料金は数百円という安さまで備えている。
優愛たちと別れ、男子更衣室へ向かったオタク君。
着替えはハーフパンツの海パンだけなので一瞬である。
荷物をロッカーにしまい、真っすぐプールには向かわず鏡の前に立つとポーズを決め筋肉を仕上げ始めた。
オタク君の中で数少ない誇れる自分なのだから、張り切ってしまうのは仕方がない。
だが、そんな風に鏡の前で筋肉を仕上げていれば、他の筋肉自慢が黙っていない。
「なっ!?」
思わず声を上げるオタク君。
オタク君の右隣で、オタク君よりも頭一個分ほど身長の高い色黒の男が同じように筋肉を仕上げ始めたのだ。
色黒の肌に、脱毛をしたのかムダ毛の一本もないつるつるボディ。
極めつけはその筋肉である。
上半身を鍛えに鍛えたであろうその体は、見事な逆三角形の形をしていた。
「っ!?」
それだけではない、いつの間にかオタク君の左隣にも筋肉を仕上げる色白の男が立っていたのだ。
色白の男の身長はオタク君と同じくらいで、体の大きさでいえばオタク君の方が大きい。
だが、色白の男は確かにオタク君に比べ体の大きさは劣るものの、スリムな体系で綺麗なマッチョをしていた。
細マッチョなど比ではない程のスリムさ、その細い体に似合わぬ鍛え上げられた筋肉が美しく咲いているのだ。
「ほう……見れば分かる。その体系、体脂肪率は三%以下だな。ボクサーのような過酷なトレーニングでもしないとまず無理だ」
「過酷ねぇ。そっちこそ、その筋肉ただイタズラに痛めつけただけじゃないな。限界を超えた先の限界に何度も挑戦したんだろ?」
「そして眼鏡の坊主、その鍛え方はジム通いではないな。だというのに計算されつくしたバランスの良い筋肉をしている」
色黒のゴリマッチョ、色白のスリムマッチョ、そしてオタク君のバランスマッチョ。
それぞれが筋肉を褒めたたえあい、最後に揃って笑顔でポーズを決める。
彼らの筋肉はとてもキレていた。
一方その頃。
「小田倉の奴、おせぇ」
リコもキレていた。
オタク君が中々更衣室から出て来ないから、ナンパがしつこいので。
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