第66話「まぁ、たまにはな」
『今週はリコさん誕生日でしたよね。プレゼント一緒に選びたいので、良ければ今週末にデートに行きませんか?』
オタク君。誰に言われるまでも無く、自ら動いてデートに誘える程に成長していた。
誘うぞと決めてから三日後の事だが、それでも成長は成長である。
ラ●ンの画面をチラチラ見ながら返事を待つオタク君。
『良いよ。どこに行く?』
リコから返事が来たのは、オタク君がメッセージを送ってから丁度5分後の事だった。
行き先をリコが行きたい場所で指定しようとしていたオタク君だが、「どこに行く?」により、その選択肢は消えた。
「どうしようか」
机に突っ伏して頭を抱えるオタク君。
誘う事ばかり意識しすぎて、誘った後の事を考えていなかったようだ。
どこに誘えば喜ぶだろうか、最近の女子高生のトレンド等を調べに調べたオタク君が辿り着いた答え。
『商店街に行きましょうか?』
いつもの商店街である。
どこに行けば良いか分からない。
なので、お店が沢山ある商店街なら、どこかリコが気に入る店があるだろうという物量作戦である。
『分かった』
リコから返事が来たのは、オタク君がメッセージを送ってから丁度5分後の事だった。
というのも、オタク君からいつお誘いが来るか、リコはここ数日ソワソワしていたのだ。
『それでは朝10時で。家まで迎えに行った方が良いですか?』
5分後。
『いや、商店街の前で待っててくれれば良いよ』
早く返信をするとがっついていると思われそうだ。
そう思い、あえて5分待ってから返事をしているのだ。
毎回キッチリ5分後に返事を出していたら、それはそれでどうかと思うが。
まぁ本人がそれで良いのならそれで良いのだろう。オタク君も気にした様子はないわけだし。
何はともあれ、オタク君はデートの約束を取り付ける事に成功した。
それから数日後。
商店街の近くにある観音様。
そこで待ち合わせをしているカップル達。
その中にオタク君は居た。
「ちょっと早く来ちゃったかな」
20分前に到着である。
電車に乗り遅れたりする場合もあるので、丁度良い時間ではある。
「お待たせ。待ったか?」
「いえ、今来た所です」
遅れる事10分。リコの到着である。
普段とは違い、ひらひらしたミニスカートである。
この時期ではミニスカートは寒そうであるが、ハイソックスを穿いて防寒対策はバッチリである。
ついでに絶対領域でオタク君へのアプローチもバッチリである。
「今日は可愛い格好ですね」
オタク君、鈍感ではあるが気が利く性格なので、リコの格好が普段と違う事に気付き早速褒める。
言ってる事は良い男なのだが、目線はチラチラと絶対領域に向かっている。
目の前で美少女がオタク受けの格好をしているのだから仕方がない。
当然リコもそれに気づいて居る。
が、気付いた上で指摘なんて無粋な真似はしない。
「まぁ、たまにはな」
リコはニカっと笑みを浮かべ、スカートの端を摘まみ、どうよと言わんばかりに絶対領域を見せてくる。
言動共に、良い女である。オタク君の目線は見事に釘付けである。
「見たいものがあるんだけど、良いか?」
「あっ、はい良いですよ。それじゃあ行きましょうか」
オタク君の反応に満足したリコが商店街に向かうのに合わせ、隣をオタク君が歩幅を合わせて歩いて行く。
一方その頃。
「瑠璃子も小田倉も来るの遅くない?」
「待ち合わせ時間が違うんじゃないかな?」
「マジか、でもあの二人なら時間よりも早く来てると思うんだけどな」
リコのクラスメイトの友人たちは、金時計の前でリコとオタク君が来るのを見張っていた。デートの覗き見をするために。
ここ数日でリコの反応が怪しくなった事により、彼女達はリコがオタク君とデートする事を感づいていた。
だが場所に関しては分からなかったようだ。前回オタク君が優愛と待ち合わせをしていた金時計に来ると思っているようだが、完全にハズレである。
オタク君とリコのデートの行方は2人しか知らない。
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