第11話
隣の葬儀は、チカちゃんよりも若いコだったのだろうか…。中学の頃着ていた学生服のコ達がいっぱいいた…。
葬儀の帰り道、
「俺、そう言えばアイツのオヤジだったな…」
「今更、ですね…」
「ですねぇ…」
俺の肩に顔を伏せて、泣いている…。
「双樹さん、いつまでそうしているつもりですか…?」
「うん…」
ごめんね。と口では言っているものの、動きそうにもない担任に、
「そろそろ帰りましょうか…」
「うん…」
腕を掴んで、無理やりにでも歩いてもらおうと…。思ったのに…。
「積極的だこと…」
「帰らないと、かえこさんが憤慨しますよ」
喪主を勤めたのは、もちろん双樹さん。でも、ほぼほぼ仕切っていたのはかえこさん。
双樹さんの落ち込みが酷く見て居られなくて、喪主代理として動いてた。
「そうだな…」
「帰りましょう…」
ワザとだとしても、俺、怒れない…。あんな双樹さんを見たことなくて…。
そして、ギュッと抱きしめた…。
「煽るの上手だね…」
「これは同情のハグです。煽ってません」
ハッキリ言って、双樹さんは好みじゃないから。
「じゃあ、俺からは本気のキスを…」
「要りませんっ」
必死の抵抗も虚しく、キスしてしまった…。
「…ん…」
「……ん…っ…」
何して…、もう…。
「ってぇ…、そんなに本気で殴らなくてよくないか…?」
「はぁ…はぁ…」
止まりそうになかったから、全力で抵抗した結果ですけどね。
「本当に、好きなんだけど…」
「本当に、興味ないです…」
お互い真顔で、
「俺の片想いってこと…?」
「そうですね…」
お互い笑って、
「じゃあ、ずっと片想いしてる…」
「じゃあ、ずっと片想いしててください…」
どちらともなく手を繋ぎ、
「うん。そうする…」
双樹さんは俺の手を持ち上げ、ふんわり手の甲に何かが当たった…。顔を上げると、
「これからは、俺のモノ…」
再度、俺の手の甲にキスをした…。
「
チカちゃんと重なって見えてしまった…。
やっぱり、チカちゃんの本当のお父さんなワケだ…。
「そんなに嬉しかったのか…?」
「な、ワケ…な、ぃいっ」
嗚咽しながら返事する俺に、
「………よし。よし…」
覆い被さるように抱き締めて、周りから見えないようにしてくれた…。
「何かイチャイチャしてるっぽくていいね…」
前言撤回。
このヒト、単なる抱き締めたかっただけだ…。
「抵抗しないの…?」
「今日だけ、だから…」
少し寂しげな双樹さんだから、許そう…。今日だけは。
Empty 環 @tamaki_1130_2020
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