第6話

太志たいしのお見舞い、行くの…?」

 チカちゃんが緊急入院してから数週間が経つ…。

「いいや、行かない…」

 かえこさんからは話を聞いていて、もう落ち着いているからいつでも会いに来てとは言われているのだが…。

「そう…」

 真柄まがらと一緒に行けば、俺が面倒ごとに巻き込まれるのは何となく想像がついた…。行くなら一人で行くのが得策、かな…。

「じゃあ、行くね…」

 予鈴が鳴って、真柄が去って行く…。

「はぁ…」

 何で、言ってくれなかったんだよ…。って、チカちゃんを責めそうで見舞いに行けない…。

「……ん?」

 珍しく俺の携帯電話が唸ってて、見ると。かえこさんからのメールだった…。

『太志に連絡先教えたから、遠矢くんにも教えるね』

 最後に、チカちゃんの連絡先が載っていた…。うーん…。とりあえず、もうすぐ授業だから終わってから考えよう…。携帯電話をポケットにしまおうとしたら、また唸る…。

『いつになったら、来てくれるの…?』

 チカちゃんから、だった…。

「彼女から…?」

 にこやかに携帯電話を取り上げられた。

遠矢とおやにはそんな暇ないか…」

 担任はそう言うと、携帯電話を返してくれた…。

「もう少し構ってあげたら…?」

 そう耳元で囁くと、教卓に向かって歩いて行った…。絶対、オンナだと思われた…。違うのに…。

「はぁ…」

 溜め息しか出て来ない…。

「遠矢くん、教科書落ちてるよ…」

 隣の席の女子が指差す方向を見ると、さっき真柄から借りた教科書が落ちていた…。

「あぁ、ありがとう…」

 気が向かない…。授業は特に。でも、借りたものに関してこんなに雑に扱ったことはなかった…。真柄、ごめんな…。

「じゃあ、その答えを…」

 顔を上げた瞬間、担任と目が合った…。

「遠矢に書いてもらおうか…」

 手招きされて、足取り重く黒板まで歩く。

「はぁ…」

 そもそも問題が読めない…。

「チョークって食べれますか…?」

 適当に英訳を呟き、

「食べれませんよ。って、それが答えじゃないから」

 ノリツッコミをしてくれる担任が、戻れと手を振ったので、

「はい…」

 バイバイと手を振り返した…。

「じゃあ、答えは…」

 歩きながら、考える…。チカちゃんが俺に会いたいのならば、会いたい…。でも、責めそうで…また遠くに行きそうで、何か嫌だ…。どうしたらいいんだろう…。

「遠矢の気持ちを書いたこの文章が読めなかったのは残念です…」

 全然、聞いてなかった…。皆、笑ってるけど…。担任、そんなに面白いこと言ったんだ…。

「そんな遠矢くんには、後でお話があります…」

 いい話なワケない…。この時期に、もう留年決定になった…?それとも、学校を転入…?それとも…。

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