第4話

遠矢とおや、ちょっと…」

 本日、2回目…。ちょっと強めに握られた手首が痛い…。

「どうした…?」

 痛いから、ついつい不機嫌に答えてしまう…。

太志たいしも好きってどういうこと?」

 本日、2回目の…。抱擁かと思いきゃ、胸ぐら掴まれて、必死な真柄まがらを落ち着かせるようにその気持ちを受け入れた…。したがって、俺は真柄の力強さに負けて廊下の壁にドンッと自分の体が当たる音がした。

近永ちかながくんに聞いたの…?」

 真柄は頷き、

「キスしてたから…」

「してない…」

 あれは、ノーカウントにしたい…。そんな思いから即答してしまった…。

「太志が嘘言ったって言うの…?」

 どっちに転んでも、俺は怒られるのか…。

「いや、違う…」

 ならば、覚悟を決めて、

「うん。近永くんのこと好きだよ…」

 真柄には、素直に言おう…。

「私に言った好きは、どういう好きなの…?」

 それは、恋愛感情ではない好きですけど…。

「真柄のドライなところが好きだよって意味だよ…」

 そう答えたら、俺に興味なさそうないつもの顔の真柄が、俺に近付き、

「勘違いするようなこと、言わないでくれる…?」

 いつから、こんなにクールに…。って、真柄の場合、幼い頃からクールだった…。取り乱していることが珍しいくらいで…。そうか…。本当に、俺のことを…。そう自惚れていいのだろうか…。

「はい…」

 これからは気を付けるよ。と言い切る前に、

「本当に、好きだから…」

 じゃあ。と言って、逃げるように去って行った幼馴染みの後ろ姿を見ながら、襟足からチラッと見える首筋が真っ赤だと気付いた…。可愛いところがあるのは知ってるが…。そういうこと言われて、そういう反応されると、悪い気はしない…。

「うわっ」

 教室に戻ろうとしたら、目の前に。

「何、ニヤニヤしてるの…?」

 いつの間にか、近永くんがいた…。笑顔だが、目が笑ってない…。

「いいだろ…」

 多分、一部始終見ていたんだろう…。

「よくない…」

 何が、よくないんだよ…。

「つばさのこと、可愛いって思うのは嫌だ…」

 ちょっと待て。

「近永くん、学校だから…」

 学校じゃなくても、だけど…。

「いいじゃない…」

「よくないわっ」

 必死の抵抗も虚しく、近永くんの抱擁を受け入れる…。

「諦めた…?」

 俺は、いいんだけどさ…。

「はぁ…」

 溜め息を吐いて、同級生が数名こちらの様子を伺っているのを確認する…。

「諦めた…」

 開き直るっ

「ちょ…、きょうちゃんっ…」

 襲われるくらいなら、襲いたいっ!

「そういうの、嫌いじゃない…」

 激しくイチャイチャしているように見せている時に、耳元でそんなことを囁く…。近永くんって、かなり魔性だな…。

「そういうことは、ベッドの上で…。じゃねぇわっ」

 俺は、全然構わないけどさ…。

「あれ…?相手が変わってない…?」

 ほら。同級生にからかわれるから…。

「うん。奪い取った…」

 そう言って、もっと抱きつく近永くんは、同級生に向かって、

「これからは、俺のモノ…」

 見せつけるように、俺の手の甲にキスをした…。

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