第3話
「
予想通り不機嫌な
「どうした…?」
廊下に連れ出されて、いきなり抱きつかれた…。
「暫くこのままで…」
そう呟く真柄に、付き合う…。
「もっと抱いた方がいい…?」
頷いたので、もっと抱きしめた…。興味ないオンナノコを抱くのは、どうかと思うけど…。
「お前ら、ラブラブだな…」
同級生にはもう付き合ってる認識なんだろうな。
「当たり前だろっ」
ははは。と乾いた笑いを返す。
「ごめん…」
俺にだけ聞こえるくらいの声で真柄が囁く。
「謝るな…」
真柄って意外と柔らかいなって思って、ちょっと下心があったりもするから…。
「きょ…、遠矢くん…?」
真柄を狙っている後輩が見ているのは確認していたのだが…。
「どうした…?」
「つばさ、最低だな…」
真柄に向かって、今まで見たことがない冷たい眼差しを…。
「近永くん、これには…」
近永くんには誤解されたくなかったので言おうとしたら、
「
もっとしがみ付く真柄に、近付く近永くんの手は既に真柄の胸ぐらを掴んでいた…。
「やめろっ」
二人を離そうとして、結果、吹っ飛ばされて俺が殴られるというお約束のような状況に、笑えた…。
「遠矢くん、大丈夫…?」
しかも、同時で俺に平手打ちって…。今、思い出しても笑える…。
「うん。大丈夫…」
よっこいしょ。と起き上がると、
「遠矢、冷やすよ…」
真柄に腕を掴まれて、近くの手洗い場まで誘導された…。
「はい…」
そして、濡らしたハンカチを頬にバチッと叩くように手当てしてくれた…。
「い、痛い…」
あんまり痛くなかったけど…。痛かったのは事実だ…。
「つばさ、本当に最低だな…」
もう片方の頬は、近永くんに優しく濡れたハンカチで押さえてもらい、この落差に更に笑いが込み上げる…。
「遠矢が、止めに入るからでしょうがっ」
あれ…?真柄が柄にもなくイライラしているのを全面に出している…。
「真柄に傷付いて欲しくなくて…」
オンナノコだし…。
「近永くんにも傷付いて欲しくなかったから…」
無意味に、傷付いて欲しくないんだ…。
「でも、あのコは傷付いているよ…」
そう言って、近永くんは遠くを見る…。その先には、遠くでこちらを見ている真柄狙いの後輩がいた…。
「つばさがハッキリ言えば、いいんじゃないの…?」
近永くんって、真柄と仲悪し…?
「遠矢が好き」
それって、睨んで言うことじゃないような気がする…。
「はい…?」
真柄が真顔で、
「
聞こえてますが…。
告白ってキレながら、言うものでしたっけ…?
「今、ハッキリするのはあのコとだろ…?」
近永くんは溜め息を吐き、
「それ、俺に喧嘩売ってるとしか思えないんだけど…」
また殺伐とした雰囲気になったので、
「俺も好きだよ」
真柄のドライなところ。
「だから、あのコにちゃんと伝え…」
って、話が終わらない先から後輩めがけて走って行ってしまった…。
「相変わらず、だね…」
隣で、顔をひきつらせながら笑っている近永くんが、
「京ちゃんってつばさみたいなのが好みだったの…?」
遠目で真柄を見ながら、
「ううん。全然…」
頭下げたから今、断ってるのかな…。
「じゃあ、何で好きって言ったの…?」
あーぁ、泣いちゃったよ…。
「好きだよ」
チカちゃんも。と言って、隣で何故か頬を赤らめて泣いている彼の肩に手を添えて、
「俺の好きは、そういう好きだよ…」
そう言って、肩を撫でると近永くんは俺の手を払い除けて、
「どういう好きだよっ…」
それは、恋愛感情ではない好きだけど…。
「俺だって…好きだよ…」
何か、この展開は…。ヤバいかも知れない…。
「ん……っ」
近永くんに、口を封じられてしまった…。
「ごめん…」
チャイムが鳴って、何事もなかったかのように去って行く近永くんの後ろ姿を見ながら、
「何で…?」
何で、謝った…?
「あ…」
そう言えば、俺のファーストキスだった…。
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