機械仕掛けのコウノトリ 3

 昼食は毎回一人で取ることにしていた。


以前は同僚と共にしていたが、今では相手に気を使わせることになる。


特に私の年齢になれば、会話の中心はやはりそれになるわけで、私という存在そのものが、一つの話題を消滅させるだけのものを持ってしまっていることは致命的なのだ。


 コンビニで買ったサンドウィッチを一口かじる。毎回の味にはもう慣れて、安心した諦めを、また私の腹の中に溶かして落としていく。


昼食という一人で居られる時間は、私にとっては何よりも安らぎを与えてくれて、使い古された人形のようにこの体を脳と分離してくれた。


時間が終われば、また仕事が私を待っている。


溜め込まれた仕事を私は終わらせられるだろうか?


いや、それが終わろうが終わらなかろうが私には行くべき場所がないのだから。


この決められた歯車の中に長くいることの方が、私にとってはちゃんと意思を持ち動ける理屈になるのかもしれない。


それはもう、これからの仕事に任せてしまえばいい。


 ゴミと一緒にその思いもゴミ箱に投げ捨てた。


プラスチックが惰性でゆっくりと戻る様が、裏返り死にかけてもがく蝉の足に見えた。


私はそれを軽蔑し、そして目を離すことができなかった。

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