第4話 ヴィジョン15訓練隊


 「ヴィジョン15訓練隊の新しい隊員であるバークス・スティンガーだ。」

 

 教官であるエスメ・パブロはバークスに挨拶を促すもバークスは微動だにしない。


 それもそのはずであった。


 シルバーブロンドで瞳がブルーのアギラ・ベカルスキーが虎視眈々とバークスが挨拶をしようと動いた瞬間、攻撃を仕掛けようと待ち構えていたからであった。


 「今度の新人は挨拶も出来ないんですかぁ。」


 アギラはバークスを挑発し隙が生まれる瞬間を逃すまいと自らの能力であるハイパーヴィジョンを駆使し待ち構えるも当初思い描いていた想定と異なる結果が続いた。


 『こいつ。挑発に全くのってこないな。』

 

 『動揺どころか呼吸数も心拍数も微動だにしない。』


 『それに緊張や怒りによる筋肉の硬縮や微細な動きもないなんて感情がないのか。』


 痺れを切らしたアギラはバークスに対し風属性魔法による攻撃を仕掛けた。


 「突風(ラファール)…」


 バークスは両足に力を入れ吹き飛ばされない態勢を取ると共にホルダーから戦闘用ナイフを取り出し魔法攻撃後のダガーによる暗器攻撃をかわした。


 直後に室内に銃声が鳴り響く。


 バークスは刹那の間にアギラに向かってフルメタルジャケット弾を数発撃ち込んだのだが正面にいるはずのアギラはバークスが当初確認した位置より2mほど左に位置しており、銃撃の影響は全くない様子であった。


 「バークス!済まない。もう攻撃は止めて欲しい」


 「アギラには僕からきつく注意しておくからお願いだ。」


 髪の色はブリュネットで瞳は琥珀色の痩せ型で長身の少年が慌てて止めに入った。

 

 バークスは無表情で拳銃とナイフをホルダーにしまうと挨拶を行った。


 「僕の名はバークス・スティンガー。年齢は8歳らしい。」


 年齢が8歳らしいという自己紹介で皆はバークスがどのような境遇なのかを悟り誰も

そのことについて触れるの者はいなかった。


 「僕の願いを聞いて攻撃を止めてくれてありがとう。」


 「僕の名はネブラ・チェスト。年齢は12歳この隊では一番年上で皆の纏め役といった存在だよ。バークス宜しく頼むね。」


 「それと僕が得意とする魔法は既にバークスも経験しているが相手に位置を誤認させるもしくは認識させない魔法さ。」


 その後、ネブラは髪の色がアッシュブロンで瞳ブルーのベアトリーチェ・プローニナと犬の獣人で髪の色はレディシュ、瞳がヘーゼルのカニス・バートランドを紹介した。


 「ネブラ兄さん、カニス直ぐに窓を開けて。皆、部屋の空気が入れ替わるまで呼吸を止めて。」


 ベアトリーチェ・プローニナの言葉でネブラとカニスは教場の窓を急いで開け、空気の入れ替えを行い、言われるがままにした。


 教室の空気が入れ替わったことを確認するとベアトリーチェはバークスに食って掛かった。


 「ねぇ貴方。アギラ兄さんがいきなり攻撃したのはとても悪いことよ。でも何も神経毒を教室に散布する必要はないでしょ」


 ベアトリーチェの言葉に皆は顔をしかめた。


 「お前、トリチと同じ神経毒を使用できるのか。トリチは体臭だけどお前はどこから神経毒を出すんだ」


 「ちょっとカニス。レディに向かって体臭って言わないで。香よ、カオリ。」


 「それにトリチって呼ばないで。リーチェって呼んでといつも言っているでしょ。」


 犬の獣人のカニスとベアトリーチェが口論となっている横を素通りしバークスは何事も無いように席についた。


 『はぁ、何で私はこんな問題児ばかりの隊の教官なのかしら。本当についてない』


 教壇に両手をつき教官であるエスメ・パブロは今後を考え、思い悩むのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る