第6章 W&Bの敵、デビル
翌日、5人は午前10時に第5広場に集合した。
「諸君は、G、B、R、Yの敵を
次々と見事に屈服させることができた。
ついに最後の敵、W&Bの敵に対応するときが来た。
もしも、このミッションに成功したら、
我々の計画について
諸君に詳細を伝えさせていただくことになる。
これから諸君は、『宇宙空間』で戦闘を行う。
W&Bの敵の情報を提示する。検討を祈る」
5人の目の前に微粒子映像が現れた。
『DEVIL(デビル)』という字幕と、
デビルの外見が提示された。
「・・・これって、カード?」
「タロットカードのようだ」
「ヤギのような様相をした悪魔が、
目前に居る家来の男たちを従えていますね」
5人を取り巻く空間が一変した。
5人は無重力の宇宙空間で、浮かんでいた。
「真っ暗闇だが、お互いは見えるな」
「息苦しくはない。酸素は供給されているようだ」
宇宙空間で浮かんでいる5人の前に、
全長2メートルほどの、
5枚のタロットカードが現れた。
『塔』『月』『審判』『死神』、
そして『デビル(悪魔)』だ。
「宇宙空間へようこそ。
我々は、タロットカードである。
おまえらにも1枚ずつカードをやろう」
デビルが、普通のサイズの5枚のカードを飛ばし、
5人が1枚ずつ受け取った。
Gは『隠者』を、
Bは『魔術師』を、
Rは『戦車』を、
Yは『太陽』を、
W&Bは『皇帝』のカードを受け取った。
「全て大アルカナだ。ありがたいと思え」
「mirror(ミラー)!」
Bが5人の前に、何物も跳ね返す鏡の魔法を唱え、
メンバー全員の目の前に配置した。
「ふっふっふ。我々の力を甘く見てもらっては困るよ」
『塔』のカードが巨大なハンマーを持って突進してきた。
「お前らの目の前の鏡を壊してやる!」
ハンマーで叩き壊すのではなかった。
ハンマーをかざすと、
ピカッ・・・・・ゴロゴロゴロゴロ・・・
雷がやや遠くの方で鳴るような音がしたが、
直後、5人の目の前に雷が落ちて、
5人のミラーが割れてしまった。
「我々の持つ精神力はとてつもないのだよ。
こんな魔法で現出させたものなんて、
すぐに壊せるのさ。
おまえらを掃除して、この世を浄化してやる!」
「また出せばいい!ミラー!」
5人の前に、新たな鏡が現れた。
新たな鏡も、雷が落ちて砕け散った。
『塔』とBのミラーの再現は繰り返された。
「くっそ、埒があかないな」
すると、鎌をかざした『死神』が近づいてきた。
「おまえらを殺して『世界統括電脳(WEIT)』に
揺さぶりをかけてやる。新しい世界を作り出すために、
お前らを・・・・・・殺す!」
大量の鎌が、ワシャワシャ音を出しながら
5人に向けて飛んできた。
「『空中浮遊』で大量の鎌の位置より高度を上げろ!」
W&Bが指示すると、5人は高度をあげ、
かろうじて大量の鎌を飛び越えたようになった。
「カードを上昇させよう!higher & higher!」
Gが、目前のカードの敵に魔法をかけた。
「馬鹿か。ここは宇宙空間だと言っただろう?
上も下も、右も左も、東西南北もないんだよ」
「鎌が向かってくる速度を遅くしよう!
slow down the flow of time!」
Yが目前の大量の鎌に魔法をかけた。
「馬鹿か。ここは宇宙空間だと言っただろう?
時間的概念がないんだよ」
Bは、ミラーの魔法をかけ続け、
『塔』の雷に破壊され続けても、
『死神』の放つ鎌をよけながら対応した。
『月』のカードが、大量の鎌をものともせずに
5人の方向に近づいてきた。
「おや?冷や汗が出ていますね。
だんだん、不安になってきたでしょう。
目の前の鎌が、自分に当たるんじゃないかって、
怖くて仕方がなくなってくるでしょう」
鎌をよけるのに必死で、5人とも
『月』の提示する不安要因を
気にしている暇がなかった。
『審判』のカードが近づいてきた。
「はっはっは。我々の勝利は確定した!
よけることしかできないおまえらが負ける!
我々の方が、お前らより強いだろう?
我々の方が『世界統括電脳(WEIT)』よりも
賢いし、強いのだ。
どうだ、我々と手を組まないか?
我々と組んで、
現行の『WEIT』による支配を終わらせるべく、
革命を起こそうじゃないか!」
「お前らと組んでも、
美味しいものは食べれないしな~」
Yが、『太陽』のカードを見せながら、
独り言のように言った。
「僕は、壊したり、殺したり、不安にさせたり、
勝手に決めつけたりする世界に住みたいとは思わないよ。
幸福に満ちた、明るい世界を作っていきたいんだ!」
「wonderful stroke(ワンダフルストローク)!」
Rが『戦車』のカードをかざしながら、
ホログラムのボクシンググローブを大量に現出した。
大量のグローブが、
5枚のタロットカードめがけて飛んでいく。
『月』のカードに
左フックからの右ストレートをかました。
カードの上部が、向こう側に折れた。
「う、ううっ・・・折れた」
「・・・・・・よっえ!」
Bが『魔術師』のカードをかざしながら、
ホログラムでハサミを大量に現出した。
ハサミたちはジャキジャキ音を出しながら
カードを挟んで切り刻んでゆく。
『塔』と『審判』と『月』のカードが
切り刻まれた。
『死神』は、なんとか逃げ回っている。
『塔』のカードが無くなったので、
雷が止まった。
「ミラー!」
Bが再度、ミラーの魔法をかけ直した。
5人の前に、鏡が現出した。
『死神』が投げてくる鎌をはじき返している。
「お・・・の・・・れ・・・・」
デビルは、5人のイケメンたちを
誘惑させるため、美女たちのホログラムを出した。
疲れ切っていたW&Bが、
美女をジーっと見始めてしまった。
「W&B、誘惑に負けてはいけない!」
Gが『隠者』のカードをかざしながら
「誘惑に惑わされずに、
自分が本当にやり遂げたいことだけを
よく考えるんだ!
自分の心の中を、よく見て、よく考えて!」
W&Bは、ハッと我に返った。
「そ、そうだな、そうだ、Gの言うとおりだ」
「calm down(コームダウン)!」
Rが必殺技を出した。
この必殺技は、怒りや興奮を鎮め、
冷静にさせる精神効果もたらすとともに、
怒り狂った怪物のホログラムを現出する。
「グワオー!」
Rが現出したホログラムの怪物は怒りの権化で、
全長5メートルほどで、口から炎を吐く。
ホログラムの怒り権化の怪物は、
およそ3000度の熱い炎を
『死神』とデビルに向けて吐こうとして
息を吸い込んだ。
「グワー!」
デビルは素早く逃げ、『死神』は、焼き尽くされた。
Bはホログラムのハサミを粒子に戻し、
Rはホログラムのボクシンググローブを粒子に戻した。
「honest(オーネスト)!」
W&Bはデビルに魔法をかけた。
この魔法は、本当は何がしたいのか、
何もかも正直に告白させる、
自白剤のような魔法である。
すると、デビルは、
灰色の粒子となって、消えた。
「え?まだ和解していないのに」
「お見事!」
『脳内対話システム』に『世界統括電脳』の
伝令メッセージが混線してきた。
「これで、ミッションは完了した。お疲れ様」
「でも、デビルとはまだ和解していないんですよ」
「デビルは、我々が最後に諸君の実力を確認したくて
一部始終を観察するために、
我々が仕掛けたキャラクターだった」
「今まで登場した、4人の敵も、ですよね」
Bが質問した。
「はっはっは。さすがB、君の鋭い頭脳は本物だ」
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