idle idol

人気アイドルグループのセンター、ユメカが活動休止を掲げてから、幾月が経ったろうか。

一時はマスコミを占領するまでのニュースと化した発表は、今や世間体で気にする者はほんの一握りとなってしまった。ガチ恋であったほどの応援者でさえ、鞍替えしてしまう始末。



「はあ、つまんないの」


彼らの興味とは人気グループアイドルという上っ面だけで、身を隠してしまえば追うものもいない。所詮、成り上がってしまった女一人は、時期が異なろうと辿る運命は一緒であった。




「そんなんだから、ゴミって言われてんだよ」


高いビルの屋上から下界を見つける彼女は、世間を一風した元アイドルの原型はなかった。

染めていた髪を黒に戻し、フリフリのスカートを破り捨てた、オーラの薄くなった女。




「ばーーか」


彼女が最後に発した言葉は、誰にも聞こえることはなかった。

どさ、と地面との接触を知らせた音が響いたのは、刹那の刻も経たぬ頃。

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