特攻少女の成れの果て

砂が舞い踊る赤い空。馬鹿げた戦闘機が一般市民でも構わず耳を劈く。



最前線の上空の飛行機は内部の扉を開け、人っ子一人分の通れる道が現れた。


「空軍部隊兵メイリア、健闘を祈る」

「皇帝、万歳」


口々に語りかける同僚や上司に物理的にも背中を押され、外部へ放り出されると、重力に従い急降下していく。



「健闘を祈るったって、これから死ぬんだってのに」


空中で発した言葉は、それが最初で最後なのだろうか。


人生の半分を戦争に彩られた少女は、恨みも因縁も抱いていない。

たかが生まれただけの国の兵として志願するまでに至ったのは、自己犠牲の一端なのかもしれない。


一時の戦記として自身の名が載るのは名誉だとしても、命の価値を低く見ている自国が嫌いになりそうで思考をやめた。



自然に地上へと降り立った少女は、数十人が一斉にこちらへと向かってくるのを見つけた。

人間の輪にそのまま滑り込み、誰一人も逃げはせず攻撃を開始する。


「あら、みなさん何も疑いはしないのね」


恐らく閃光弾を投げ込まれそうになった刹那、上空で回っている飛行機からの合図が出された。

集団リンチに対抗できる、頭脳も体術も持ち合わせてはいない。


くす、と最後に笑えば、身体中に巻いていた爆弾のうちひとつが、轟音とともに爆風と化していく。

それを源にでもして、身を取り巻くすべてが着火してしまえば、視界が閉ざされていく。



「なっ、人間爆弾だと?」


人道に反するとでも言いたげな小隊長らしき男には、特別に抱きついてやった。

意識がブラックアウトしていくのについて、何も抗おうと思わなかった。


口から出た言葉は、自国で奉られている存在の称賛でもなければ、儚い命を散らせたくないとかいう願望でもない。



「苦しまずに死ねるのなら、本望だわ」


それを聞いていた奴が、どこかにいたらしい。




投下された人間爆弾による死者、現時点で三十二名。重軽傷者およそ九十名。


中心にいた爆弾少女の意識あり。

戦勝の報告より、帰還いたします。






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つづく(つづかない)

「うちのこって自爆特攻型だよね」って考えてたら書いてました。

フルネームは「ヴェガトゥール・メイリア」ちゃんです。深い意味どころか意図はありませんがかっこいいよね。

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