狂依存

「やだ、やだよ。ねぇ、わるいこ、って、いわ、ないで、よ」


幼少期に長らく経験していた情景がフラッシュバックする。

母親に締められた首の跡も、父親に汚された股の痛みも、忘れたことはない。

忘れたくてもできないものなのだ。


「ね、にいさん、わたし、どうすればいいの?」


真剣な顔つきで見つめていた兄に問いかける。すぐさま愛を孕んだ瞳に変えたかと思いきや、優しく頭を撫でられる。



「──、…」


何か言われても聞こえない。大好きな声が聞き取れない。

血の繋がった人間とされた中で、助けてくれたのはこの兄だけだった。


歩くこともままならないほど視界が揺れる。ガンガンと鳴る頭の中。床にへたりこんで耳を押さえる。

見かねた兄はわたしを姫抱きの状態で運んだかと思えば、ベッドに誘い込んだ。



急に飛びつき、どちらからもともなく頭を近づけ合った。鼻が当たると笑2人。

今更兄妹じゃないなんて知らない。好きなように生きてみせる。


依存し合うぼくたちにお似合いな関係とは、誰が知っていろうと興味ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る