第3話 序章 告白

 そんな話を聞いた数週間後、トースは学校で知り合った友達とバンドなるものを結成したらしく、彼の態度は徐々に変わっていた。


 初めは下校を共にしなくなり、一人で下校する日が増えたくらいのもので他は何も変わりはなかったが、その後用事で彼の家に電話してもなかなか繋がらなくなり、遂には学校の廊下でたまたますれ違った時も、多分バンドのメンバーと思われる友達と一緒にいた為もあると思うが、一言二言しか会話を交わさなくなった。


 いよいよ彼の態度に違和感を覚えた僕は、一人でいる時を狙い、素っ気なく話しかけてみたのだが、以前とさほど態度は変わらなかった。


 しかしずっと一緒にいた者だけにしか分からない決定的な違いがあった。


 彼は楽器のあるすばらしい生活や、バンドメンバーとの日々の事を話し始めた。特にバンドの顔でもあるボーカリストが不在のまま練習していて、募集をしてもなかなか思うようなメンバーが見つからない事を真剣に語っていた。


 バンドの事だけを楽しそうに話す今の彼に、以前の下ネタを話す時のチャラけた雰囲気は一切ない。


 そこにはまったく知らない彼の姿があった。


 何か僕に話したそうに彼はもじもじとしていたのだが、「まぁ、頑張ってや。」と捨て台詞の様に言い放ち、僕はその場を走り去った。


 彼が見えなくなる所まで走り、立ち止まったその直後に猛烈なやり切れなさと、今まで感じた事のないくらいの寂しさが心の奥から溢れ出してきた。


 彼は高校に入学趣味が新たに増え、その趣味に費やす時間の中、一緒に歩む新しい仲間ができた。


 それに引き替え僕はなんとなく進学し、特に何も行動を起こさず時は過ぎていく。生きがいもなく満足感もない。


 時間とは限られたものであり、誰もが平等に与えられている。それをどう切り盛りしていくかで事が大きく変化する。そんな時間配分の中、彼は僕を敢え無く消去し、

 新たなシーンを作り出したのだ。


 今まで足並みを揃え一緒に歩んできたと思っていた彼が、いつしか後ろ姿になり、遥か遠くに見え隠れし消えてしまい、僕一人が取り残されてしまうのではないかと思えてならなかった。


 焦りや不安という思いが醜い劣等感という気持ちに変化し亡霊の如く僕の心へと憑依した。


 それからというもの、僕は彼を避けて行動する様になり、会話も途絶えていった。

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