第32話 魅力的なたわわから視線を外すのは難しい

「あの、どちら様ですか?」


「あはっ♪ ホロは心配しないでください。そちらの二人は私が相手しまうので、今のうちにお逃げくださいませ~」


 …………。


 …………。


 とにもかくにも、妹の目をこんな変態で汚したくない。


「分かりました! お願いします!」


 妹の目を隠したまま、僕達はその場を急いで後にする。


 その時、僕達に攻撃を仕掛けるが、変態女が凄まじい速度で彼らを防いでいた。




 …………女性のたわわってあんなに揺れるんだな。




 ◇




「ちっ、今日は運が悪いな」


「まさか国の犬に見つかるとはな」


 二人の男が変態女に阻まれて悪態をつく。


「淑女の前で犬だなんて、酷いですわ」


「いやいや、その格好で淑女はないだろう」


 男二人の猛攻に顔色一つ変えず避けながら、二人に傷を増やしていく。


 既に彼女から・・逃げることなど叶わないと知っている二人は、事前に打ち合わせした通りの事を進める。


 男一人が後方に逃げ去り、残る一人が変態女を請け負う。


「逃がしませんわよ!」


 変態女は男を圧倒。


 それだけで変態女の技量が高い事は明白だ。


「クソが!」


 手も足も出ず、男は変態女の攻撃によりその場に倒れる。


 傷は増えているが致命傷ではないのに、男は身体を痙攣させながら倒れ込んだ。


「ライトニング特性の麻痺毒ですわ。貴方は後から回収に来ますわね」


 男は既に動かない身体で悔しがっていた。


 変態女は男を木の影に隠し、もう一人の男の跡を追った。




 ◇




「お兄ちゃん、いつまで目を隠すのよ!」


 変態から逃げ去って数分。


 妹の目を隠しながらお姫様抱っこで妹を運んだ。


 全力ダッシュのおかげもあり、僕達は広場近くまで逃げて来られた。


「すまんすまん。まさかあんなのが出てくるとは思わなかったから」


「あんなのって…………全く、お兄ちゃんったら…………」


 ようやく解放した妹だが、顔が少し赤い。


 ッ!?


 これはもしかして、既にあの変態の姿を目にしたのか!?


 ちゃっと隠したつもりなんだがな……。


 妹にはあんな変態の姿の一欠けらも見せたくない。


「エリー、とにかく急いで宿屋に逃げよう」


「うん。それにしてもさっき女性の声が…………?」


「気にしなくていい! さあ、行こう!」


「え? わ、わかった」


 妹の手を引いて急いで帰ってった。






「あは~♪、お帰りなさい~」


「なんでここにいるんだよ!」


 宿屋に帰ってくると、ベランダの長椅子に妖艶なポーズで変態女が座っていた。


「あっ! え、エリーの目を隠さ――――」


 だが既に遅かった。


 変態女の全身を見てしまう妹。


 あああああああ、妹の目が毒されてしまうううう!






「あれ? エイミーさん?」


「あら、もう気付かれてしまわれたの。お二人ともごきげんよう」


 長椅子から身体を起こし、優雅に挨拶をする彼女。


 全身タイツ姿なのもあり、たわわも一緒に挨拶をする。


 それにしてもこの人がエイミーさんなら、あの仮面から髪の毛一つ出てないんだが、どうなっているのだ?


「エイミーさん? 本当に?」


「お兄ちゃん、もう声も忘れたの?」


「えっと…………聞いた事ある声だなとは思ったけど…………」


「それにしてもどうしてエイミーさんがそのような姿を?」


「うふふ、お二人とも、ちっともうちに来てくださらないのですから、ちょっと覗き・・に来ましたわ~」


 そう話す彼女が仮面を取り外す。


 その中から彼女のトレードマークであるドリル形の金髪が姿を現し、その隙間からこちらを見つめる美しいエメラルドのような翡翠色の瞳が覗ける。


「うわ…………あのエイミーさんが変態だったなんて…………」


「あら、私は変態ではありませんよ?」


「お兄ちゃん、久しぶりのエイミーさんに失礼でしょう!」


 いつものハリセンが僕の頭に叩き込まれる。


「うふふ、お二人が相変わらず仲良しで何よりです~、恋人の聖地でイチャイチャしていましたしね~」


「ッ!? ち、違います! あれには訳が!」


「…………」


 両親がプロポーズした場所で思い出に浸っていただけだよ!


「あれ? 僕達よりも早くここにいるという事は、先程の男二人はもう確保・・したのですか?」


「さすがはホロ様。よく確保すると分かっておられますね~」


「まあ、エイミーさんからは殺気が全く感じられませんでしたからね。寧ろ、よくあの状況であれだけ冷静でしたね」


「うふふ、こう見えてもそれなりに戦えますからね~ああいう普通の暗殺者に遅れたりはしません~」


 いつもの軽い感じで話す彼女だが、この言葉からは自信が溢れている。


「お兄ちゃん?」


「どうしたんだい、妹よ」


「さっきから目線が動いてないよ……?」


「気のせいだ。妹よ」


 ベシッ!


「女性の胸をそんなに直視したら失礼でしょう!」


 くっ…………あのたわわが気になって仕方がない。


 元々衣服からでも分かるほどに大きいそのたわわだったが、タイツ姿では想像以上にくっきり見えるから男児として目が離せられない。


 ベシッ!


「うふふ、本日は挨拶に参っただけですので、いつでも屋敷で待っておりますから遊びに来てくださいね?」


「明日にはお邪魔します! エイミーさん、本日は兄共々助けてくださりありがとうございます!」


「うふふ、エリーさん、私達の仲ですからそんなにかしこまらないでくださいまし~」


「はい!」


 挨拶を終えたたわわがその場から消え去る。


 ああ…………たわわが去って行く…………。




 ベシッ!

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