ヘンス町とアイテムボックス

第13話 新たな力を試したい時にやってくるのはいつも山賊

 僕が転生したこの世界は【神に祝福されし世界レムリア】と呼ばれている。


 単純に【レムリア】だね。


 さらに大陸も一つだけみたいで、レムリア大陸と言って、結果的に大陸はこの世界を示している感じになる。


 レムリア大陸には、王国が全部で五つあり、それぞれ仲が悪く、ずっと戦争を続けて来たけど、最近【五か国同盟】というのが結ばれて、戦争を行った国を、他の王国全体で制裁をするという同盟が結ばれたみたい。


 その同盟の原因となったのが、最悪の【ヘルナンデス戦争】であり、町や人だけでなく、沢山の土地までもが使い物にならなくなるくらい、激しい戦争だったそう。


 まあ、今の現状を簡単に言えば、冷戦状態が続いている感じだ。




 僕達はウィーク王国のクインズ町生まれで、人生初めて冒険に出た。


 旅費は御礼金が思いのほか多くて、金貨三十枚にも達している。


 さらっとお金を説明しておくと、小銅貨、銅貨、銀貨、金貨の四種類の貨幣があり、小銅貨10枚で銅貨1枚、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚になっている。


 小銅貨だけ10倍になっている感じだ。


 物価は、日本でパン一つ100円だとして、レムリアでは銅貨1枚だ。


 そういう計算でなら、小銅貨1枚が10円、銅貨一枚が100円、銀貨一枚が1万円になる。


 金貨は100万円とかだから、ほぼ貴族御用達のようなモノだね。


 ――――つまり! 現在僕の懐には、なんと三千万円くらい持ち歩いている事になるのだ!


「妹よ」


「どうしたの? お兄ちゃん」


「お金を何処に隠そう……?」


「…………」


 袋に金貨30枚入れっぱなしで持ち運びをしているので、不安で不安で仕方がない。


 折角の異世界で、ネットゲームに似てるならば、何と言うか……アイテムボックス? 的なモノをくれても良いような気がするんだが……。


「えっと、冒険者入門書によると、Cランク冒険者ともなれば、【アイテムボックス】というのを買えるらしいよ? 次の町でそれを買ったらいいんじゃないかな?」


「そうだな。そうするか。サラマくん!」


『はっ!』


「この袋を死守するように」


『かしこまりました』


 その時。


 僕達が乗っている馬車が急停止する。


 窓から顔を出して状況を確認すると、前方に山賊と思われる人達が前を塞いでいた。


「おいおい! 荷物を全部よこしな! そうすれば命だけは救ってやる!」


「ひいぃ!」


 御者ぎょしゃがすごく怖がる。


 この世界の賊って、簡単に命を奪うからこういう輩には注意しなくちゃいけないのだ。


 せっかくの賊の登場なので、新しいスキルを試す事にしよう。


「御者さん。僕が相手するので、大丈夫ですよ」


「ほ、本当ですか!?」


「ええ。心配しないでください」


 僕は馬車から降りて、山賊達の前に出る。


「なんだ? ガキ」


「貴方達には実験台になって貰いますよ」


「は? 実験台だ?」


「ええ。僕の新しいスキルの相手になって貰います」


「ガーハハハッ! 貴様みたい……な………………は?」


 山賊のリーダーっぽい人が笑ってる間に、目の前に新しいスキルと言うべきか、レベル30で覚えた【下級精霊召喚】から進化した【中級精霊召喚】で進化した精霊達を召喚すると、山賊達全員がポカーンとする。


「みんな! 相手は二十人だから、一人五人ずつね!」


『主! すぐに片付けます!』


「みんながどれくらい強くなったのか、見守るね~」


『はっ!』


 すると、召喚した精霊達が一斉に前に飛び出る。


 山賊達は悲鳴を上げながら逃げるが、数秒もしないうちに全員が精霊達に捕まってボコボコにされた。


 お~、進化してますます強くなって頼もしいね!


 これなら四人というか、火の精霊サラマくんだけでもあの化け物・・・を倒せるかも知れないね。


『主、全員処理しました』


「お疲れ~、みんなどんな感じ? 強くなったのは実感出来る?」


『はっ! 下級の時よりも、ずっと大きな力が使えそうです! あの輩くらいでは力を発揮するのは難しい感じでした』


「そっか~」


『それと僭越ながら一つ意見させてください』


「いいよ?」


 精霊達は火の中級精霊サラマくんをリーダーにしている雰囲気で、サラマくんがメインで話してくれる。


『主の【強化】に関してですが、どうやら全ての能力が15倍程上がっております」


「へ?」


 15倍?


『はっ、以前戦った最上級モンスターのマーナガルムは、本来なら中級精霊でも手も足も出ない程強いのです』


「マーナガルム……」


『あの時、【強化】によりマーナガルムと対峙しておりましたが、我々が進化し、現状をより理解出来るようになってその事実に気付きました』


「そ、そっか…………もしかして、エキストラスキルのおかげかな? 詳細がイマイチ分からないんだよな…………でも召喚スキル効果絶大上昇と書いてあるし、その効果かな」


 僕の【強化】は全員に掛けられて、持続時間が無限な事は実証済みだったけど、サラマのおかげでその倍率が15倍に達している事を知れて良かった。


 通常の【強化】は1.5倍…………つまり、その十倍になる訳だな。



 精霊達の強さを知――――――る事は出来なかったけど、とにかく強くなって賢くなったのは分かった。


 僕の新たな力【中級精霊召喚】が誇らしかった。




――――――――――――――――


 【中級精霊召喚】


 中級精霊の精霊を召喚する。(全四種)


 ・火の中級精霊『サラマ』


 ・水の中級精霊『ウンディ』


 ・土の中級精霊『グノ』


 ・風の中級精霊『シルフィ』


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