第12話 いまさら登録してくれと言われても、もう遅い!

 最初ベアが正面から受け止める。


 強化したベアのタフさは、僕の召喚獣の中ではダントツだ。


 受け止める間に、遠距離攻撃が可能な精霊四体とクラブとカエルの攻撃が始まる。


 化け物とヘアが暫く格闘して、ベアが吹き飛ばされたタイミング、ベアはもう一度召喚し直す。


 その間に、ウルフ、ゴーレム、イーグル、フクロウが接近攻撃を仕掛ける。


 フクロウは闇属性の召喚獣なので、化け物に視界を暗ませる魔法が掛ける。


 化け物が周りに暴れるが、僕の召喚獣達が一切当たらない。


 フクロウくんがナイスだ!


 復帰したベアが化け物に突撃する。


「ライノさん! 召喚獣は気にせず攻撃してください! また召喚出来ますから!」


「わ、分かった!」


 続いて弓隊と魔法使い達の攻撃が化け物に放たれる。


 足が竦んでいた冒険者達も、僕の召喚獣が足止めに成功しているのを見て立ち上がり、色んなスキルを使い遠距離攻撃を放ってくれる。


「接近攻撃はするな! 一撃でやられるぞ!」


 ライノさんの的確な指示が飛ぶ。


 あの化け物の攻撃は一撃が重い。


 召喚獣達を強化しないと、一撃でやられてしまうくらいに。


 唯一の救いは、化け物が範囲攻撃をしない事だ――――――と思った瞬間。


「ぜ、全員後退!」


 ライノさんの叫ぶ声と共に、化け物の口が光り出した。


 何故このタイミングで!?


「みんな! 何としてもそれを止めて!」


『了解!』


 直ぐに化け物の口に僕の召喚獣達全員が飛び込んで口を塞いだ。


 爆音を大きな爆発が、町の方向に爆炎が吹き飛ぶ。


 僕はやられた召喚獣から召喚し直す。



「何としてもエリーだけは守る! 絶対!」



 無我夢中で何かを叫んだ。


 ――――それはおまじないのような何かだった。


 爆炎ブレス攻撃を終えた化け物が後ろに倒れる。


「今だ!」


 召喚し直した全ての召喚獣に【強化】をかけて一斉に行かせる。


「こちらも総攻撃だ!」


 ライノさんもちゃんと見てくれて、攻撃を合わせてくれた。


 兵士達、冒険者達、僕の召喚獣達。


 全力の攻撃が化け物に降り注ぐ。




 そして、戦いは――――――――。




 - 経験値2,000,000を獲得しました。 -


 - レベルが36に上昇しました。 -


 - スキル【下級精霊召喚】が【中級精霊召喚】に進化しました。 -


 - スキル【召喚魔石軽減小】を獲得しました。 -




 ◇




 数日後。


 クインズ町は壊れた壁も修復作業が始まっている。


 僕は精神的に疲れ切って、数日間眠りについた。


 エリーの活躍により、地下で倒れているエイミーさんを救出。


 その場にいた焼死体二人分とエイミーさんの証言により、男爵と執事という事が証明された。


 僕が眠っている間に、一連の事件は一瞬で解決して、クインズ町はストーク子爵家の町になる事が決まったそうだ。


 そして、僕は町と子爵令嬢を守った功績で、ストーク子爵から報酬を貰う事も確定した。




 元ダマス男爵の屋敷。


 報酬を貰いに来てくれと言われ、僕は妹と一緒に屋敷にやって来た。


 二階で待っている子爵に向かうまでの間、一階の入口に入ると、ホロくん時代によく見かけた、冒険者ギルドのヅラおっさんが待ち受けていた。


「ほ、ホロくん!」


 …………何親しげに僕の名前を呼んでいるんだ。


 無視して通る。


「ま、待ってくれ!」


 僕の足にしがみつくヅラ。


 うわっ! めちゃくちゃ気持ち悪っ!


「僕みたいな無能・・に何の用ですか?」


「す、すまなかった! まさかホロくんがこんなに凄い人だとは思わなかったんだ! どうか、これから冒険者ギルドに登録してはくれないだろうか? 特等席を用意しよう! 君ならBランク――――いや、Aランク冒険者にだってなれるさ!」


 取り敢えず、足に絡んだヅラを蹴り飛ばす。


 ステータスも随分と上がったので、簡単に飛ばせる。


 それにしても冒険者ギルドマスターって、こんなに弱いの?


「残念ながら、僕は一度興味を失った人には興味がないので、それに冒険者ギルドには一生登録はしません。僕はこれから妹と自由に冒険・・をする冒険者になります。あなたみたいな人の下で働いて冒険者と呼ばれることこそが恥ずかしいですよ」


 そして、僕達は大泣きしている気持ち悪いヅラおっさんを置いて、二階に向かった。




「いらっしゃい」


「初めまして、僕がホロです」


「うむ。わしはエイミーの父である、エイム・ストーク子爵と言う。此度、娘と町を守ってくれて、領主として、父として感謝する!」


「いえ、僕も妹を守りたかっただけですから」


「町を守った英雄にお礼をせねば、子爵位が泣くというモノだ。さあ、こちらのお礼を受け取ってくれるかい?」


「…………分かりました。これからの旅の資金とさせて頂きます」


「ほぉ、これから旅に出るのか?」


「はい。僕はこれから冒険者になります」


「なるほど、ギルドはこの町に登録するのかい?」


「いえ、冒険者ギルドなんかに登録はしません」


「なに? ではギルドに登録しない……という事は、冒険者にならない?」


「いえ、僕は自由に旅をする冒険をしたいんです。それこそが冒険者・・・だと思うんです。ああやってギルドに縛り付けられていたんじゃ、冒険は出来ませんから」


「ガーハハハ、なるほど! ホロくんの強さならどこでもやっていけるだろう。もし仕事が必要になれば、我がストーク家にいつでも来るとよい。いつでも雇い入れよう」


「ありがとうございます」


 ストーク子爵様から報酬を貰い、僕達は屋敷を後にして、家に帰って来た。






「お兄ちゃん。この家ともおさらばだね…………」


「そうだな。お父さんとお母さんが残してくれた家だけど、僕達はこれから冒険に出掛けるから、もう帰ってくる事はないだろうね」


「…………寂しくなるね」


「でも家族一緒に冒険出来るなんて、僕はそっちの方が素敵だよ」


「そうだね」


 僕の後ろから柔らかい感触が伝わってくる。


「お兄ちゃん。これからもよろしくお願いします」


「任せておけ。エリーの事は、僕が守るんだから」


 その日のうちに、僕達は生まれ育ったクインズ町を後にした。



――――後書き――――

 『チートスキル転生召喚士~召喚士はハズレだから冒険者になれないらしいので、一人で最強パーティーを組んで無双します~』をここまで読んでいただきありがとうございます!


 この話にでクインズ町編は終わりになります。

 これからホロくんとエリーちゃんの本格的な冒険が始まります!


 裏話にはなりますが、召喚獣達の名前をカッコいい名前にしようとしたんですが、それだと他の召喚士達もカッコいい召喚獣を召喚するのは、一人の男として許せんと思ってしまって、名前を単純にしてみました(大嘘です、ただ名前が思いつかなかっただけです)


 この作品も思いのまま書き続けていく予定でして、完結まで何字になるかは分かりませんが、気長に楽しんで頂けたら嬉しいです!

 他の作品も連載していたり、完結している長編もありますので、気になる方はぜひ!


 それとこれからのホロくん達を応援してもいいよと思った方は、ぜひ!作品のフォローと★を3つくだされば、ホロくんたちと作者が元気が出ます!


 この作品とも長い付き合いになりそうなので、これからよろしくお願いします!

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