第11話 二画面プレイは精神的にしんどい

 あの化け物の周囲には、僕が放っているネズミ達がうようよしている。


 戦力にならないので、化け物は気にもしていない。


 そんな化け物に向かってとあるスキルを使えるか試してみる。


 【ステータスウィンドウ】から【中級獣召喚】を押して全員を呼ぶ・・


 すると、僕がいる家の中ではなく、化け物の前に召喚獣達が現れた。


「成功した! 【視界共有】さえしていれば、視界内・・・に召喚出来た!」


「凄い! それなら地下のエイミーさんも助けられそうね!」


「ああ! ――――って、化け物強いな」


 召喚した二体の中級召喚獣であるベアとカエルが一瞬でやられる。


 カエルは猛毒攻撃のエキスパートなのもあり、化け物が少し毒に冒されているように見える。


「それでは、物量戦と行きますか!」


 僕は視界の先に下級召喚獣と中級召喚獣、精霊達も召喚して当たらせる。


 すぐに視界を地下に集中させて、エイミーさんが来てない事を確認して、また視界を化け物に集中させる。


 化け物はというと、少しずつダメージを与えてはいるが、突撃が止められず突破されて、少しずつ町に近づいてくる。


「くっ! エリー! 悪いけど、ライノさんがいる屋敷まで走って、化け物が来るって伝えてくれ!」


「わ、分かった!」


 念のため、妹には化け物にやられたウン水の下級精霊を守りに付ける。


 実は視界で【召喚】は出来ても、【強化】は出来ない。


 あの化け物に【強化】なしで召喚獣達が勝てるとはとても思えなかった。


『マスター』


「ん? どうしたの? ベアくん」


『マスターが来るより、俺達を目の前に召喚して【強化】して送った方が、良いかも知れません』


 なるほど。


 中級召喚獣ともなると、思考レベルも高くなっているのか。


 僕も少し焦っていたみたいだ。


「分かった。ただ、町の中じゃ、君達を敵として見られてしまうかも知れないから、壁面に行くよ」


『了解!』


 僕は急いで壁面に向かって走る。


 そう言えば、こんなに走るのってレベルが29になって初めてだな。


 何だか身体がとても軽くで、中々の速度で走れる。


 急いで壁の上に登ると、地平線の向こうに化け物の姿が見える。


 目の前に召喚獣を召喚して【強化】させる。


 通常状態よりも数倍強くなっているように感じる。


 精霊達も【強化】して向かわせると、通常状態ですぐにやられていたのが、嘘のように耐えるようになった。


 暫く耐えていた召喚獣達だけど、完全に止める事は出来ずにいた。


 ここまでしても勝てないのか……。



 視界を地下に移すと、執事が子爵令嬢を連れて地下に入って来た。


「あら? 本当にここに彼がいるのですか? セバスチャリ」


「はい。彼らは平民なので、屋敷には上がれないんです」


「ダマス男爵は変なルールを作ってますのね」


「ええ」


 執事の案内で降りていくエイミーさん。


 一切の疑いの持たず付いていく。


 余程信用しているんだろうな……。



 地下に降りた彼女を待っていたのは、ブヒブヒ言っている男爵だった。


「っ!? セバスチャリ!? これは一体どういう!?」


「キシシシシ! デカしたぞ! これで令嬢を抱けるぞ!」


 本当にこの豚は汚いというか。


 一旦、精霊サラとシル、グーを子爵令嬢の方に召喚して守らせる。


 執事は強そうなので、注意して貰いながら、僕の視界の化け物に注目する。


 とんでもない強さで、少しずつ押されて、町の近くまで来てしまった。


「お兄ちゃん!」


「っ! エリー!」


「ライノさん達を連れて来たよ!」


 妹に続いて、ライノさん達の兵士達が沢山やってきた。


「ライノさん! 化け物が凄く強いので気を付けて! 僕の召喚獣で迎え撃ってます!」


「わ、分かった!」



 今度は執事に注目する。


 執事つえー!


 精霊達が全然勝てない!


 どうしたら………………。





 閃いた!





 精霊達がやれれそうだったので、地下にもう一度召喚し直す。


 いくら魔力や魔石が減らないとは言え、二画面プレイを続けながら、両側の戦況を考えながら戦うって、精神的にしんどい!


 だが、これで決めてやる!


 屋敷にいる全てのネズミ達!


 みんなに一斉に突撃だ!



 精霊達が懸命に執事と戦っていると、上に続いている階段から僕の大量のネズミが押し寄せてくる。


「っ!? ネ、ネズミか!」


 雪崩れ込んだネズミが執事を飲み込む。


「サラ! 今だ!」


『はっ!』


 サラの全力の火炎攻撃が執事を襲う。


 ネズミ達が絡まっている事もあり、避けられず直撃した執事は悲痛な叫びを発して、燃えていった。




「お兄ちゃん、大丈夫?」


「はあはあ……大丈夫。地下は決着がついた……あとはあいつだけ」


 今度は目の前にいる化け物が町の壁に激突する。


 ドカーン!


 爆音が響き渡り、壁が子供のブロックの如く簡単に崩れて飛び散る。


 化け物は真っ赤に燃えるような目で、町の中を睨む。


 町の中から、化け物の顔が覗けるので、その姿を見た人々の悲鳴が響き渡った。




「精霊を全員こちらに召喚!」


『主!』


「サラ達も悪いけど、ここからが本番だよ! 全力で当たるぞ!」


 丁度そのタイミングで、冒険者達もやってきたが、化け物の前に足が竦んでいる。


「召喚獣全員【強化】!」


 僕の全ての召喚獣が【強化】の光に包まれた。

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