第5話 bot化はダメ人間製造機

 - 経験値1を獲得しました。 -


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 【ステータスウィンドウ】で経験値獲得知らせをONにしていると、僕の召喚獣達が倒したモンスターの経験値が得られる知らせが届く。


 最初は鬱陶しい感じもしたけど、声がするわけでもなく、画面の端で勝手に経験値を獲得しましたって表記が流れる感覚なので、OFFにはせずに召喚獣達の頑張りを時々目で追っている。


 それにしてもあの森は初心者の森と呼ばれるくらい弱いモンスターしか出ないから、中々冒険者と鉢合わせになる事がないようで、召喚獣達は縦横無尽に狩りを続けてくれる。


 何だかネットゲームでbotを利用している気分だ。利用した事ないけど。


「お兄ちゃん~! そろそろ起きてよ~!」


 厨房からエリーの声が聞こえる。


「起きてるよ~」


「え! 起きてるんなら手伝いなさいよ!」


「ごめん。召喚獣達の頑張りを確認していたの」


「あ~、今でも森で頑張ってくれているんだっけ?」


「そうそう」


 ダルそうな気持ちを振り払い、ぬくぬくしたベッドから降りて、エリーが作ってくれる美味しい朝食の準備を手伝う。


 テーブルを拭いて、皿と食器を並べる。


 すぐに美味しそうな玉子焼きと小さなパンに、野菜がふんだんに出てくる。


 向こうではあんなに野菜が嫌いだったのに、ホロくんの身体は野菜が大好きなようで、肉より野菜が美味しいと感じる。


 しかもこの世界の野菜はすごく安い。


 …………低燃費の身体で良かったのかも知れない。


 エリーと朝食を食べ終え、皿を洗って、リビングでゆっくりお茶の飲む。


 こういう日々を毎日繰り返すのも悪くない。


「お兄ちゃん」


「ん?」


「…………いつになったら冒険者になるの?」


「え? もうちょっとかな~」


「それもう一週間くらい言ってるよね? 毎日家にいるだけじゃない」


「だって、僕はやることがないんだもの。召喚獣達が頑張ってくれているし、貯まった素材も運んできてくれるからそれを売って生計も立てられるし」


「…………ホロお兄ちゃんが駄目人間になっていく」


「失礼な! 僕は充電期間なんです!」


 いくら覚悟を決めても、日本での性格が直るわけもなく、僕は毎日ダラダラ生活を続けている。


 もはや、冒険者になれなくてよくね? 召喚獣達が素材持ってきてくれるし、寝ててもレベル上がるし――――と思っている。


「散歩くらいは行こうよ!」


 エリーの痛くないハリセンが僕の頭を叩いた。




「ふぅ、空気が美味いぜ」


「そりゃ、一週間ぶりの外ですからね」


「世界はなんて暖かいのだろう!」


「そりゃ、春だからね」


「今日も何もしなくてもレベルが上がる~」


「そりゃ、召喚獣達が頑張ってくれるからね」


 エリーと散歩を楽しんでいる。


 素っ気ない返事が聞こえている気がするけど、気にしない。


 こう見えても、僕はネットゲーム界隈で【鋼のメンタル】を持つと言われていた。


 何言われても気にしない。



 このまま、ゆっくり人生を楽しもうとした矢先。


『マスター。報告があります』


 ゴーレムくんから連絡が来た。


「ゴーレムくん? どうしたの?」


「?」


 エリーが僕も見つめるけど、ゴーレムくんとの心話だとすぐに感づく。


『強いモンスターに追われている人がいます』


「ん~どうなりそうなの?」


『多分全滅しそうです』


「全滅か~まあ、いっか。関係ない人だし、放――」


「いいわけあるか! 助けなさい!」


 僕の頭に凄まじい速度のハリセンで叩きこむエリー。


「ゴーレムくん! いますぐ助けなさい!」


『かしこまりました!』


「まったく! お兄ちゃんは何を考えているの!」


「えー、こういうのってさ、絶対トラブルに巻き込まれるんだよ」


「それでも困った人は助けてあげなくちゃ!」


 まあ、エリーがそう思うんなら助けてあげるけども……。


 僕達は召喚獣達がいる方向に急いで駆け付けた。




 ◇




 到着した場所には、馬車が一台。


 馬車を引いていた馬達は既に倒れている。


 向こうに見えるモンスターによるモノだろうね。


 そのモンスター達は僕の召喚獣達と戦っているが、うちの召喚獣達もやばそうな雰囲気だ。


「っ!? あ、貴方は?」


 馬車を守っている三人の男が剣を構えて、僕に聞いてくる。


「その召喚獣の主です」


「そ、そうか! お助け感謝する! しかし、あれは下級獣召喚獣に見えますが、あれでは中級モンスターグロウウルフには勝てません!」


 お~あのモンスターはグロウウルフと言うのか。


 大きな狼で、一頭1メートルはありそう。


 爪や歯も凄い――――というかうちのゴーレムくんが既にボロボロだわ。


「う~ん、どうしよう。取り敢えずゴーレムくんもう一回召喚」


 既存きそんのゴーレムくんが崩れて、もう一体のゴーレムくんが出現してまたウルフ達と交戦し始める。


「なっ!? い、一体……」


 ただこのままだとジリ貧が続く。


 こちらのダメージは相手にあまり届いていない。


 このままでは負けなくても、一生勝てる見込みがない。


 その時。


「あ! お兄ちゃん!」


 何かを閃いたように妹が声をあげる。


「召喚士にスキルってない? 確か本で読んだ感じだと、召喚獣を一時的・・・に強化するやつ!」


「あっ! あったな、そんなスキル」


 【エクストラスキル】に隠れていて、全然気にしてなかったけど、僕には召喚以外に一つだけスキルを持っていた。


「よし、行くぞー! 【召喚獣強化】!」


 僕は召喚獣達に向かって、【召喚獣強化】を使用した。

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