幕間 エイミーの悲劇(エイミー視点)

しくじった。

こんなパーティーの依頼を受けるんじゃなかった。

 私は斥候職。モンスターやトラップを発見して、危険を回避しながら動くのが役割だ。それを生かしてダンジョンの案内を仕事にしている。今回も依頼パーティーを地下2階まで連れて行くことになった。それほど難しい依頼ではないはずだった。

私は依頼を受ける時に常に約束させることがある。それは『私の指示に従うこと』。でも今回、地下1階の途中で私は「もう引き返そう。」と指示を出したのに拒否をしてきた。

「俺たちはまだまだ余裕だ。オークやゴブリンに負けはしねえよ。」

「契約する時に私の指示に従うことを約束したはずだけど。」

「こんなところで引き返したら赤字だ。地下2階まで行ける。前回は行けたんだ。」

 確かにこのパーティーの実力なら10中、8、9行けると思う。でもダメ。冒険者はそんなリスクは避けないといけない。一度でも死ねば終わりなんだから。確実なことしかしてはいけない。

 その後、しばらく押し問答したが、結局「嫌なら1人で帰れ」のゴリ押しで進むことになった。私は直接的な戦闘力は低い。単独行動よりリスクが低いと判断したのが失敗だった。


 結局、モンスターの挟み撃ちを受けて、パーティーは壊滅。私は荷物を全て失い、負傷しながらも逃げ延びた。しかし、出血がひどく1階の途中で動けなくなってしまった。

 ついにモンスターに囲まれて、このまま死ぬのかな。と思ってたら、知らない人がいきなりモンスターを退治してくれた。さらに回復魔法まで使ってくれた。背負ってもらうと安心感から意識を手放してしまった。


 目が覚めたらベッドの上だった。記憶を遡り、死にかけたのを思い出した。立ち上がろうとすると少しフラフラした。何か食べないと。

 部屋を出て歩き出すと良い匂いがした。匂いのする方に行くとキッチンだった。中に入ると料理中だった。それも毒キノコの。

 料理の知識が何も無さそうだったので、私が代わりに料理をすることにした。ダンジョン食材での自炊は経験があるし、調味料も充実していた。特に問題もなく料理が終わる予定だった。


 魔族なんか、普通の冒険者が会うことはない。魔大陸にまでたどり着いた勇者を苦しめる強敵だ。それが二人もいる。私なんか瞬殺だろう。

 料理を作ったらなんとか生き残れることになった。決して料理が特別上手い訳ではないけど。よっぽどまともな料理を食べてなかったのかも。とにかく生き続けるには胃袋を掴み続けるしかない。

 頑張ろう!命懸けの料理当番。さいわいボスのアラド様は優しい。長く生き続けられれば、解放のチャンスもあるかもしれない。これからどんな生活になるんだろう。

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