Interlude
「刺したことは謝るわ。でも本当に怖かったの」
「怖い? あたしが? なんでさ」
「あの前にしたじゃない。ほら、イった後ってちょっとさ、ほわんとした感じあるじゃん。そんな時でもリルカの目って、なんか」
「そんなことで別れるって言ったんだ。目つきが悪いのは生まれつきだよ。だからって刺すことないじゃん」
「本当にごめんなさい。でもそれぐらいしないと別れられない。リルカの嘘ってナチュラルすぎてさ。いいように丸め込まれる」
「そんなに怖いひとの部屋によく来る気になったね」
「警察沙汰にするかどうか悩んでるって電話してきたでしょ……私、一応お堅い会社だからクビになっちゃう」
「あっは。あたし警察嫌いだもん。しないよ」
「……え?」
「そんなこと気にしてたんだ。あたしは亜美、まだ愛してるから」
「また嘘なのね。私に会う口実。でももう、続けられないわ」
「そっか。まあ座ってよ」
「お願い、わかって」
「うん、わかってるよ、亜美」
「ちょっと、何してるの」
「結束バンドって便利だよね。安いし、応用が利く——こうして後ろ手に親指同士くくれば簡単な拘束具にもなるし。もう一回キスしよ」
「ちょっと待って、離して! 痛い。注射? いったい何を——」
「んー、ただの筋弛緩剤。この量だとちょっと呼吸不全を起こすかもしれないね」
「私を殺す気!? 愛してるって言ったじゃない!」
「愛してるよ。愛してるから、亜美を食べるんだ。亜美を咀嚼して、取り込んで——いつでもあたしの中で話せるよ。しあわせだよね」
「……狂ってる。人殺し!!」
「ああ、ギターやるからって防音工事してあるんだ。言ってなかったっけ——お漏らしすんなよ、拭くのがめんどくさいだろ」
「勘がいい癖に抜けてるとことかさ、亜美のそういうとこが大好きさ」
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