2話目

 冒険者ギルドとは、各方面から依頼を受け、冒険者へと斡旋する団体組織です。

 受注した依頼は、依頼情報を元に危険度を精査・ランク付けを行った。そして、依頼ランクとギルドランクがリンクする様にした。


 ※ギルドランクとは、冒険者ギルドに登録をしている人で、依頼成功率を参照に決定されたランクです。


 下記参照(ギルドランク順)

 ブロンズ3 ↓低い

 ブロンズ2 ↓

 ブロンズ1 ↓

 シルバー3 ↓

 シルバー2 ↓

 シルバー1 ↓

 ゴールド  ↓

 プラチナ  ↓高い


 依頼も、上記の順にランク付けされる。そして冒険者側は、自分のギルドランク以下の依頼しか、受けられない様に定めた。



 少年が、冒険者ギルドの奥に向かうと、すでに4つの列が出来ていた。

 列の先端を見ると、どれも冒険者窓口へと続いていた。

「何時もながら、やっぱり混んでたか・・・。」


 どの列に並ぼうかと、冒険者窓口に目を向けると、クエストを紹介してくれた、ギルド職員のシャルさんを見かけた。


「おっ!紹介してくれたお礼も言いたいし、シャルさんに完了手続きもしてもらおうかな。」

 少年は、シャルさんへと続く列に並んだ。


 ようやく順番が回って来ると、元気に挨拶をしながら窓口に行く。

「こんにちわ、シャルさん。」

 シャルさんも、僕に気が付きニコリとした。


「あら?紹介したクエストで、何か分からない事でもあったのかな?」

 シャルは、お茶目にウインクをしながら微笑みかけると、少年は得意気に口を開いた。


「違いますよ、終わったから素材の納品と終了報告に来たんです。それと、紹介してくれたクエストのお礼も兼ねてきました。」


 ・・・少しの間を置くと、シャルの口から可愛らしい声が出た。


「ふぇっっ!?」


 自分の驚いた声が恥ずかしくて、咄嗟に口元を手で隠した。しかし、瞬時に取り繕うと咳払いを1つ、何事も無かった様に少年に話しかけた。

「あの採取クエストの平均終了日数は、5日なんですよ!?それを、半日で終わらせて来たんですか!?」

「いっぱい頑張ったからね。シャルさん♪」

 驚くシャルに、得意げに答える少年。


「そ・・・そうですか。やはりその若さで、素材採取の神童と呼ばれるのは伊達ではありませんね。」

 シャルは驚きのあまり、絞り出す様に呟いた。


 この女性は、冒険者ギルド【リーフリンデ支部】のギルド職員で、名前はシャルロットです。

 勤続5年目になる彼女は、明るい性格と丁寧な仕事ぶりから、他のギルド職員からは勿論、冒険者達からの評判も高く、ギルドの頼れるお姉さんとして皆から慕われており、周囲からは"シャル"と、愛称で呼ばれる事の方が多かった。


 シャルは、直ぐに気を取り直すと、素材の受け渡し部屋を確認し、少年を奥の部屋へと招き入れた。


「それでは、ギルドカードの提出をお願いします。」

 シャルさんが、部屋の中央まで移動すると、少年にギルドカードの提示を求めた。


 少年は、懐からギルドカードを取り出し「はい!どうぞ!」と、シャルさんに手渡した。


「それでは、手続きが全て終わるまで、預かりますね。」

 シャルは、少年から受け取ったギルドカードを水晶球に差し込んだ。そして、部屋の片隅にある、長方形の大きなテーブルを指差すと、採取素材を並べるように説明をした。


 少年は、シャルさんに言われた通り、アイテム袋から次々と素材を取り出すと、数えやすいようにテーブルに並べていく。


 ネルネの葉の大葉と小葉を、50枚一束に纏めそれを2つ並べた。


 くるの実は、25個ずつ入れた袋を2つ取り出し、黄土と赤土が入った土嚢袋は、カウンター脇に中身が見えるようにして、次々と並べた。


 最後に、握り拳位の鉄鉱石を3個カウンターに乗せると、満面の笑みを浮かべながらシャルさんに顔を向けた。


「これで、素材全部になります。」


「わかったわ、でもこちらの準備がもうちょっとかかりそう・・・あら?丁度今、ギルドカードの確認が終わったみたいね。」

 水晶に差し込んだギルドカードに、情報開示の入力をする。

「こちらの準備も出来たのでカードの中身を確認しますね。」


 すると、ギルドカードの情報が、水晶のすぐ真上に表示展開されていった。


 名前 リクト

 性別 男

 年齢 13歳

 種族 鬼人族

 職業 支援者

 冒険者ギルド所属

 ギルドランク ブロンズ1


 受注クエスト(進行中)

 素材収集1件

 ネルネの葉・・・大葉×100枚。小葉×100枚。

 くるの実・・・・青い実×50個。

 黄土と赤土・・・土嚢袋(黄土×10袋。赤土×15袋。)

 鉄鉱石・・・・・数量は問わず。

 期限は5日以内。


「今現在、受けているクエストの確認が出来ましたので、次に素材の確認をしますね。」


 シャルは、素材チェック用紙をバインダーに挟めると、カウンターに置かれた素材のチェックを開始した。


 ネルネの葉・・・各数量はOKね、大きさと形も揃っているし品質も高いから◎ね。

 くるの実も数量はOKっと、熟す前の青い実で品質も申し分なし・・・◎ね。

 黄土と赤土の数量もOK・・・これも◎ね。

 最後の鉄鉱石は、数量不問となっているので、納品の時点で◎となりますね。


 いつもながら、素材集めに定評があるリクト君ですね。


 高い品質と素早い納品、冒険者ギルドとしても有難いです。


「お待たせしました。素材のチェックが終わりましたので、報酬はギルドカードに入金しておきました。」


 シャルは、ギルドカードをリクトに返すと、それとは別に、今回のクエスト報酬の内訳と金額が書かれた明細書も一緒に渡した。


「最後に、明細書に書かれた報酬額が間違いなく入金されているかを確認してから、こちらのクエスト終了証に血判をお願いしますね。」


 リクトは、終了証を手に取ると金額を照らし合わせた。


 ネルネの葉・・・銅貨300枚

 くるの実・・・・銅貨100枚

 黄土と赤土・・・銀貨1枚

 鉄鉱石・・・・・銀貨30枚


 よし!今回の査定も高評価だ!


 素材の評価が高いと、通常価格よりも少し割増しで買い取ってくれるから、僕としても大助かりなんだよなぁ。それに、レア素材の鉄鉱石も高く買い取ってくれたみたいだし、今回のクエストは大成功だね。


 これで暫く、お金の心配しないで、やりたいことに取り組めるぞ!


 この町では、1日1銀貨あれば、三食昼寝つきの宿屋暮らしが出来るため、銀貨30枚以上稼いだリクトは、ニコニコしながら終了証に血判を押しシャルさんに手渡した。


「はい、これでクエスト終了になります。リクト君が持ってくる素材は、どれも品質が高い物ばかりなので、依頼主からの評判も高いんですよ。」


「そうですか、皆が喜んでるなら、僕も頑張ったかいがありますよ。それに、素材集めは僕も好きでやってるので任せてください!」


 ギルドカードを懐に仕舞うと、また明日来るのでよろしくです。と笑顔で挨拶を済ませ、冒険者ギルドを後にした。


 リクトが冒険者ギルドを出ると、ギルドの奥にある部屋から1人の女性が出てきた。


「シャル・・・彼が噂のリクト君で、素材採取の神童君で間違いないのよね?」


 シャルは、自分を呼ぶ慣れ親しんだ声に反応すると、即座に向き直り答えた。


「その通りですマデレーンギルド長。リクト君が納めてくれた素材は、依頼人も大満足の品物ばかりですね。今では、彼に頼みたいと指名が増え、既にリピーターになっている方々もいますね。」


「成る程ね~。素材収集って意外と難しいのに、リピーターが付くなんて凄いわね。冒険者に頼むと、虫食いだらけの物や素材の半分が枯れていたり、腐っていたりと、お粗末な素材を持ってくるのが当たり前だったのにね。」


 シャルは、ギルド長の言葉に強く頷いていた。


 マデレーンギルド長は、1年前にリーフリンデ支部に配属された、23才の年若い悪魔族の女性です。


 彼女は、その若さでギルド長を任せられる程の才女でありましたが、元々は冒険者で、等級もプラチナまで上り詰めた実力者でもありました。


 そんな彼女の特徴は、いつも笑顔を絶やさず、その落ち着いた雰囲気と優しい笑顔です。服装も白ベースの清純な洋服を好み、肩甲骨まである黒髪は、首の少し上で結んだ低めのポニーテールにして、落ち着いた大人の印象を与えていた。


 彼女の周りにいる人達からは、悪魔の皮を被った天使。と良い意味で揶揄され、親しまれていた。


「それにしても、ギルド長は相も変わらず、悪魔っぽく無いですよね。」


「悪魔っぽく無いって言われても、私は間違いなく悪魔ですよ。頭の悪魔のツノがその証拠です。」


 頭の両サイドから生えているツノを指差した。


「ツノを見せられても、ギルド長から漂う清楚なオーラが、悪魔族を否定するんですよ。」


 マデレーンギルド長は呆れた顔になった。


「何ですかそれは・・・それよりも彼の事をもっと詳しく教えて下さいね。」と言うと、奥の会議室を指差した。


 彼の資料を作成したらそれを持って来るように指示をすると、マデレーンギルド長は会議室へと向かい、シャルは、リクトの個人情報が入ったファイルを取りに資料室へと入っていった。

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