『時空間スリップ』

やましん(テンパー)

『時空間スリップ』

 『これは、心理的不安による、フィクションです。』





 ある、昼間、ちょっと、うとうととし、はっと気がついたら、テレビの中で、戦争になった、と、激しい映像付きで報道されている。


 『そんな、ばかな。』


 ありえないのだ。


 2021年の12月、国連において、人類長年の夢であった『地球における戦争終結宣言』が満場一致で可決され、あらゆる武力を用いた戦争も、電子データによる戦争も、全てを廃棄することとなった。


 だから、いま、戦争が始まるわけがない。


 ぼくは、慌てて、パソコンを開いた。


 すると、とんでもないことが解ったのである。


 そうした決議が行われた形跡がない。


 審議された記事もない。


 それどころか、世界の各地で、紛争が続いているのだ。


 ぼくは、混乱した。


 しかも、事態はそれだけに、収まらなかった。


 『未確認ですが、欧州機構内で、ミスによるミサイルの誤射があったようです。標的になったロロシア軍が、即時反撃に出たという情報があります。また、黒海上空で、核爆発があったようです。詳しいことは、まだ、わかっていません。』


 なんだろう。


 ありえない。


 ニュースは続いた。


 『政府は、先に成立した、『緊急徴兵』を行うと、発表しました。若い命を守るため、徴兵をされるのは、60歳以上の男子です。明後日までに、全国的に通知されます。徴兵を受けるものは、直ちに地域の防御会議に出頭してください。病気等で動けない場合は、病院経由で連絡することと、されます。虚偽の報告を行ったり、理由なく、出頭しなかった場合は、逮捕され、責任を追及されます。』




『新しいニュースです。


 欧州機構軍と、ロロシア軍による、直接的交戦が始まったとのことです。


 黒海上空での、核爆発と見られる爆発は、まだ、事実関係がわかりません。


 しかし、政府高官は、核戦争の危機が迫っている、とのべています。


 現在、緊急閣議が行われている模様で、午後5時から、総理の会見があるとのことです。』


 総理は、国民に、覚悟をするように、呼び掛けた。


 なにが起こるかは、まだ、はっきりしないが。と。



 翌日、ぼくには、徴兵通知が配達された。


 しかし、そんな法律、聞いたこともないのだ。


 絶対にありえないのだ。


 きっと、どこかで、別世界に、タイムスリップしたか、空間転移したのだ。


 ぼくは、ためしに、主治医に電話した。


 どこか、不調なのかもしれないし、徴兵免除になるかもしれない。


 『あなたは、たしかに、うつ症状があり、妄想しがちですが、徴兵を阻止できるだけの基準に至らないです。困りましたね。診断書偽造は、病院が罰せられます。ただし、地下に潜るルートは、ありますよ。もし、よかったら…………』



 そのさきは、解らなかった。


 ぼくは、心筋梗塞を起こしたのだ。


 結局、なにも分からないままになった。




 ●●●●●●●●●●●●●



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『時空間スリップ』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る