第5話 高校生

 私とトっちゃんは同じ高校を受験して二人とも合格した。また、一緒に登校出来るねと二人で笑い合った。


 そして、入学前にママからパパと離婚した理由を教えてもらった。私はまた泣きながらトっちゃんの家に行って、トっちゃんに謝った。


「ゴメン、ゴメンね、トっちゃん。ウチのパパがゴメンねぇ……」


 泣きじゃくる私の手を優しく握ってトっちゃんは言ってくれた。


「ヤーちゃんが悪いんじゃないんだから、謝らなくても良いんだよ」


 トっちゃんはそれでも泣きやまない私をギュッとハグしてくれて、優しく良いんだよって泣きやむまで言ってくれた。そして、やっと泣きやんだ私に、


「ヤーちゃん、何か今さらっていう感じだけど、こういうのはちゃんとした方がいと思ったから、言うね。僕と結婚を前提にして、付合って下さい!」


 告白だあー。私は一気に舞い上がって、アタフタして、顔も真っ赤になって、中学校の時に男子にハッキリ言ってくれたのが告白なんだろうなって、漠然と思ってたから余計に嬉しくて、また涙が溢れたけれど、何とか笑顔で返事をした。


「うん、トっちゃん。よろしくお願いします」


 私の返事を聞いてトっちゃんは心からの笑顔でまた、優しくハグしてくれた。そして、唇に優しく落とされたキス。


 私はもう心臓が止まりそうなぐらいにバクバクしてたけれども、トっちゃんも同じだった。ハグしてくれた時にトっちゃんの胸から私と同じくらいバクバクしてるのが聞こえたから。


 その日の夜は大変だった。家に帰った私を見てママが、「あら、やっとちゃんと告白して貰えたのね」なんて見抜くぐらいに私はニヘラニヘラしてたらしい。自覚は無かったけど。

 夜も優しいキスとハグを思い出して、中々寝られなかった。


 翌日からはもう、誰にも遠慮せずに手を繋いで学校に登校するようになった。二人とも部活動はせずに帰宅部だったから、帰りも勿論一緒だった。


 私はずっと続くと思ってたんだ。この幸せな時間が……



 異変があったのは高校三年になった一学期も終わろうという時期。

 この頃にはもうお互いを呼び捨てで呼ぶ仲になっていた私達だけど、毎朝迎えに来てくれてた冬馬が今朝はまだ来ない。

 おかしいと思った私は隣に向かった。そしたら、ちょうどおばさんが出て来て、


「弥生ちゃん、ちょうど良かったわ。ゴメンね、冬馬ったら今日は三十八度も熱があって、学校に行けそうにないの」


 そう教えてくれたから、私は冬馬の部屋に行ってみた。そしたら、少し息苦しそうにベッドで寝ている冬馬がいた。


 私は冬馬の額を手でさわってみた。熱いって思った私は寝てる冬馬の体温をはかるために体温計を脇に挟む。ピピッという電子音が聞こえたから、体温計を脇から取り出したら、三十九度五分の表示が見えた。

 私は急いでおばさんを呼んで、救急車を呼びなきゃって言ったんだ。

 おばさんも体温計を見て、直ぐに電話をしていた。


 救急車で運ばれる冬馬に、私も学校を休んで付いていく。


 病院では直ぐに検査が始まった。でも、私は検査よりも早く治療してやってよって心の中で思ってた。だって、冬馬の呼吸がしんどそうだったから。


 それからは余り覚えてないけれど、検査が終わって集中治療室に入った冬馬を外から見ていたら、おばさんに言われて素直に帰ってきたらしい。

 らしいって言うのは、自分の部屋に入るまでの記憶が曖昧だったからなんだけど。

 私は心配で、その日は部屋でベッドの上でうずくまってずっと普段は祈らない神様に祈っていたんだ。


 

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