第4話 小学校〜中学校

 毎日、朝はトっちゃんが家まで迎えに来てくれた。


「ヤーちゃん、おはよう。今日も一緒に行こう」


 トっちゃんはいつも朝から笑顔だ。私は朝が弱いから、少し不機嫌な顔をしているけれど、トっちゃんは気にせずに私と手を繋いで歩いてくれた。


 小学三年生の時に、トっちゃんのお父さんが家から出ていった。ママとパパが話してるのが聞こえたけれども、トっちゃんのお父さんがウワキをして、トっちゃんのお母さんじゃない人との間に子供が産まれたって言っていた。


 私はトっちゃんが心配で、部屋の窓からトっちゃんを呼んだ。


「どうしたの? ヤーちゃん?」


 トっちゃんはいつも通りの様子で私に聞いてきた。


「あの、あのね、パパとママが話してるのを聞いたの。トっちゃんのお父さんが……」


 途中で言葉に詰まる私にトっちゃんは微笑みながら言った。


「有難う、ヤーちゃん。心配してくれたんだね。でも、大丈夫だよ」


 そう言うトっちゃんの微笑みはいつもより少し寂しそうだったから、私は家を出てトっちゃんの家に行った。


「弥生ちゃん、どうしたの? こんな時間に?」


 トっちゃんのお母さんが私に聞いてきたから、私は、


「おばさん、今日はトっちゃんの部屋でお泊りするの」


 そう宣言して、トっちゃんの部屋に向かった。


 その後はママとトっちゃんのお母さんで話し合いをして、私が泊まるのを許してもらえた。


 私はトっちゃんと同じベッドでトっちゃんの背中に抱きついていた。しばらくすると、トっちゃんが静かに泣いているのに気がついたけど、私は腕に少しだけ力をこめて、ギュッて抱きしめた。


 そのうちにトっちゃんの寝息が聞こえてきて、私もいつの間にか寝てしまっていた。


 翌朝はもういつものトっちゃんだった。私が起きるより早く起きたトっちゃんは、自分のベッドで寝ている私を優しく起こしてくれた。


「ヤーちゃん、朝だよ。起きて。一緒に朝ごはんを食べよう」


 私が眠い目をこすりながら起きたらトっちゃんは、


「有難う、ヤーちゃん」


 そう言って優しく私の手を取って、ベッドから降りるのを手伝ってくれた。


 

 小学五年生になった時に、ウチのママとパパが大喧嘩した。

 何でもパパがウワキをしようとして、ママに見つかったらしい。そのまま、一晩中喧嘩をしていたママとパパは、パパが家を出ていって終わった。


 パパが家を出ていってから、ママはトっちゃんの家に行って、トっちゃんのお母さんに頭を下げていた。


 パパが出て行った日の夜にトっちゃんが私の家に泊まりにきた。そして、トっちゃんは私が寝るまでベッドの横に座って私の手を優しく握って、頭を撫でてくれた。


 それから、床にママが敷いていたお布団に入って寝たそうだ。ママがトっちゃんが帰ってから教えてくれた。



 トっちゃんは六年生になって急に背が伸びた。百四十で私と同じぐらいだったのに、卒業までに百六十七になっていた。私は隣を歩いてトっちゃんの顔を見る時は見上げるようになっていた。




 中学校は楽しかった。相変わらず毎朝トっちゃんが迎えに来てくれて、私達は一緒に登校していた。クラスでは付合ってるのって聞かれて、私は曖昧に濁してたんだけど、トっちゃんは男子にハッキリ付合ってるって言ったようで、私に告白してくる男子は居なくなった。正直、ホッとしたし嬉しかった。


 グループで遊びに行く事もあったけど、大体二人で休日は過ごした。


 そして、トっちゃんは更に背が伸びた。百七十五になったトっちゃんは、凄く格好良くてもしも私が隣に居なかったら、モテモテだったと思う。


 そういう私も少しだけ背が伸びて百五十五になった。でも、二十センチも低いから、見上げるのは変わらなかったけどね。

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