第3話 三歳〜小学入学の頃
「トっちゃん、遊びに来たよー」
「ヤーちゃん、遊ぼー」
私は今日も隣の家に遊びに来た。隣の家には同い年のトっちゃんがいて、いつも一緒に遊んでくれる。
「ヤーちゃん、今日はお絵かきして遊ぶ?」
「ううん、今日はコレで遊ぶのー」
私は持ってきた紙袋からヒーローと怪獣のソフビ人形を出した。そして、私はヒーローを手にとる。
「うわー、かっこいいね」
トっちゃんはそう言って私が持つヒーローを褒めてくれる。そして、怪獣のソフビを手にとって、直ぐに私が欲しかった台詞を言ってくれる。
「ガオー、僕は今から町をメチャクチャにこわすぞー」
そこで私が台詞を言う。
「まてー、そんな事はこの私がさせない! 町は私が守ってみせる!」
テレビで見たヒーローの台詞をそのままに、私が言うのを、トっちゃんのお母さんは微笑みながら見ていた。
今日から私達二人は同じ幼稚園に行く。
「イヤッ! 行きたくない!」
私は玄関でママにそう言っていた。そこにトっちゃんがやって来た。
「エヘヘー、ヤーちゃん。おはよー。今日から一緒に幼稚園だね。バスに乗るの楽しみだねー」
そのトっちゃんの笑顔を見てコロっと態度が変わる私。
「トっちゃん、おはよー。そうだねー、楽しみだねー。早くいこー」
後ろでママが、トっちゃんのお母さんとお話している。
「本当に冬馬くんが一緒に居てくれて助かるわ」
「ウチもそうよー。昨日の夜は行きたくないって泣いたから、弥生ちゃんと一緒だよって言ったら泣きやんだもの」
バスに乗って幼稚園に行くのにも慣れてきた。私は最近あまり面白くない。私のトっちゃんに馴れ馴れしく近づいてくる女の子がいるからだ。
トっちゃんはイヤな顔もせずにその子とお話をする。
「トっちゃんは、レナちゃんの事が好きなの?」
私は我慢できなくてそう聞いていた。
「えっ? ううん、好きなのはヤーちゃんだよ。レナちゃんはお友だちだよ?」
すごく真面目な顔をしてそう言ってくれたトっちゃんに、私は機嫌が直ぐに良くなる。
「エヘヘ、私もトっちゃんが好きー」
そんな私達も今日から小学生。お互いに父親は仕事で来てないけれど、ママとトっちゃんのお母さんは普段は着ない服を着て、一緒に小学校に来てくれた。私はトっちゃんと一緒にママ達が来てくれるのも嬉しくて、ずっとトっちゃんに話し掛けていた。
トっちゃんはニコニコしながらいつものように私の話を聞いてくれた。
でもその嬉しい気持ちも入学式が終わるまでだった。クラスが発表されたら私とトっちゃんは違うクラスだと分かったからだ。
私は教室で自己紹介も出来ずに泣いてしまっていた。そして、みんなが下校した後も。
そこにトっちゃんがやって来た。
「ヤーちゃん、組は違っちゃったけど今日から毎日、一緒に学校に来て、一緒におうちに帰れるねぇ」
トっちゃんはそう言って私の気持ちを上げてくれた。気がつけば泣きやんで、トっちゃんと手を繋いで家に向かって歩いて帰っていた。
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