うしゃぎ
天養2年(1145年)2月15日
こんばんは平重盛です。
今日は朝からずっと雪です。
それにしても先月の雨はひどかった。
我が家の水路は重大な被害をうけた。
何がどうなったかは、あえて言うまい。
じいちゃんと清盛パパをよく思っていない公家は、神罰が下っただの仏罰だのとさんざん騒いでいた。
清盛パパは家盛殿にも「子どもの言うことを真に受けるから」とねちねちと嫌みを言われていた。
僕としては流行病の発生を心配したのだけれど、幸いなことに冬だったからか、今のところ、流行病がでたとは聞いていない。
大雨の翌日にMissonが発動した。
-Misson アスクレピオスの杖はこの国にもあるはず。探せ!-
アスクレピオスというのは、ギリシア神話に登場する名で、彼が持っていた杖は、医術の象徴とされている。
これを見たときは本当に焦った。どう考えても流行病を前提としたMissonにしか思えなかったからだ。しかも「この国にもある」って。
国中を探せと言われている気がして途方に暮れた。
結果としては、同じように流行病を気にしていた母さまが、うちに大量にある蔵書の中から、
報酬:
なんだか母さまの功績をいただいてしまったようで申し訳ない。
ついでに大己貴命って誰なのか、母さま聞いてみた。
「因幡の白うしゃぎ、知らん?」
「サメに食べられた?」
「ちゃうちゃう。皮を剥がれただけや。」
・・・「だけ」では済まないと思うけど。
「そのとき薬くれた神様や。」
「あー。あの人かー。」
そう言われると誰だが分かった。大国主だったような気もするので聞いて見ると神様の名前っていうのは色々あるらしい。
「でも、ぷぷぷ。母さまったら。うしゃぎだなんて、舌でも噛んだ?兎だよ。ウ・サ・ギ」
母さまは、こてんと首をかしげた。
「ウサギは海を渡ったりせえへんやろ?」
「そこは物語の中だから・・・。」
「・・・」
「・・・。」
お互いに「何か話が噛み合わないな」みたいな顔をしていたが、急に母さまが何かを思いついたようで、ひとりで納得顔になった。
「そうかー。重盛ちゃん、あんまりお外にでないから、うしゃぎさん、見たことなかったねー。」
・・・なんだろう。さ行をしっかり発音しない流行とかだろうか?
あれだ。
「寒くなってきたので、もう寝ます。」
「はい。おやすみー」
翌朝、雪は平安の都を白一色に塗りつぶしていた。
いつもの邸宅前の通りの喧噪が嘘のように静かな、凍てつくような朝だった。
誰よりも早く起きる母さまが、その日は起きてこなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます