617.おっちゃんちへ挨拶に。お盆の時期は忙しい
家に戻るとポチとタマが待っていた。
「ポチ、タマ、ありがとうなー。なんか食うか?」
「イラナーイ」
「イラナーイ」
そんなことより遊びに行かせろと言っているみたいだ。足がもうたしたししている。わかりやすいなぁと俺は苦笑した。
「じゃあ、遊んできていいぞ。暗くなる前には戻ってこいよ」
「ワカッター」
ポチの返事はとてもいい。返事だけは。タマは返事をしないけど、夕方までにはポチを連れて帰ってきてくれる。やっぱうちのニワトリはいい子たちだよな。
ためもなくポチとタマがツッタカターと遊びに行った。それをメイがトトトッと追いかけていこうとする。ユマが尾をうまく使ってメイの動きを阻止した。
ココッ、コココッとまたメイが抗議している。メイじゃポチとタマには付いていけないだろう。タマが連れていってくれるまで待ってほしい。多分そのうち、タマが許可をすれば連れていってくれるはずだ。
ユマが阻止するってことはそういうことなんだと思っている。
「あ」
今日おっちゃんちに後で行ってくるって言うの忘れたな。
でも暗くなる前には帰ってこれるだろうから大丈夫だろう。
夕方前に挨拶に行けばいいのか? でもお盆の期間中だから早く出発したりするんだろうか。混んでる時期に遠出したりしないからイマイチわからなかった。
そろそろ帰ったかなと電話する。こういうのはつらつら考えるよりも聞いた方が早い。
「もしもし、昇平です」
「もしもし、昇ちゃん? 今日はありがとうね」
おばさんが出た。
「いえ、参加していただけて助かりました。あけさんたちにもお礼をお伝えください。それで、忙しいとは思うんですけど顔を出したいんですが……」
「あらあら、気を遣ってくれてありがとうね。遅めのお昼にするから、食べにきてちょうだい。その後すぐに帰るみたいだから」
「いや、それは悪いですよ」
「昇ちゃんは遠慮なんかしないのよ。お蕎麦程度だけど用意しておくからいらっしゃい!」
そう言って電話は切れた。有無を言わさずというやつである。俺は苦笑した。
遅めのお昼ということだから、1時に家を出ればいいだろう。
ちょっと家の日陰で草むしりをしていたが、眠気が勝ったので少しだけ昼寝をすることにした。
「ユマ、メイ、俺ちょっと家の中で寝てるからなー。なんかあったら声かけてくれ」
「ハーイ」
ココッとメイからも返事があるのが幸せだなと思う。
一人暮らしのはずなんだけど、ニワトリたちの存在感がでかすぎて一人暮らしって気がしない。やっぱニワトリたちのことは大事にしないとと思いながら早々に落ちた。
スマホで目覚ましを設定しておかなかったらやヴぁかったと思う。
昼寝って長くても三十分ぐらいがいいんだよな。それ以上だとかえって頭が働かなくなるみたいだ。
人間の身体って不思議だ。
一応朝作ったみそ汁に火を入れてから、ユマとメイを連れて出かけることにした。(油断するとすぐ悪くなる)
「おっちゃんちに行くから。夕方前には戻る予定だよ」
ユマに先に乗ってもらい、隙間にメイをだっこして乗せた。でっかいおもちとちっちゃいおもちがくっついているみたいでにまにましてしまう。うちのニワトリたちかわいすぎだろ。
「……手土産は、今回はいらないよな?」
挨拶だけだからこちらから何か用意しなければいけないということはないはずだ。それにしても俺は毎回手土産手土産と考えているが、田舎ってのはそういうのがけっこう大事なんである。おっちゃんちはそういうことは気にしないみたいだが、家によっては「あんなに野菜とか渡してやったのに」と陰口を叩かれることもあるのだとか。お返しなんて何もいらないというのは社交辞令だと思った方がいい。
うちはニワトリを派遣したりとか、ごみ拾いウォークとかをやっているせいか概ね村では悪感情っぽいのは向けられていないけど、郷に入っては郷に従えというのは真理だと思っている。まぁそこまでかまえなくてもこの村の人たちはいい人ばっかなんだけどな。
それに甘えてはいけないと思うのだ。
「こんにちはー」
さすがに暑いからか、表には誰もいなかった。やっぱ山を下りると気温が違う気がする。ニワトリたちには日陰で待っててもらうよう言った。
「先ほどはどうも。どうぞ。佐野さんがいらっしゃいましたよー」
おっちゃんの息子さんのお嫁さんが出てきてくれた。光一さんのお嫁さんかな。
「お邪魔します。ニワトリはどうしたらいいですか?」
家族で集まっているところを邪魔して悪いなと思ったけど、今回は甘えることにした。
「昇ちゃん、いらっしゃい。ニワトリは畑の方まで行かせてもいいわよ。暑い中悪いわねー」
そう言いながら天ぷらを揚げているおばさんすごい。
ニワトリたちに声をかけてから庭に面した居間の方へ向かう。おっちゃんの息子さんたちとお子さんたちがいた。
「こんにちは。挨拶にきました」
「佐野君か。律儀だなぁ。今回もごみ拾いウォークだったんだっけ? 参加できなくて悪かったな」
雄二さんが言う。
「あー、おにーちゃんだー! ニワトリちゃんたちはー?」
「ユマとメイは畑の方に行かせたよ」
「食べ終わったら遊んでいーい?」
「帰りの準備とか済んでたらいいんじゃないかな。触ったりする時は先にニワトリに声をかけるようにしてくれなー」
「はーい」
素直でよろしい。
今日のお昼はざる蕎麦と山盛りの天ぷら、漬物とナスの煮浸し、サラダチキンを使ったサラダだった。
「こんなもので悪いわねー」
なんておばさんは言っていたがごちそうである。蕎麦はおっちゃんの手打ちだ。贅沢だと思う。
みんなでずるずると食べ、はーっとため息をついた。幸せである。お子さんたちも蕎麦が大好きなようでいっぱい食べていた。
家族っていいものだなと思い、ニワトリたちが頭に浮かんだ俺だった。
うん、アイツらは俺の大事な家族だ。
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今日か明日にはなんかお知らせが出る予定ですー。(未定)
次の更新は23日(火)です。
その前にいろいろ上げられたら上げますねー。
よろしくですー
宣伝失礼します。
アルファポリスの第六回ライト文芸大賞に参加しています。
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不注意で逃がしてしまったオカメインコと主人公が山の高校で再会しました。
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