587.嫌なことはできるだけ早く片づけたい
片づけをしてスマホを見たら、相川さんと桂木さんからLINEが入っていた。
おっちゃんはもうごみ拾いウォークに関して二人に連絡をしてくれたようである。仕事が早いよな、全く。
相川さんは全てに参加してくれるみたいだ。桂木さんは養鶏場と山の方に参加してくれるらしい。
「メイちゃんのケープかポンチョみたいなのも作りますか? 去年のってあります? あれからまた成長しているはずなので、改めてサイズ合わせしましょう」
桂木さんからの提案に、去年のポンチョのことを思い出した。えーと、どこにしまったかな。確か箪笥にしまったはずだった。
部屋の箪笥を開けると、果たして去年のポンチョが出てきた。ファスナーも一緒である。それなりに皺がついていた。
「けっこう皺がついてるんだけど」
「そういうのも含めてこちらで手入れしますよ。ボロボロでもいいので一応見せてください」
桂木さんは俺がキレイに保管できているとは全く思っていなかったらしい。面目ない話である。一応虫食いがないのは確認した。
特に用事もないので、明日こちらに来てもらうことにした。
さすがにいろいろやってもらうのに何もなしってわけにはいかないよな。せめて昼飯ぐらい振舞わなければ。
何を作ろうかな。今回は妹も一緒だろうから、量も考えなければいけない。
ちょうどおっちゃんから蕎麦をもらったんだった。でも蕎麦と薬味だけじゃ味気ないよな。漬物はある。あと必要なのは煮物ぐらいか? 炒め物はちょっと違うだろうし、とかぶつぶつ考えた。
とりあえず書き出すのが一番だ。
またスマホが震えた。
「はい、もしもし……」
管理会社からだった。一度現地を確認しがてら、契約の書類(正式なのは後日郵送してくれるらしい)を持ってきてくれるという。できるだけ早い方がいいよな。
スケジュールを確認して折り返しますと答えた。
なんとも忙しい話だ。
「また実家か……」
謝罪行脚もしないといけないんだよな。一部は姉さんが伯父さんと行くと言ってくれたが、姉さんにそんなに甘えるのはよくない。いくら金を払うといっても限度があるだろう。また実家に泊りも込みで行ってこないと。
表を見る。
ユマとメイが草をつついているのが見えた。
「……また離れなきゃいけないのか」
そう呟いてから、あれ? と思った。いつのまにか、俺は地元へ行きたくないというよりもうちのニワトリたちと離れるのが嫌だと思っているようだった。
地元へ行くのは嫌だ。でも平日の昼間なら多分大丈夫だろう。遠いから、行ったら泊りになってしまいそうなのがもっと嫌だった。
少しは吹っ切れたんだろうか。
そう思ったら嬉しくなった。
それでも、こんな風に考えられるようになるまでに一年以上もかかってしまった。
「……いくらなんでも顔を合わせることはないだろうしな」
って口に出したらいけないんだっけ。そんなフラグは嫌だ。
それよりも明日のメニューを考えなければいけない。きゅうりを煮たのを出すか。他には……。
夕方、ポチとタマが帰宅してから明日は桂木姉妹が来るということを伝えた。それでまた寸法を取るから、彼女たちが来るまで出かけないでほしい。
「多分昼頃には来ると思うから、それまでいてくれるか?」
「イイヨー」
「イイヨー」
「イイヨー」
「ピヨピヨ」
「頼んだぞー」
メイも返事をしてくれたんだと思うが、メイは絶対にいないとダメだろう。今回初めてなんだし。
明日桂木姉妹が来るのは構わないのだが、実家に向かうのは本当にどうしようと考える。お盆前がいいのか後がいいのか。
管理会社にえいやっと電話をかけた。直近で明後日の昼以降であれば空いているので、駐車場やマンションまで同行できるという。(マンションは外から見るだけだ)
「じゃあ明後日の昼過ぎでいいですか。暑いですけどできれば二時以降で」
担当さんと直接話して、明後日の四時頃ということで話がついた。四時以降か……完全に泊りだな。でもできるだけ早い方がいいはず、と自分に言い聞かせる。
本当はビジネスホテルかなんかに泊まりたいが、お盆も近いので予約が取れるかどうか微妙だ。一応調べてみよう。
電話を切ったら、ユマにじーっと見られていた。
「ユマ、明日は桂木さんたちが来るけど、明後日は俺泊まりで出かけるから」
ちょうどいいので伝えることにした。ユマはコキャッと首を傾げた。
「ユマー」
「今回は実家だから俺一人で行く」
「イッショー」
かわいすぎて苦笑する。トトトッと近寄ってきたから羽を優しく撫でた。
「だめなんだ。一晩泊まってから帰ってくる。夏祭りの前には戻るよ」
「ユマー」
本当にかわいくてたまらない。
「またおっちゃんに頼んでいくから、な」
「イッショー」
「だーめ」
七月中も泊まりで出かけたから、ユマ的にだめなのだろう。でも今回のことが済んだらもう向こうにはしばらく行かなくていいから。
「ユマ、今回のことが終ったら、しばらく出かけないからさ。メイの面倒を見て待っててほしいんだ。またお土産買ってくるから」
ユマはじっと俺を見つめた。そんな目を向けられたらやっぱり止めますって電話したくなってしまうからやめてほしい。
「……オミヤゲー」
しぶしぶというかんじで、ユマが呟いた。くりくりした目が拗ねているように見える。本当にユマはかわいい。でっかいのに、なんでこんなにかわいいんだろう。
「うん、買ってくるからな」
納得はしていないみたいだけど、了承してくれたようだ。
「ユマ、ありがとう」
礼を言って撫で、今度はおっちゃんに電話をかけたのだった。
ーーーーー
1100万PVありがとうございます! まったりの度合いは変わりませんが、これからもがんばります。
日曜日までには1100万PV記念SSを上げたいと思います。(日曜日になるかも)
次の更新は2/10(金)です。よろしくー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます