900万PV記念SS「よその家のニワトリのなんの変哲もない一日」

フォロー10000記念SS、600万PV記念SS、700万PV記念SS、800万PV記念SSの続きです。

ニワトリは村に貢献するらしい?

ーーーーー


 クァーケコッコーッ! コーケコッコーッ!


 朝である。日が出たら目を覚まし、朝だぞー! と鳴くのがブッチャーの日課だ。

 勢いよく鳴けば同じ小屋で暮らしてる雌鶏たちが目を覚まし、ココッ、コココッと騒がしく鳴き始める。

 まずは周囲に朝を知らせるのは大事だ。

 しばらくすると寝ぼけまなこのおじさんが出てきて、「お前朝早すぎんだよ~」と文句を言いながら餌をくれる。


「小屋に遮光のなんかでもかけておくべきか? しっかしこれから暑くなるしなぁ……」


 おじさんはぶつぶつ呟いていたがブッチャーには関係ない。

 餌を食べて一息ついたところで小屋の扉が開かれるので、ブッチャーは意気揚々と庭へ出た。

 以前はこの家の裏の庭と、近くの田畑ぐらいしか巡っていなかったが、最近は少し散歩する距離を伸ばすようにしている。


「ブッチャー、今日はどこまで行くんだ?」


 なんて道路をトットットッと歩いていると誰かに声をかけられたりする。大概声をかけてくるのは村のおじさんたちで、軽トラから顔を出して言ってくるものだからブッチャーも跳びかかったりはしない。

 以前軽トラに跳びかかって痛い目を見た。軽トラは動いていなかったからブッチャーの身体が痛むぐらいで済んだが、さすがにおばさんが青ざめていた。

 軽トラとか車というのはなんだか知らないがとても頑丈で固いものらしいとブッチャーは学んだ。

 身をもって学ばなくてもいいはずだが、ブッチャーは実践の雄鶏である。そこに何かがあれば突撃しなければいられないのだ。

 彼は風の向くまま気の向くままに今日も道なりに歩いていった。

 今日は東の方面へ歩くと、駐車場のような場所と、店のようなものがあるところへ出た。どうやらこんなところにも雑貨屋とかいうものがあったらしい。ブッチャーは興味深いと思ったのか、立ち止まった。

 そこへ軽トラが入ってきた。


「あれぇ?」


 高い声がかかる。


「うーんと、雄鶏さんだよね? やっぱニワトリってこれぐらいの大きさだよね~。こんにちは」


 軽トラから下りてきたのは、あか抜けた女性だった。少し茶っぽい髪の色をしている。その女性はブッチャーに対し、当たり前のように挨拶をした。

 ブッチャーはココッと挨拶を返した。


「ちゃんと返事してくれるとかイケメンだね」


 女性はにっこり笑むと、雑貨屋へ入っていった。


「おじさん、ニワトリ飼うことにしたのー?」


 女性はブッチャーがここの雑貨屋で飼われていると思ったらしい。


「ええ? ニワトリなんぞ知らないぞ」


 店主と思しき男の声がする。ブッチャーは面倒なので移動することにした。

 今日は橋を渡り、山沿いの道に来た。山沿いの道は餌の宝庫である。虫をぱくぱく摘まみ、だいぶ食べたなと思ったところで石を飲み込んだ。

 後は帰るだけだ。

 ニワトリは歯がないせいか、石などを飲み込んで砂のうという場所で食べ物をすり潰す。動いている間に虫もすり潰されていくことだろう。

 ブッチャーは帰り道がわかるえらいニワトリである。

 山沿いの道を見慣れない車が通りすぎていった。どこまで行くつもりだろうか。もしまたうちに悪さをしに来る者であったらただではおかない。

 ブッチャーは通り過ぎた車の後部を睨みつけた。

 そうして村の中を巡りながら、夕方になる前に家へ帰ったのだった。


「おお、ブッチャーよく帰ったな。今日は結局どこまで行ってきたんだ?」


 おじさんがにこにこしていた。


「あらまぁ随分汚れたわね。ちょっと洗うわよ~」


 おばさんに首根っこを掴まれ、ブッチャーは逆らう間もなく洗われてしまった。おばさんには逆らってはいけないので、彼は素直にタライに入りさっぱりした。水浴びは嫌いではない。

 餌を食べ、暗くなれば自然と眠くなる。

 小屋に入り、大人しく目を閉じた。

 明日は村のどこへ散歩へ行こうか。

 こうやってブッチャーの存在は村の人々になんとなく認知されていくのだった。


おしまい。



800万と900万の間があまり開いてないのは多忙だからです。すみません。

楽しんでいただけたなら幸いです。

途中出てきた女性はどなたでしょうね?


レビューコメントいただきました! ありがとうございます!!


「山暮らし~」本編の更新は1/10(火)です。どうぞこれからもよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る