576.うろの周りを確認したい

 ハクビシンがいた辺りって、俺も見てきた方がいいんだろうな。

 柿の木があったなんて知らなかった。ってことは、ここの集落に住んでいた人が果樹を栽培していたのかもしれない。元庄屋の山倉さんに聞いてわかるものなんだろうか。


「先に確認してからだな」


 とはいえ今日はもうポチとタマは遊びに出かけてしまったし、ユマはメイにかかりっきりだけど俺が別の場所へ行こうとすればついてこようとする。急ぐことでもないので明日見てくることにし、今日は家事を主にすることにした。

 幸い今日は晴れているので布団を干した。シーツなどの洗濯もまとめてしてしまう。その間に家の中を掃いたり、炭の状態を確認したり……って昨日炭の様子は見たじゃないか。

 やることを後回しにするというのが難しいのだ。なんだか忘れてしまいそうで。

 スマホのメモに明日の予定を入れ、ハクビシンの巣の調査もメモに入れた。これで忘れても大丈夫だろう。

 お昼ごはんを用意してユマとメイを呼ぶ。日中はそれほど食べないから用意する餌は少なめだ。それは山の中に豊富な餌があるからできることだろう。


「メイはいつ頃ニワトリになるんだろうな」


 まだピヨピヨ鳴いているのがかわいい。うちのニワトリたちは成長がとても早かったからメイの成長が遅く感じられるけど、普通ひよこってそんなに早くニワトリにはならないらしいよな。大体二か月以上経ってからピヨピヨ鳴かなくなるみたいだし。

 今のメイは首が長くなってきてひよことニワトリの中間ぐらいに見える。中雛というのだろうか。そんなかんじだ。

 ってことはニワトリになるにはもう少しかかるだろう。


「急いで大きくならなくてもいいからなー」


 せっかくのひよこの時期なんだし。もちろん大きくなってもかまわないが。

 ユマが近づいてきた。


「オオキイー?」

「ん? 何が?」

「ユマー、オオキイー?」

「うん、大きいな。かわいいけど」

「カワイイー?」

「うん、かわいい」

「カワイイー!」


 コキャッと首を傾げていたけど、俺がかわいいと言ったら喜んで羽をバサバサさせた。その影響か、メイがころんと転がった。


「あ、メイ……」


 ピイピイと起き上がったメイがユマに抗議している。そんな姿もかわいいなとほっこりする。ユマもメイも癒しだ。

 夕方ポチとタマが帰宅して、タマは周りをうろうろしていた。


「タマ? 相川さんならとっくに帰ったぞ?」

「……ワカッター」


 やっぱり相川さんの姿を探していたらしい。


「全く……相川さんのどこが気に食わないんだよー……」


 ポチとタマを洗いながら聞けば、タマにつつかれた。それじゃわかんないって。やれやれと思いながらいつも通りやることをやって寝た。

 で、だからどうして俺は……。

 目覚ましはかけておいたのだ。だけど目覚ましが鳴る前にタマに足の上に乗られているわけで。


「タマ、降りなさい……」


 もう文句を言う気力もない。タマだってわからずやなわけではないのだ。俺を起こすのを率先してやっているだけで。

 前の日に「明日は起こすなよ」と言っておけば起こしにはこないわけで。


「サノー、オキター」

「……うん」


 タマは俺が怒鳴らなかったことで調子が狂ったのか、首をコキャッと傾げてから足の上から下りた。そしていつものようにドドドドドというかんじではなく、トットットと土間へ戻っていった。


「えーと……誰か付いてきてもらわないとな」


 ハクビシンがいた巣の確認をすることを俺は覚えていた。

 支度をして居間へ移動する。ごはんの用意をしながら今日の予定を話した。


「今日は夕方からおっちゃんちで宴会だから、出かけても明るいうちに戻ってこいよ。それから、ハクビシンを捕まえた場所を見に行きたいんだけど、誰か連れてってくれないか?」

「イカナーイ」

「イクー」

「メイー」


 タマが付き合ってくれるらしい。なんだかんだいって助かる。


「わかった。タマ、よろしくな」


 ポチは餌を食べると一羽でツッタカターと遊びに行った。待っているという選択肢はないらしい。わかりやすくていいけどな。

 タマとユマ、メイは表に出し、俺の飯が終わるまで待っててもらった。

 山だからか朝のうちは多少涼しくも感じられるのだが、九時過ぎるとやはり暑い。作業着だから余計かもしれない。でも下手に半袖とかでいて何かに食われたりするのも嫌だしな。せめて水分補給は小まめにするようにし、冷凍庫にも氷を大量に作っておいている。

 最近は昼過ぎから夜までエアコンも点けっぱなしだ。ニワトリたちが熱中症とかになっても困る。


「タマ、お待たせ」


 今日の持ち物とかいろいろ確認してから表へ出る。忘れ物は多分ないはずだ。

 ユマとメイは家から少し離れたところに置いたプランターのところで、シロツメクサをつついていた。去年家の周りに設置したやつである。今年もあっという間にもさもさになっている。生命力すげえな。

 と、畑の方を見たら何かできているみたいだった。今夜は泊りだから収穫していった方がいいだろう。


「ちょっと畑も見させてくれ」

「イイヨー」


 タマさん優しい。いつもこれぐらい優しいといいのになと思いながら籠を取ってきたら、タマにつつかれた。

 なーんーでーだー?


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今年はいっぱい読んでいただきありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。

次の更新は1月3日頃を予定しています。

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