540.西山の住人と大蛇が来まして

 相川さんもとても張り切っていたらしい。

 ニワトリたちに朝ごはんを食べさせ、俺もごはんを食べている間に相川さんからLINEが入った。


「本日はいつ頃お伺いすればいいですか?」


 あ、卵産んだ。


「動くなよ~」


 タマもユマも似たようなタイミングで産んでくれるから助かる。二羽の卵を回収して籠に入れた。うん、とても助かる。そして手を徹底的に洗った。除菌ができる食器洗い洗剤が嬉しい。

 え? 卵は洗わないのかって? 軽く拭くぐらいはするけど洗わないかな。すぐ使うなら洗ってもいいだろうが、そうでないと洗うことで卵を守っている薄い膜みたいなのも落としてしまうから雑菌が繁殖しやすくなり、かえって危険なのだそうだ。

 一般的にスーパーなどで扱っている卵は洗卵された後消毒されているからキレイな状態で売られている。そうでない卵はやっぱりサルモネラ菌とかが怖いので卵かけごはんはしない方がいいと俺は思っている。(注:俺個人の考え方です)


「今からでも大丈夫です」


 相川さんに返事をしてからまた食べ始めた。お昼ご飯どうすっかなー。米は多めに炊いてあるけど。


「ありがとうございます。今回はリンも同行したいというのですが……川に行きたいみたいで。よろしいでしょうか?」


 ちゃんとそうやって聞いてくれるのは助かる。


「ポチ、タマ、相川さんが来る時にリンさんも連れてくるみたいなんだ。でもリンさんは川に行きたいみたいでさ。いいかな?」


 ニワトリたちは即答はしなかった。


「リンー、カワー、イイー」

「リンー、ウチー、ダメー」


 ニワトリたちはお互いとメイを見たあと、ポチとタマがこう言った。


「えーと、リンさんが来てもいいけどこの家に入るのはだめで、川に行くのはいいって解釈で合ってるか?」

「ダイジョブー」


 タマが答えてくれた。


「わかった。そう伝えるよ」


 相川さんにそう返事をすると、


「ありがとうございます。行きは一緒に行きますが、帰りは自分で帰るそうなのでお願いします」


 おおう。帰りは自力か。確かにそれは普通にできそうだよな。山の中を帰ればいいわけだし。リンさんてワイルドだなーと思った。

 そんなわけで、ごはんを食べてから麓の鍵を開けに向かった。そろそろ相川さんにここの鍵を渡してもいいような気がするが、それはなんか違う気もする。ちょっと聞いてみようかなとは考えた。

 ほどなくして、相川さんが到着した。本当に張り切っていたみたいだ。


「すみません、朝早くに……」

「いえ、起きていましたから大丈夫ですよ」


 タマに起こされたからな。

 時計を見るとまだ七時半過ぎだった。確かに早いといえば早い。リンさんも一緒だった。


「サノ、アリガト」


 リンさんは表情は動かないが嬉しそうだった。今日は半袖のアロハっぽいシャツを着ている。ポチとタマが警戒しているのがわかった。全く警戒しすぎだっての。


「ポチさん、タマさん、今日はよろしくお願いします。リンは川の方へ行かせてもよろしいでしょうか。帰りは自分で山を越えて帰りますので」

「カワー、イイヨー」

「ウチー、ダメー」


 ポチとタマがそれぞれ答えた。


「リン、川だけだ。佐野さんの家には近寄らないように」

「あ、でも。帰る時は声をかけてほしいです。家の周りか中にいますので、お帰りの際だけ声をかけてください。リンさん、よろしいですか?」

「ワカッタ」


 リンさんは頷いてくれた。言葉が通じるって本当にすごいことだと思う。ユマとメイはうちの中から出てこない。メイはまだ小さいからしょうがないのだ。

 相川さんは縄やいろいろな道具をリュックに入れてきたらしい。猟銃はさすがに使えないが、それ以外でどうにかして捕らえる為だろう。本当に狩りが好きなんだなと苦笑した。


「あ、そうだ。シカをもし三頭捕まえたら一頭はうちでいただくことは可能でしょうか? リンとテンが食べたいみたいなので」

「イイヨー」

「イイヨー」


 ポチとタマが即答した。肉を食べたいというのもあるだろうが、もしかしてお前らも狩りがしたいだけなんじゃないだろうな?


「では行ってきます」


 相川さんは上機嫌でポチとタマと共に裏山の方面へ出かけた。


「ちょっと待っててもらっていいですか?」


 リンさんに声をかけて家に入った。


「ユマ、俺これからリンさんを川へ案内してくるけど……」

「ダメー!」


 珍しくユマが怒った。


「リンー、ユマ、イクー!」

「あ、ユマが行ってくれるのか? ありがとな」


 隙あらば外へ出ようとするメイを捕まえて、ユマを外へ出した。


「リンさん、ユマが川へ案内するそうです。よろしくお願いします」

「ワカッタ」


 そしてリンさんとユマが川の方へ向かうのを見送った。

 なんつーか、不思議な光景ではあるんだがこれはこれで慣れてしまった。後ろ姿も二人とも楽しそうなのがいい。

 ピイピイとメイが俺の手から逃げようとする。


「あっ、こらっ!」


 上半身は人間の女性に擬態しているが相手は大蛇だ。まだまだメイをリンさんには会わせられそうもない。

 ってことは山唐さんちに行く時はどうしたらいいのだろうか。



ーーーーー

カクヨムコン始まってます。

こちらの作品で応募しまーす! カクコン中は宣伝うるさいかもしれませんがご容赦くださいませー!


「準備万端異世界トリップ~俺はイタチと引きこもる~」10話まで更新中

https://kakuyomu.jp/works/16817330650193294491


異世界トリップした17歳男子高校生が主人公です。

よくわからない場所に落とされて、イタチ(?)とサバイバルしながら暮らします~。

本日も最低4話上げる予定です。

やっと話が動くよ!

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