529.ニワトリと買い出しに行くのはなんか楽しい
タマが出かけるわけではないせいか、朝は起こされなかった。
明日の朝は上に乗られそうである。
店が開く時間に合わせて行くので、少しのんびりだ。ポチとタマは朝飯を食べると表へ出た。ポチはいつも通りツッタカターと遊びに出かけてしまった。
「気を付けて行くんだぞー!」
返事もない。タマはポチが向かった方を見たが、すぐに興味をなくしたように首を戻した。
今日も雨は降らなさそうだったので、洗濯物は外に干した。今日は買物もそうだけど作業着も洗いたいので持っていくことにする。買物をしている間コインランドリーで洗うのだ。この時期は外で干してても生乾きっぽい匂いがしてくるからコインランドリーが最強だと思う。(作業着等の生地が厚手のものに関してだ)
一応タマの昼ごはんを準備する。メイ用の水は土間に用意した。メイはまだ外で何かつついていればそれでおなかいっぱいになるらしい。もちろん朝は餌をあげているし、夜だって食べるようならあげている。首が伸びてきたがまだまだひよこだ。
「タマ、行ってくるからメイのことよろしくなー」
「ワカッター」
メイがピイピイ鳴いている。
「メイ、行ってくるよ。昼過ぎには帰ってくるからな」
とメイにも声をかけ、ユマを助手席に乗せて山を下りた。相川さんの山の下で待ち合わせである。相川さんの軽トラはすでに下りていた。
「おはようございます。お待たせしました」
「おはようございます。行きますね」
窓を開けて声をかけ、そのままN町まで走らせた。横にユマが乗ってくれているのがとても嬉しい。別に何か話すわけじゃないんだけど、そこにうちのニワトリがいることが重要なのだ。いつもの駐車場に並べて停め、リンさんに挨拶した。
「リンさん、こんにちは。うちのユマをよろしくお願いします」
「サノ、コニチハ。マカセル」
「ありがとうございます」
ユマはリンさんに会えて機嫌がよさそうだ。リンさんも表情は全く動かないが嬉しそうに見えた。これは俺の希望的観測かもしれないけど。
「リンが機嫌よさそうでよかったです」
相川さんもコインランドリーに向かうというので一緒に向かった。どうしてもこの時期は作業着がしっかり乾かなくて困るんだよなー。
「リンさん、機嫌いいですか」
「ええ。表情は動きませんけど、感情豊かなんですよ」
「そうですよね」
表し方が違うだけで、大蛇もニワトリも感情豊かだなと思う。桂木さんのところのドラゴンさんも見た目ではわからないけど桂木さんをしっかり守っているし、そういう感情があるのだろうな。
コインランドリーの機械が新しくなっていた。スマホに登録するとあとどれぐらいとか出来上がりの時間に通知してくれるらしい。
「おお、すごい」
「便利ですよね。これだと次の人を待たせなくてすみますし。今のうちに買物してしまいましょう」
「はい」
大型のスーパーにリニューアルしたせいか、本当にいろんなものが売っている。明日用の手土産にと水羊羹の詰め合わせを買うこともできた。豚肉とか、インスタント食品とか、村ではあまり食べられないものを買ったらやっぱり多くなった。買物って意外と時間を食うもので、軽トラの荷台のクーラーボックスに突っ込んだら洗濯物がそろそろ出来上がりそうな時間になっていた。
「ユマ、もうちょっと待っててくれ」
相川さんと慌ただしく洗濯物を取りに向かい、軽トラに戻った。
お昼ご飯に弁当を買ってある。なんか食べたくなってハンバーグ弁当を買った。ユマにはチンゲンサイを渡した。ぱりぱりと食べる音にいつもの違和感。気にしたら負けだ。
「相川さん、ハンバーグって作ります?」
「いやー、自分だけだと作りませんね」
「ですよね」
たまには手作りハンバーグを食べたいと思う時もあるが、自分で作るのは手間だ。結局こういう出来あいを買ってそれで済ませてしまう。まぁ出来あいのもめったに食べられないんだけどな。
「明日宴会ですよね」
「ええ」
「リクエストしてみたらどうでしょう。シカ肉のハンバーグが食べたいって」
「えええ。それはさすがにわがままじゃないですか?」
「そんなことはないですよ。きっと真知子さん、喜ぶと思います」
「そうかなぁ……」
「こねるのがたいへんそうであれば、手伝えばいいんですから」
「あー、そうですね。こねるぐらいはできますね」
力仕事なら任せてほしい。そう思ったらシカ肉バーグがめちゃくちゃ食べたくなってしまった。
水羊羹は相川さんに持って行ってもらうことにし、弁当を食べ終えてから帰路についた。
「また明日~」
と相川さんの山の下で別れ、山に戻る。タマとメイは外にいて、仲良く地面をつついている最中だった。
「タマ、メイ、ただいま。留守番、ありがとうな」
タマにもチンゲンサイを渡した。タマは嬉しそうにばりんばりん食べた。なんでユマと立てる音が違うんだろう。食べ方が違うのか?
メイは地面をしきりにつついている。何かおいしそうな虫でも見つけたのだろうか。
ユマを軽トラから下ろしたり、荷物を下ろしたりして作業を終えてから、
「タマ、ありがとう。もう大丈夫だよ」
と声をかけた。タマは頷くように首を前に出し、「アソブー」と言った。
「うん、遊んできていいぞ」
タマもじっとしているのが苦手みたいだしな。タマはメイの頭を軽くつつくと、ツッタカターと遊びに出かけた。ユマがタマの代わりにメイを見てくれる。
本当にうちのニワトリたちには助けられてるよなとしみじみ思った。
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