478.そういえば予定はけっこうあったりする

 ごみ処理費用の清算は後日すればいい。正直大した金額じゃない。しかしやはり納得はいかない。

 不法投棄に関しては自衛をすると言ったって限度というものがある。監視カメラを付けるにしてもどこに付けるんだって話もあるし。本当に悩ましい問題だ。

 帰宅してからお昼ごはんを準備し、ユマに餌をあげた。せっかくおからをもらってきたので増量してみた。


「オイシーイ」


 ユマが喜んで食べてくれた。肉も好きだけどおからも好きらしい。シイタケも湯がいて切って混ぜてあげたりもする。いろいろ食べるんだなぁとユマを見ていて思った。

 おからは食べられなくなるのが早いからさっそく炒り煮にして食べた。シイタケがとにかく最高です。あの栽培規模はどうかと思うけど相川さんグッジョブと思った。そろそろタケノコを掘りに行きたいけど、もう遅いかな?

 桂木さんと相川さんにごみ処理費用についてLINEは入れた。相川さんには豆腐皮ドウフピーを手に入れたということも書いた。


「いつお支払いすればいいですか~?」


 桂木さんからさっそく返信があった。


「今度会った時でいいよ。祠が届いた時でも」

「わかりました。ありがとうございました!」


 桂木さんも妹と暮らしていることもあって、以前よりは心に余裕が出てきたようだ。でも桂木妹の問題はまだ終ってないんだよな。GW中はできるだけ外に出ないようにしていたみたいだけど、このままフェードアウトするんだろうか。それならそれでいいかもしれないが、なんかはっきりしないともやもやはいつまでも晴れないだろう。一日でも早く、桂木姉妹が穏やかに暮らせるようになったらいい。うちの山の神様に祈るのは違うかもしれないけど、桂木姉妹はうちの山にも来たことがあるから、できれば守ってやってほしいと祈った。

 相川さんから返信があったのは夕方だった。忙しかったようである。


「お疲れ様でした。お金は近いうちに払いますね。豆腐皮、どんな状態でしょうか? 本当に薄くて固い状態ならば何かを包むのにも向いてるとは思います」

「ああ、包む、かぁ……」


 冷蔵庫から豆腐皮を出して確認した。干豆腐と違って薄くて固い印象はある。干豆腐は豆腐を潰して水分を抜いたものであるのに対し、豆腐皮は水分を抜く抜かないに関わらず薄さを追及したものだ。湯葉とは違い、確かに何かを包むにも使えそうだった。


「そんなかんじです」


 と返したら、すぐに返信がきた。


「佐野さん、明日のご予定は?」

「ありません」

「豆腐皮を使った料理、食べたくないですか?」

「食べたいです」

「では明日、作りに行ってもいいですか?」

「あ、だったらリンさんも一緒に来てください。できれば川を見ていただけると……」

「そうですね。リンと一緒に伺います。ありがとうございます。またシイタケを持って行きます。それから、シシ肉がまだいくらかあれば解凍しておいてください」

「わかりました」


 ありがとうと言いたいのはこっちだ。シイタケを持ってくることに相川さんは恐縮しているけれど、俺からしたらいくらでも食べられる大事な食材だ。ビバ! シイタケ!(何)

 しかし俺はいいけどタマが嫌がるな。ちら、とすでに帰宅して土間でうろうろしているタマを見やる。

 言っておいた方がいいだろう。


「明日、相川さんとリンさんが昼頃に来るからな~」

「ワカッター」

「ヤダー」

「ワカッター」


 やだと言ったのはタマである。あのね、タマさんや、一応ご近所付き合いってものがだね。


「タマ、しょうがないだろ? 川のザリガニを獲りにきてくれるんだから」

「ヤダー」

「昼だから、タマが家に近寄らなければいいだろ? 夕方には帰るだろうし」


 そう言ったけど、俺はタマにつつかれた。


「痛いっ! タマッ、痛いって!」


 タマはひとしきり俺をつつくとそっぽを向いた。これぐらいで許してやろうということなのかはわからなかったが、それがタマにとっての妥協点なのだということはわかった。


「タマ、ありがとうな」


 礼を言ったら何故かまたつつかれた。

 だからなーんーでーだー。

 タマが許してくれたことで頭がぱやぱやしていたのかなんなのか、タマに朝は起こさないように言うのを忘れていた。

 翌朝、かなり早い時間にタマが俺の足の上にノシッと乗った。


「ぅえっ!?」

「サノー!」


 しかもせかすように身体を揺らす。タマさん、今貴方けっこう重いんですのよ?(なんでオネエ口調)


「おーもーいー! タマ、どけー!」


 タマはパッとどくと、土間までバタバタと駆けて行った。


「ええい! 開けっ放しにすんなー!」


 とりあえず文句を言ってどうにか身体を起こした。おかしいな、まだそんなに明るくないんだけど……相川さんたちに会いたくないから早く起こされたとか? まったく、うちのニワトリは本当にどうしようもない。そこがかわいいんだけどな。

 もう少し布団に入っていたかったが、ここで二度寝なんかした日には顔の上に乗られかねないのでしぶしぶ起きることにした。

 段ボールの設置は明日にするか……。一応食べていない卵にはタオルを巻いてオイルヒーターの近くに置いてある。まだ朝晩ちょっと冷えるからな。ああでも、今日の卵はどうしようか。

 そんなことを考えてたらあくびが出た。やっぱ早い時間だよなと思った。

 やれやれだよ。


ーーーーー

レビューいただきました! ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします!

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