前略、山暮らしを始めました。【書籍５巻発売中】

４３７．神棚にも種類があるらしい

　ホームセンターの駐車場に軽トラを並べて停めた。あまり目立たないところに。

　リンさんはキレイな女性に見えるからナンパ目的で誰かが近づいてきたら困る。ユマを見られてもちょっと面倒なことになるかもしれない。でも彼女たちはこうして会って話をする？　のも好きなようだ。ユマがご機嫌で身体を揺らしているのがかわいい。

「じゃあちょっと行ってくるから、大人しく待っててくれ」

　ココッとユマが返事をしてくれた。本当にかわいくてしかたがない。

　ホームセンターに入って店員さんを捕まえ、さっそく神棚が置いていある場所へ向かった。

「佐野さん、後で話したいことがあるので時間をとってもらえますか？」

　相川さんに神妙な顔つきで言われて、どうしたんだろうと思った。

「ええまぁ、大丈夫ですが……何かあったんですか？」

「一応はいい知らせなのですが、細かく決めていなかったことに気づきまして。後でお伝えします」

「だったら相川さんちにお邪魔した方がいいですか？」

「そうですね。来ていただいて、直接見てもらった方がいいかもしれません」

　ということで買物が済んだら相川さんの山へ行くことになった。その後、相川さんはいつになく機嫌がよさそうだった。いい知らせってなんだろうな？

　さて、肝心の神棚である。三社だと天照大御神と、氏神と崇敬神社の札を納めるらしい。天照大御神っていうのは日本人の総氏神様のことだ。みんな名前ぐらいは聞いたことがあると思う。氏神様というのは土地やそこに住む人々をお守りくださる神様のことだ。これが山の神様になるのかな？　それとも村で祀られている稲荷神社になるんだろうか。そして崇敬神社というのは地縁・血縁的な関係以外で個人の特別な信仰等により崇敬される神社のことらしい。さっぱりわからない。

　ちなみに一社の神棚でも三枚札を祀るそうだ。

　そんなに大仰なものでなくてもいいと思うんだが……。

「なんでしたら、神具だけ買っていきますか？　お水とお米、お塩は毎日供えるものらしいですから。それでお山の何かを祀るようにすれば不敬にはならないと思うのですが」

「……そうですね。その方がいいかな……」

　つか、せっかく昨日元庄屋さんちに行ったのになんで俺聞いてこなかったワケ？　絶対あの家にも神棚ってあるよな。

「うちは棚からないので取り付け板と神具を買おうと思っています」

「じゃあ、うちも神具だけで……」

　またなんか聞かないといけないことが増えた。ちゃんとメモしておけばよかったと思った。

　いつだって後悔は後からだ。当たり前だ。頭痛が痛いの親戚かもしれない。

　神具のみを買い、風呂釜もちょっと見た。

「お風呂、作りましょうか？　それともリフォームします？」

　相川さんがわくわくしたように言う。

「……そんなにお金ないですよ～」

「浴室の壁を壊して外側に追加する方法もあるとは思いますけどね。そうすれば浴槽の向きを変えて一回り大きくすればいいだけでしょう？」

「リフォームって金かかりますよね……」

「材料費だけ負担していただければやりますよ？　多分湯本さんや、陸奥さんたちも参加されるでしょうし」

　だからうちの周りの人たちってなんなんだ。どうしてそんなにでっかい工作が好きなんだよ？

「まぁ……先立つ物があれば、ですね」

　ないんだよな。ニワトリたちの予防接種ってけっこう頻繁にしないといけないみたいだし。なんとも情けない話だと苦笑した。

「そういえば、テンさんたちって予防接種とかはないんですか？」

「……ヘビって生態自体がまだよくわかってないみたいなんですよね。ですからヘビの毒に対する血清という概念はあっても、ヘビに予防接種をという考えはないみたいです。……もしかしたら木本医師がヘビのことはそれほど調べていないのかもしれませんが」

　確かに獣医だからってなんでも知っているわけではない。結局うちのニワトリだって先祖返りじゃないかなと言われているだけだし。俺はうちのニワトリたちが楽しく暮らしていければそれでいいから、学術的にどうかなんてことはどうでもいいんだけどな。

「ニシキヘビっぽいんでしたっけ？」

「それっぽいんですけど、それより巨大化しているみたいなんですよね。だからアナコンダなのかなとか勝手に思ってます。リンについては全くわかりませんしね～」

「そうですね」

　確かにリンさんに関しては不明だ。相川さんを守りたいってリンさんが思った結果なんだろうけど、それが叶えられてしまうっていうのはやっぱり普通ではないんだろうな。なんかもう当たり前になってて全然おかしいとも思ってないんだが。うちのニワトリたちがしゃべるのだってふと気づいたらおかしいし。

　ま、意志の疎通が楽だからいいか。

　他にも必要そうなものを買ったらけっこうな量になった。ホームセンターは危険だ。ついあれもこれも買ってしまう。野菜の種とか。

　でも軽トラで来てるから荷台に乗せればいいかーって思ってしまうんだよな。

「ユマ、今日はこれから相川さんちに行くことになったよ」

　ココッとユマが返事をしてくれたので、そのまま相川さんちに向かうことにした。食材の買い出しはまた今度。

　なんの話だろう？　と首を傾げた。

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参考：「カインズ　神棚の通販」ページ

近況ノート上げましたー。

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https://kakuyomu.jp/users/asagi/news/16817139559024919735