410.神様はいつ寝てるんだろうか
……痛い。
布団からたまたま出ていた手を連続でつつかれた。
だから痛いっての。怪我したらどうするんだ全く。
「タマ! つつくなっつってんだろーが!」
目覚ましを確認する。まだ1時間ぐらい早い。自分たちが早く目覚めたからって起こすなよと思う。遠足当日の小学生はいいかげん卒業してほしいが、まだ1歳だからしょうがないのか? でもニワトリって1年経つ前に大人になるよな。
寿命は調べたけど大体3~10年とあった。3年で死なれたら泣くに泣けない。正直10年だって嫌だ。やっぱりしっかり予防接種などをしてできるだけ長生きしてもらいたいと思う。ポチにもよく言って聞かせないとな。
でかいから長生きとかしないかな。二、三十年ぐらい。
まだ世界は明るくなってきたばかりだが朝食の準備をした。起きてしまったなら腹が減るだろうし。
「なぁ、タマ。もっと穏便に起こしてくれよ~」
「サノー、オキター」
起きた、じゃねえよ。方法はともかく起きればいいという考え方はやめなさい。
「タマ、起こすなら優しく! 起こしてくれ。怪我したらおっちゃんちにいけないだろ?」
「ケガー?」
「つつかれたら痛いし、怪我もするんだ。そうしたらおっちゃんちには行けないぞ」
「ヤダー」
「だから、ちゃんと起こし方を考えてくれっつってんの。そこでタマが鳴いたって俺は起きるからな」
「ワカッター」
うん、わかってくれたようだ。よかったよかった。本当にわかったのかって? そんなことは知らん。でも話さないことにはどうにもならないだろう。
ボウルに養鶏場から買ってきた餌を入れ、白菜を2,3枚とシカ肉を薄く切ったものを上に置いた。
「おーい、飯だぞ~」
あーもう三羽がうろうろしてると土間も狭いな。よく尾がぶつからないもんだ。そこは三羽とも阿吽の呼吸というかうまく避けている。尾にも感知センサー的なものがあるんだろうか。台の上にボウルを置き、三羽が食べている間に卵を回収した。よく産んでくれるよな。嬉しいことである。
「卵、いつもありがとうな~」
ほくほくしながら、昨日冷蔵庫にしまった冷ご飯を焼き豚ならぬ焼き猪(シシ)を細かく切ったものとネギと一緒に炒めた。焼き猪は焼き豚のレシピを参考にして昨夜作った。タコ糸があってよかった。豚肉よりも柔らかい気がするのは肉が違うからか。ちょっとクセはあるが俺は好きだな。タマとユマの卵を一個溶き、フライパンに広げて焼く。それを炒飯にかけて軽く包んだ。うん、朝から贅沢だ。焼き猪チャーハンのオムライスの出来上がりだ。卵が一個でもくるまるんだからコイツらの卵ってでかいよな。味も濃厚でたまらん。
ニワトリたちには暗くなる前に帰ってくるように言い、遊びに行かせた。
昨日の件で神様にお礼をしようと家から出て山頂に向かって頭を下げた。
「昨日は教えてくださり、ありがとうございました」
あのまま登っていたら電波が届かなかっただろうから夕方近くになるまで気づかなかったに違いない。だから昨日のことも神様のお導きなんだろうなと思った。いつも見守ってくださりありがたいことだと思う。そういえばおはようからおやすみまでライ〇ンは暮らしを見つめてくれるけど、おやすみからおはようまでは? なんて質問をする人がいたとかいう話があったな。ライ〇ンにも睡眠時間は必要だと思うんだが、神様に睡眠時間は必要なんだろうか。神様によるのかな。
そんなことをなんとなく考えた。
そういえば、神棚も買ってなかったなと思い出す。もう少ししたらうち用に神棚を買ってこよう。そうすれば山の上に行けなくても供えることはできるだろう。
最近はホームセンターとかでそういうものも売っていると聞いているから面白いよな。ホームセンターに神棚とか、神様が普通にいる暮らしってあんまり考えたこともなかった。でも実際にいるんだし。
適当に家事をして、出かける準備をする。
畑はユマと共に眺めた。芽が出てきているものもあり、「大きくなれよ」と声をかけた。虫に負けるなよ。ある程度育ってきたらまた某アイドルが作っていた無農薬農薬を作るようだろう。そしたらまたニワトリたちに怒られるかな。
いつも通り準備をして、三時ぐらいにニワトリたちが戻ってきた。
「おかえり~」
ざっとニワトリたちをキレイにする。
「あ、手土産」
今思い出すってなんなんだ。慌てて相川さんにLINEを入れた。
「今回は絶対に持ってくるなって言われてます。言い忘れてすみませんでした」
「なんでですか?」
「お隣の家との兼ね合いとかもあるんじゃないですか? 僕や佐野さんはもてなされる側だから何もいらないと思いますよ」
「んー、でもせめて和菓子ぐらいは……」
「じゃあ、買いに行きます?」
ってことで買いにいくことにした。隣の家の方々が来るとなると奥さんと娘さん、それから息子さんのお子さんも来るだろうし、甘いものはあった方がいいと思ったのだ。大福とか、団子とかあると喜ばれるかなって。ま、これも自己満足なんだけどさ。
ニワトリたちを軽トラに乗せて、和菓子を売っている店の駐車場で相川さんと待ち合わせすることにした。
珍しく焼き団子が売っていたので買ってみた。何故か和菓子屋の娘さんが俺たちを見て目を輝かせていた。今日はそんなに客が来なかったんだろうか。
そうしてやっとおっちゃんちに向かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます