406.手入れしなければならないところはたくさんある
翌日はいつも通りだった。
つってもここに来てから家にまるまるいる日って意外と少ない気がする。だからなんだってことはないが、寂しく思う日が全くないというのもどうなんだと思った。
予定通り洗濯をし、畑の手入れをする。今日は珍しくタマとユマが遊びに出かけた。昨日俺が言ったことが少しは届いたのだろうか。そうだったらいいな。ポチは手持ち無沙汰なようで、俺が畑で作業をしている間うろうろしていた。ポチを俺の側に残すのは間違っていると思う。
ポチは動いてないと死んじゃう子っぽい。
「ポチ、遊びに行ってこいよ。俺は大丈夫だから」
ポチはコキャッと首を傾げた。そして家から駐車場までの距離をツッタカターと走り、またツッタカターと戻ってきた。いや、だから動きたくてたまらないなら遊びに行けってば。
「家の中で作業してるから、遊んできてもいいからなー」
洗濯が終ったからと庭に干したり、掃除機をかけたりした。どうも寒くて奥の部屋には行けないんだが、もう少し暖かくなってきたら改めて片付けようと思う。それにしてもこの家の状態ってどうなんだろうか。一度大工さんに見に来てもらった方がいいかなとか考えた。
そんなこんなで作業しているうちに昼になった。家事って意外と時間を食うものだ。俺の手際が悪いだけかもしれないけど。
今日の昼飯はどうするかなと思っていたら、クアーッ! と表からポチの声がした。なんだ、まだ遊びにいってなかったのか。
「あ、おかえり」
タマとユマが珍しく戻ってきた。
「これから飯なんだが、食うか?」
「クウー」
「タベルー」
「タベルー」
女子組が「食べる」というのがかわいいなと勝手に身悶えた。俺、うちのニワトリ好きすぎだろ。
「わかった。じゃあちょっと待っててくれ」
昼はポチだけが家で食べると思っていたからまず餌の量の確認からだ。そろそろまた倉庫から持ってきた方がいいな。午後には運んでこよう。そういったことなどを確認し、ボウルに松山さんのところから買ってきた餌と青菜、シカ肉を切って上に乗せた。
ニワトリたちの目がキラキラしている。ホント、肉食だよな。
「いいぞ~」
みんなガツガツと食べ始めた。今日の山ではあまり食べ物が見つからなかったのだろうか。そんなことを思ったけど、午後はポチとタマが出かけて行ったから交替に来たのだなということがわかった。
「ユマ、半日でいいのか?」
心配して聞いたらツーンとされた。
随分とニワトリに気を使わせているのだなと少し反省した。
「ユマは俺と一緒にいたいのか?」
「サノー、イッショー」
「そっか、ありがとな」
きっと俺が寂しがり屋だと気づいていて、一緒にいてくれるのだろう。出かけた先では違うからそういうことなんだろうな。気遣いもできるニワトリってすごい。今頃気づいたのかよ、って誰かに呆れられているかもしれなかった。誰かって誰だよ。
炭焼き小屋の方へ向かい、枯れ枝などをそれなりに集めた。もう今年は炭焼きはやらないだろうが、相川さんのお風呂で使うかもしれないし、うちもこれからどうするかわからない。ユマの為に特注で風呂を作った方がいいかもしれない。これ以上でかくなるようなら考えないと。風呂のボイラーって今はいいの売ってるみたいだし。
そんなわけで枯れ枝などを集め、枯れ木なども集めていたりする。生木はどうしても乾くまでに時間がかかるから。
久しぶりに川を見に行った。どこかに草や木の枝などが詰まっていないかなど、ユマと一緒に見て回った。ユマは途中で何やらいろいろつついていた。もうそれなりに虫も出てきているのだろう。目に見える範囲ではアメリカザリガニの姿はない。まだ冬眠から覚めていないのか、今年はもうほとんどいないのかは判別がつかなかった。いずれまたリンさんに来てもらってもいいかもしれないなと思った。
つってもまだ先の話だろうけど。
そんな風に過ごして一日があっという間に過ぎた。こうしてやっていくと、本当に山ってのは手入れしなければいけない場所がたくさんある。明日は朝からおっちゃんのところへ行くから、また何日かニワトリを送っていくようだろう。急ぎでやらなければいけないことはないからいいけど。
あー、でも墓参り行きたいな。神様にも挨拶したいし。山道を整備するとなったらどれぐらい時間と金がかかるんだろう。ホームセンターで道具買えるかな、とか考えることがいっぱいある。
その前に一度山倉さんに連絡しないと、とかとか。
忘れないようにメモしておかないとポカをやりそうだ。
夕方、いつも通りポチとタマが戻ってきた。今日は泥だらけではなかったのでほっとした。泥って意外と落とすのたいへんなんだよな。
「タマ、明日の朝は上に乗って起こすとかするんじゃないぞ。ポチに鳴かせろよ」
今日はやっと先に伝えることができた。明日は出かけると知っているから絶対に乗られるはずだ。いいかげん重いから胸の上に乗るのは勘弁してほしい。
タマはツーンとそっぽを向いた。
ここで引き下がったら明日の朝乗られるに違いない。俺はタマの顔の方に回り込んで、「タマ」と呼んだ。
「……ヤダー」
「やだじゃない。タマけっこう重くなってるから、これ以上乗られると俺死んじゃうかもしれないぞ? 頼むから乗る以外の起こし方を考えてくれないか?」
そうお願いしたのだが、何故かタマにつつかれた。だって重くなってるのは確かじゃないか。
「タマがひどいー……」
でも起こされる度に死にそうになるのは嫌だし。ちゃんと話していかないといけないなと思った。
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90万字とか何考えてんだろーねー(汗
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