300万PV記念SS「タマはがんばっている」

300万PVありがとうございます。今回は三人称ですがタマ視点でお届けします~

1000字ちょっとですが楽しんでいただけると幸いです。

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 タマの飼主である佐野は頼りない。

 タマたちがヒヨコだった頃、お風呂に入れて溺れさせそうになったりしたし(慌てて掬い上げられた。尾を掴まれたことをタマは忘れない)、マムシを見れば飛び上がって逃げようとする。小さくてホバリングしているスズメバチを見て誰かに助けを求めたりする。

 タマからしたら情けない限りだ。

 お風呂は佐野のおかげで嫌いになった。しかしマムシはいいおやつだ。もちろんスズメバチだって目の前でホバリングするから食べやすい。タマからすれば食べてほしいのかと思うぐらいだ。ありがたくパクリパクリと食べている。もちろん他にも飛んでる虫だって食べるし、畑の作物についている虫だって食べる。山は餌の宝庫だった。

 土がもこもこ動き出したらモグラがいる合図だ。ポチと示し合わせて狩って食べたりもする。死骸を見ると佐野がビビッてしまうから、できるだけしっかり食べて食べられない部分は川へ流しに行く。タマはタマなりに気を使っているのだ。


「あれー? なんでここ赤いんだ? やだなぁ……」


 血が流れてしまうはしかたない。佐野は訝し気な顔をしながらもそこに土を被せた。いい栄養になることだろう。

 佐野は自分が暮らしている山のこともあまり知らない。

 佐野は弱いから、佐野がいろいろなところへふらふら行かないようにユマとタマはこっそり誘導していたりする。佐野がイノシシに突進されたりしたら困るからだ。

 けれどそんなことを佐野は知らないし、それを佐野が知る必要はないとタマは思っている。

 佐野は佐野のままであるのがいいのだ。

 あまりにもポチとタマ、ユマが優秀なせいか、佐野の周りの人間たちは佐野よりもポチやタマにいろいろ頼むことが多くなってきた。

 さすがにそれは情けないとタマも感じたが、狩りの同行を頼まれるのに否やはない。

 そう、ポチとタマが同行することで、タマたちの飼主である佐野の株が上がるのはいいことだ。もちろん狩りをすることで獲物を得、佐野に食べさせるのもタマたちの大事な役目である。佐野はいつまで経っても弱いから、しっかり食べさせてやらないといけないのだ。

 今回は陸奥という老人に土地の周囲の見回りを頼まれたので、ポチとタマ、そしてユマは意気揚々と田畑と林、そして川の側を巡っていた。

 そろそろ戻ろうという頃、川から獲物が上がってきた。陸上ではあまり動くのがうまくない鳥である。

 今日はこれを佐野の土産としようと捕まえ、首を咥えて老人の家まで戻った。


「えええ、アイガモとか……」


 佐野がまた弱弱しい声を発した。困った飼主だとタマは思った。

 せっかく佐野に食べさせようと持って帰ってきたのに佐野は食べないという。相川に「うちのリンたちに少し分けてもらっても?」というから一部分けてやることにした。

 今回の獲物は佐野の好みではなかったようである。

 好き嫌いをするからそんなに弱弱しいのだ。

 次こそは佐野が食べられる獲物を捕まえてこようとタマは思う。

 やはりイノシシかシカだろうか。林の向こうの山を上ればいくらでも狩れそうなのだが、登ってはいけないと言われている。そういうことをタマはしっかり守るのだ。ポチはどうしても上りたそうな動きをするが、その度に突き回した。ポチはもう少し我慢を覚えた方がいい。しかし山から下りてきものについては確実に狩ってやると思っている。

 今日も佐野においしい獲物を食べさせる為、タマは奮闘している。

 そしてそれを佐野は知らない。


おしまい。


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100万PVSSは近況ノートにあります。

https://kakuyomu.jp/users/asagi/news/16816927862823209554


200万PVSSはこちら

https://kakuyomu.jp/works/16816927861337057957/episodes/16817139555649231217


360話は明日更新します。

これからもよろしくお願いします。

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