275.クリスマスが過ぎれば
タマとユマの卵を使った卵炒めうまい。すっごい贅沢だと顔がほころんでしまう。これだけでどうにか生きていけます。ありがとうございます。
そんなふうにしてクリスマスの夜は過ぎた。
クリスマスが過ぎると気分は一気に年末モードになる。西洋圏だとクリスマスとニューイヤーはセットなんだよな。でも日本だとクリスマスは外から入ってきた習慣だから別々の行事になる。つか、クリスマスの朝にサンタさんからのプレゼントが置いてあって、終業式に出て、その日の夜はごちそうとケーキだったな。ごちそうのメインはチキンだった。でも本当は七面鳥だったっけ? 誰がクリスマス=チキンにしたんだろう。カー〇ルサンダースか?
今頃になって門松とかしめ飾りとかどうしようかと考える。村の雑貨屋に行けば買えるだろうか。
本当はもっと早く用意しておくべきなんだろうけど、毎年親が準備していたから忘れていた。毎年見ていたようで全然見ていなかったってことなんだろうな。親の背中を見て育てなんて言い方はあるけど、意外と親のことって見てないものだ。
今日も陸奥さん、戸山さん、相川さんが来た。川中さんと畑野さんは明日まで仕事で、28日の月曜日から休みに入るらしい。
「明日まで、なんですか」
「28日を休みにしたかったみたいなことを言ってたぞ。そうでもしないととても猟はできないだろう」
「川中さんは実家に帰られたりするんですかね?」
一人でこちらに移り住んだようなことは言っていたけど、親兄弟はどうしているのだろう。
「帰ってもうるさいとは言ってた。知命で独り身なら親は諦めた方がいいと思うんだが、人んちのことだしな」
ああ、結婚相手はまだかってことか。出会いがないと言っていたから、結婚する気があるならそれこそお見合いサイトかなにかに登録した方がいいんじゃないかな。もちろん言う気もないけど。
「畑野さんのところは同居でしたっけ」
「さすがにまだ大掃除が残ってるらしいから、畑野はこられないと思った方がいいだろうな」
それは残念だけど家庭があるならそちらを優先した方がいいと思うのも確かだ。
「その点うちらは気楽でいいよね~。つってもさすがに30日以降は無理かな~」
「29日でぎりぎりというところだろう」
戸山さんと陸奥さんはぎりぎりで調整しているようだ。奥さんたちに怒られなければいいんだけど。
今日もポチとタマは張り切って陸奥さんたちと出かけて行った。一緒に向かう時はキリッとしているのがおかしい。門松としめ飾りについて聞いたら雑貨屋に置いてあるはずだと教えてもらえた。まだ早い時間だから後ほど買いに行くことにした。
「ユマ~、あとで買物に行くからな」
「ワカッター」
予定を伝えて畑の雪をどかし、青菜の収穫をした。意外としなびていないしだめになった感じもない。葉っぱを一枚ユマに食べてもらった。
「オイシー」
とても嬉しそうだ。俺も摘まんでみたら、なんか甘味が増している気がする。そういえば雪下ニンジンとかすごく甘くなっているなんて聞いたことがあった。
「後で食べようなー」
籠いっぱいに収穫して、そろそろいいかなと雑貨屋に向かうことにした。
そういえばまだ雪が降ってから一度しか下りてないんだよな。それも麓の柵のところまでだし。雪化粧は多少取れてるんだろうけど運転するのが怖い。桂木妹のことは絶対に笑えないなと思った。
「ガタゴトー」
「そうだな。雪が降った後だから道がどうしてもなー」
橋の向こう辺りまでは雪もそれほど気にならなかったが、村に入ったらところどころ雪が残っているようなかんじだった。どうしても日陰になるところが丸々残ってしまう。
「あ、そうだ。おっちゃんちに寄ってくか」
雑貨屋で煎餅でも買って訪ねればいいだろう。雪の時どうしていたかとか聞いてみたいなと思った。
雑貨屋に向かうと店は開いていた。
「こんにちは~」
「ご無沙汰だねぇ。雪は大丈夫だったかい?」
雑貨屋のおばさんが声をかけてくれた。
「おかげさまで。ショベルで雪かきを手伝ってもらいましたよ」
「そうだよねぇ。あの雪だったもんねぇ」
オーソドックスな形の門松としめ飾りを売ってもらった。みかんを買って、また煎餅も買う。煎餅は多めに買った。
雑貨屋の前でおっちゃんちに電話をかけるとおばさんが出た。
「あらあら昇ちゃん、雪大丈夫だった?」
「ええ、相川さんたちに手伝ってもらえました。今から少しだけ顔を出してもいいですか?」
「もちろんよ! お昼も食べていくんでしょう?」
それはさすがに事情を話して辞退させてもらった。さすがに昼は家に戻らなければならない。
「おっちゃんちに行くぞ」
ユマがわかったというようにコッと鳴いた。ちゃんとこういうことを分けられるってすごいよな。うちのニワトリ、状況判断できすぎだ。
おっちゃんちまでは日向が多かったから思ったより雪は溶けていた。いつも車を停めているところに軽トラを停めたら、おっちゃんが気だるそうに家から出てきた。
「おー、昇平。久しぶりだな」
「この間会ったばっかじゃないですか」
思わず笑ってしまった。雪が間に降って、雪かきとかがたいへんだったから久しぶりに感じたのかもしれないと思った。
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