129.実家に行くことになりまして

 ……桂木さんから送られてきた写真に写っていたのはいわゆるギャルだった。周りがいっぱいデコられててよくわからなかったので、「却下」した。


「ええー? サイコーにかわいいじゃないですか!」

「かえって心配されそうだからいいや……」

「もー、わがままですねー」


 え? それって俺がわがままとかいう話なのか。首を傾げる。やっぱり若い娘はよくわからない。

 あまりデコってない、二十代前半のフツーにかわいい桂木さんの写真が送られてきた。うん、これだよこれ。

 つか、これ本当に俺の彼女だよとか紹介していいもん? ちょっと悩んだ。

 とりあえずお礼のLINEを入れた。


「ありがとう。明日にでも行ってくる」

「実家に行かれるんですよね。ニワトリさんたちどうしますか? うちで預かります?」

「日帰りで行くつもりだからいいよ。泊まりになりそうなら相川さんに連絡しとくから大丈夫」

「ええー。もっと頼ってくださいよー」


 これ以上頼るわけにいかないだろう。


「写真ありがとう」


 と返した。


「ええー」


 とまだ不満そうだったがしょうがない。女の子に無理をさせる気はない。

 一応話合わせも兼ねて、相川さんに連絡した。祖父の墓参りついでに実家に寄ること。親の説教かわしに桂木さんの写真を見せて彼女だと言うことも含めて。


「桂木さんが佐野さんの彼女になったんですか?」


 相川さんは驚いたような声を出した。いいえ、偽装です。


「写真をもらっただけですよ。だから突っ込まれるとすぐにボロが出ます」

「親って意外と鋭いですよ。付き合い始めたばかりぐらいにしといた方がいいと思います。ああでも、付き合い始めだと普通はラブラブってかんじですよね。桂木さんを好きで好きでたまらないって自分に暗示をかけるぐらいでないと、バレるかもしれませんよ?」

「マジですか!?」


 暗示がかかりすぎて本気で付き合ってるとか思い込んだらやヴぁい。そうなったら俺、ただのイタイ人じゃないか。ナギさんの二の舞になることだけは避けなければならない。


「写真、見せない方がいいですかね……」

「桂木さんから付き合ってほしいと言われたって設定にすればなんとか……」

「それは彼女に失礼なような……」


 こんなことで悩むとは思ってもみなかった。


「あとは、写真だけ見せて急いで帰ってくるぐらいですかね」

「……じゃあそれで」


 墓参り行きたくない。墓参りだけ行って実家寄らずに逃げてくるか。でもそれをしたら毎日電話が鳴りそうだ。それも嫌だ。


「じーちゃん、助けて……」


 しょうがない。墓参りついでに祈ってくることにしよう。

 とりあえず今日は山の上の墓の手入れもしにいくことにした。神様じゃないけど、少しはご利益があるだろうことを期待して。それこそ、なんて罰当たりなとか言われてしまうんだろうか。でも今手入れしてるのは俺だけだしなぁ。

 またユマがついてきてくれて、草刈りをしている間虫を食べたりと遊んでいた。まだ秋も始めだから雑草は元気いっぱいである。コスモスだけは抜かないように注意した。

 翌日の朝、俺は行きたくない気持ちにどうにか蓋をして朝食の用意をした。もうタマとユマの卵が癒しだ。もちろん本人たちも癒しである。沢山食べさせてから今日の予定を話した。


「……今日はどうしても遠出をしなきゃいけないから、連れていけないんだ」


 ユマにそう伝えたらすごくショックを受けたような顔をしていた。俺だって、俺だってかわいいかわいいユマと離れるのは嫌なんだ! できることなら一緒に連れていきたい! ……でもだめなんだ。

 ユマがしょんぼりしているのがわかる。ううう、俺だって、俺だってえ。


「夕方には帰ってくるから、あんまりはめをはずすなよ。もし今夜帰ってこれないようなら相川さんに一度見に来てもらうことになってるから」


 ユマがすんごく近くまできた。嘴が触れそうである。俺は思わず首を後ろに動かした。


「カエル」

「うん」

「キョウ、カエル」

「うん、そのつもりだよ」


 ユマの羽を撫でる。


「キョウ、ゼッタイ、カエル」

「が、がんばります……」


 ユマさんの圧がすごい。うん、俺がんばるよ! 実家で泊まりとか絶対嫌だし!

 ポチとタマがまだー? と言いたそうな顔をしていた。早く遊びに行きたいのはわかるんだがなんだかなぁと思う。

 さすがに作業着で行くわけにはいかないのでラフな格好にした。顔を隠す為のサングラスも忘れずに。なにがなんでも地元の奴らに見つかるわけにはいかない。

 軽トラに乗っていざ、出発だ。

 N町とS町だと高速が近いのはN町だ。ちょっと時間はかかるが高速に乗ってしまえば実家の近くまで行ける。片道、順調に行って三時間というところだろう。昼前に墓参りに行けたらいいな。手土産とかは……途中のサービスエリアで適当に見繕えばいいか。文句は言われるかもしれないがこの辺りの特産品とか知らないし。

 ……ああ本気で行きたくない。じーちゃん俺を守ってくれ。

 なんか、自分でなんとかせえと言われた気がした。うん、まあそうだよな。

 とりあえず、なるようになるだろ。


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