81.BBQ用の肉は多ければ多いほどいい

 10日は日が出る前から山の麓を見回った。相川さんの山からリンさんとテンさんが見回りに来てくれるとはわかっていたが、さすがにおんぶにだっこはまずいと思うのだ。桂木さんからもドラゴンさんが見回りを強化していると伝えられてはいる。うちの方も少し見てくれているようだ。ありがたいことである。


「12日は参加しますよー」

「うん、よろしく」


 桂木さんとLINEでそんなやりとりをして、山の上の墓を見に行った。ごみなどは山倉さんが持って帰ってくれたらしい。墓の周りだけではなく、できるだけ雑草を刈って行ってくれたようだった。墓に供えられた線香の灰を片付け、俺も線香をお供えした。(帰る時に片付けて行く)


「迎え火っていつだったっけ……」


 俺には縁がないけど。

 一緒に着いてきてくれたタマが草をつついている。よくわからないがいろいろなところに虫がいるのだろう。秋までは外に放しておけば勝手にごはんを食べてくれるが、冬になったらどうすればいいだろうか。ああ、だから年末に鶏を潰すのか。うちでそうしようとしたら間違いなく返り討ちにされるな。いや、潰す予定は全くないけどさ。

 用意する肉の量が不安だからと、相川さんとN町に買い出しに行くことにした。実際はしっかり買い集めてそうだけど、俺にも仕事をくれたのだろう。使わなければ家で食べればいいし、なんなら16日にまわしてもいいのだ。多く確保しておくに越したことはない。

 こんなことなら通販で大量に仕入れておけばよかったなと反省する。もし来年も開催することになったら検討しよう。

 相川さんの軽トラの助手席にはリンさん。俺もいいかげん軽トラの助手席の座席を外した。当たり前のようにユマがもふっと収まる。座席がなくなったことで座りやすくなったようだ。もっと早く外せばよかった。


「ショッピングモールというほどではないですが大型スーパーがあるのでそちらへ行きましょう」


 相川さんの軽トラに着いていく。今日もいい天気だった。

 N町に着いて軽トラを下りる。空気がむわっとしていた。村よりも二度ぐらい暑いんじゃないだろうか。エアコンはつけたままで窓を少し開けてリンさんとユマが困らないようにした。ペットボトルホルダーのペットボトルにはちゃんとストローもさしてある。それらを確認して、


「じゃあ買物してくる。急いで戻ってくるからなー」


 と言い置いて相川さんとスーパーに入った。


「この暑さ、リンさん平気なんですか?」

「帰ったら川で水浴びですね。一応飲み物は置いてきたので飲んではくれるでしょうが、町は暑いです」


 やっぱり村とは気温が違うようだ。


「緑ってやっぱり周りの温度調節にも欠かせないんですね」

「それ用に虫がつきにくいグリーンカーテンなどを窓の前に用意しているうちもありますね」

「あれってなんの植物なんです?」

「ゴーヤが多いとは聞いていますよ」


 そんなことを話しながら大量に豚肉を購入した。こんなに豚肉を買うと羊肉も買ってジンギスカンをしたいと思ってしまう。この辺りじゃあんまり手に入らないけど。お昼用にお弁当とか適当に買って駐車場に戻った。(大型スーパーはいつも使っている駐車場からけっこう遠かった)


「ユマ、お待たせ~」


 茹でた枝豆などを出す。一応塩も何もつけていないおむすびを作ってきていたのでユマにあげた。動物性たんぱく質が足りないな。帰ったら肉をあげることにしよう。リンさんは完全に肉食のようで何も食べなかった。


「そういえば、以前桂木さんに、相川さんと出かけて何してるんだって聞かれましたよ」

「……そうですか」


 相川さんはなんともいえない顔をした。


「各自買物して駐車場でお弁当を食べて帰るって言ったら、一緒に行く意味あるのかって突っ込まれました」

「ははは」


 ユマとリンさんが必ず一緒だから外食するわけにはいかないし、男二人で外食してもなぁってのもある。好きなもの買ってきて食べればいいじゃないかと思ってしまうのだ。


「目的が買い出しですしね。女性が一緒ならランチをどこかの店でとは思いますが、リンとユマさんもいますし」

「ですよね。そういえば昨日はどうしたんですか?」

「さすがにリンは連れていきませんでしたが、今日みたいに適当に買って駐車場で食べて帰りましたよ」


 おっちゃんと二人でもそんなかんじなら別におかしなことなんてない。ああでも、男同士は楽だななんて思ってしまうとどんどん女性と縁がなくなるような気もしないでもない。

 ……どちらにせよしばらくはいらないが。


「佐野さんは、桂木さんとは出かけないんですか?」

「あー……なんかS町のショッピングモールができたとかで誘われましたけど、女性の買物に付き合うのはつらいので断りました」


 相川さんがククッと笑う。どこかに笑う要素があっただろうか。首を傾げた。


「ああ、すみません。佐野さんて面白いなぁ……」

「? 面白くないですよ?」

「16日が無事終わったら、湯本さんも含めて飲みましょうね」

「? ええ、いいですね~」


 まずは多分一番参加者が多いだろう12日だ。

 明日はおっちゃんちに顔を出してから保険の申し込みに行かないとななんて、この時はのんきに考えていた。


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